181話 クロムウェル帝国1
2日後、金獅子達3人は無事に城塞都市モーリスへと辿り着いていた。
途中オークやハイオークなどに襲われたが金獅子に銀狼、それに戦斧を持った碧鰐によって駆逐された。
オーク肉は帝国では食用とされる為、持って行こうかも迷ったのだが、速度を優先して荷物になるからと放置してきた。
今頃魔獣などの餌になっているだろう。
1日目の夜、久々に村を出るという碧鰐に話を聞いた。
「20年前まではオラァもモリノだったり帝国だったりで傭兵稼業して旅に回る事もあったんだがなぁ。今の嫁に出合ってからは傭兵稼業は辞めてモード村にずっといた。だから旅する事自体が久々でな。野営なんてもっと久々だ。」
「そうか。今の奥方に出会って傭兵を辞めたのか。」
金獅子は気の強そうな碧鰐の奥さんを思い浮かべながら言う。
「あぁ。一緒になってからすぐ碧玲も生まれたしな。傭兵じゃなくても村の外で狩人と一緒に魔物狩ったり、それこそ村の婆様の家のドブさらいだったり、やる事は沢山あったからな。守るものが出来てからも傭兵なんぞ、続けるものでもあるまい。」
「まぁ、確かにそうだな。いつも命懸けの生活は結婚生活には向かない職業だな。」
銀狼も賛同する。
「さて、久々の野営となればまずは俺様と銀狼で見張り番はしよう。まずは外で寝るのに慣れてくれ。」
「そうか?悪いな。」
「なぁに。すぐにお前さんにも見張り番を頼むことになるさ。」
そうして1日目が過ぎていった。
さて、モーリスに来るのは3度目になる金獅子と銀狼は迷うことなく馬留に馬を置いてから領主邸へとやって来た。
領主カイゼスと兵士長ミジャーノに話を聞きに向かったのだ。
領主邸の門番達は金獅子達を覚えていたようでスムーズに領主カイゼスへと繋いでくれた。
通されたのは以前のような会議室ではなく、応接室。
ほどほどに金のかけられた調度品が置かれた落ち着いた部屋だった。
30分も待たずにカイゼスとミジャーノがやって来た。
「これはこれは金獅子殿に銀狼殿。おや、そちらは初めましてだな?」
カイゼスが気安く話しかけてくる。
「あぁ。オラァ碧鰐言う。モード村の出身だ。」
「モード村か。直ぐ隣だな。金獅子殿達の新たな仲間と言ったところかな?」
「あぁ。2日前からの仲間だ。」
「それはまた近々な。それで今回はどの様な要件で参ったのだ?」
「あぁ。その前に唐突の訪問に対して迅速な面談。礼を言わせて貰おう。」
「何を言うか。魔族の侵攻を目前で止めてくれ、さらには魔族領まで赴いて人族領侵攻を止めてきてくれた英雄を待たせる訳にはいかんよ。」
「そうですよ。金獅子殿達のことは帝国軍の将軍からも聞いています。随分とご活躍なされたようで。」
兵士長ミジャーノも話に入ってくる。
「うむ。まぁその話は追々話すとして、今回モーリスに来たのは新たな神徒、王になった者はいないかを確認しに来たのだ。」
「新たな神徒か?」
「あぁ。ここ最近神の加護を得た者がいるとか話は聞いてないか?」
「私は聞いていないな。お前はどうだ?」
ミジャーノに話を振るカイゼス。
「いえ。私も聞いたことはありませんね。」
「そうか。数日この街で聞き込みをしようと思うておる。お前達にも広く情報を集めて欲しいのだ。」
「それは邪神復活に関係する事か?」
カイゼスが金獅子に聞いてくる。
「あぁ。聞いているかもしれんが邪神が復活して、今から7ヶ月後には甲蟲人なる化け物を放ってくる。それに対抗する為の人員を探しておるのだ。」
「そう言う事なら私の方でも民に情報は無いか探らせよう。」
「私も兵士達に情報を集めさせます。」
「うむ。頼む。そうだな。2日様子をみよう。2日経っても見つからなければ南下して第三の都市ガルダイアを目指そうと思う。」
「2日か。わかった。2日後にまた来てくれるか?それまでに情報を集めさせよう。」
「あぁ。頼んだ。では俺様達はこの街の宿屋に泊まる。何かあれば探してくれ。宿屋の店主には伝言が来たら知らせて貰うように言っておく。」
「はい。最近はやはり魔物が凶暴化して日に何度も襲来があります。もしもの場合はご助力願うかも知れません。」
「あぁ。魔物相手なら任せておけ。では、俺様達は行く。」
「うむ。では2日後に。」
そう言って領主邸を後にした金獅子達は、待ちの中でも大きい方の宿屋へと部屋を取った。
「宿屋に泊まるのも久しぶりだな。」
碧鰐が言う。
「野営では寝れただろ?枕が変わって眠れないと言う事はあるまい?」
冗談交じりに金獅子が問う。
「まぁ大丈夫だろう。それより久々に携行食なんぞ食べたから普通に腹が減った。この街にはよく来てたんだ。上手い店を知っている。夕飯はカレーでいいか?」
「カレーか。オレ達はカレーにはうるさいぞ?なんと言っても魔族領を旅する間は絶品カレーを食べていたからな。」
「魔族領を旅する間にカレー?携行食じゃなくてか?」
「あぁ。碧鰐にも黒猫の事を話しておこう。」
「黒猫?まぁ兎に角店に行こうか。」
そう言う碧鰐に連れられて老舗のカレー屋に辿り着いた3人。
カレーを食べながら魔族領での黒猫の料理について熱く語って聞かせた金獅子と銀狼であった。




