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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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178話 モーノ共和国6

 前日の野営の時。

「えぇ!じゃあお2人とも魔族領まで行かれたって事ですか?」

 魔族の侵攻を止めた話を碧玲にしてやった時の碧玲の反応だ。

「あぁ。他にも聖王だったり仲間達がいたがな。」

「聖王ってあの聖都セレスティアの?」

「あぁ。仲間だ。」

「まぁなんてことでしょう。私ったら何も知らずに凄い方達に同行させて頂いてたんですね。すみません。」

 恐縮する碧玲に銀狼が返す。

「いや。どのみちモードの村に向かうところだったんだ。むしろ道案内して貰って助かっている。」

「そうですか。なら良かった。」

「ところでガダンの崩落についてだが、魔物のスタンピードによるものだと伝わっていたのか?」

 移動中話に入っていなかった金獅子が碧玲に問う。

「えぇ。聖邪結界が崩れてしばらくしても魔族の侵攻がなかったので、きっとガダンも魔族の侵攻によるものではなくて魔物のスタンピードに巻き込まれたのだろうと大人達は話していました。」

「そうか。まぁ実際魔族侵攻は食い止めたしな。きちんと伝わっていなくても仕方ないか。だからモリノでは悠長に賭博場で遊び惚けている者達が多かったのか。」

「魔族が強力になっているのは間違いないのにな。緑鳥が各国に手紙を書くって話だったけど、そんな噂になっているんじゃ信じて貰えない可能性もあるな。」

「まぁその点は大丈夫だろ。なんといっても人族領に知らぬ者はいない聖王の言葉だ。神交の事も知れ渡っているしな。」

 顎鬚を撫でながら金獅子が言う。

 そんな会話をしながら携行食を食べて寝る事にした。


 翌朝。

 村の人間の朝は早い。

 朝5時半には起き出して、野営の支度を片付け始めた。

 金獅子と銀狼は交代で見張り番をしていた為、その時起きていた銀狼が金獅子を起こした。

「む。早いな。まだ日が昇ったばかりではないか。」

「村の人間は朝、早起きなんです。もう少し寝ていらっしゃっても大丈夫ですよ?」

「いや。目が覚めた。今日には村に着くのだろう。着いてからまた寝るさ。」

 そう言って起き出した金獅子。銀狼とともに携行食で簡単に朝食を済ませると、すぐに移動を開始した。

「そう言えばお2人はなぜモードの村に?何もないところですよ?」

 碧玲が銀狼に問う。

「あぁ。人探しの旅をしているんだ。だからその流れでモードの村にも行ってみる事にしたんだ。」

「そうですか。見つかるといいですね。尋ね人。」

「あぁ。そうだな。」

 そんな会話を続けながら移動を続け、昼頃には昼食の休憩を挟む。

 そして軽く食後の休憩を挟みつつ、移動を再開させた。

 結局モードの村に到着したのは2日目の夕方過ぎの事だった。


 モード村は人口1400人の小さな町だった。

 木造の平屋が多く、中には2階建ての家屋もあったが、村長宅か集会所のようなところだけらしい。

 特に馬留などもない為、村の外れの牧場に馬を置かせて貰う。

「お2人はモード村初めてですよね?ようこそモード村へ。」

 碧玲が2人に言う。

「あぁ。各国回ってきたがオレは初めて来る村だな。」

「俺様も初めてだ。この村に宿泊施設はあるか?」

「あ。村には宿屋とかないんですよ。でも大丈夫です。私のうちに来てください。幸いまだ部屋数は余ってますし、ただでここまでの護衛を頼んでしまったのでそれくらいさせて下さい。」

「いや。突然少女の家に上がり込むのはちょっとな。」

 辞退しようとする銀狼。

「大丈夫ですよ。私1人ではありません。父と母もおりますので。」

「そうか?では世話になろうか?」

「うむ。好意には甘えようではないか。」

 と言う事で碧玲の家に向かう事になった。

「私の父も元傭兵でして。今は村の何でも屋さんみたいな事をしているんです。」

「ほう。元傭兵か。」

「はい。先日も沢山の数で襲ってきたオーク数十体なんかも1人で撃退してまして。最近村人からは仁王なんてあだ名で呼ばれたりもしています。」

「なに?仁王と言ったか?」

 思いがけない話に食いつく金獅子。

「あ。はい。仁王ってあだ名で呼ばれています。ホント最近になってからですけど。きっとお2人が言う魔物の活性化で村を襲いに来る魔物が増えたので、それを倒しているうちにいつの間にかそう呼ばれるようになってました。」

 金獅子と銀狼は顔を合わせる。

「もしかしたら碧玲の父上が俺様達の探し人かもしれん。」

「え?そうなんですか?父と知り合いで?」

「いや。知らん。ただ俺様達はモリノで仁王についての噂を聞きつけて、ここモードの村に来たのだ。」

「そうだったんですか。あ。うちはそこです。ちょっと待っててくださいね。」

 碧玲の家は他の家々と変わらない見た目をしており、特段変わったところはないように見受けられた。

「お母さーん。お客様をお連れしたよー。」

 碧玲が家の中に声を上げる。

「はいはい。あら碧玲。お帰りなさい。薬草は無事に卸して来られたのかしら?」

「うん。そっちは大丈夫。でも護衛役の太郎平さんが行きで魔物に襲われて怪我しちゃってね。買えりはちょうどこの村に用があるって言う傭兵さんお2人に護衛して貰ったの。それでその傭兵さん達が人探しで村に滞在する間、うちに泊めてもいいでしょ?」

「傭兵さん?あら。いらっしゃったのね。すいません。娘がお世話になりました。」

「いや。大した事はしていないさ。」

「そうですか?でもありがとうございます。泊める分には構いませんが部屋が1つしか空いてないので、お2人で1部屋になりますけどよろしいですか?」

「あぁ。世話になれるだけで十分だ。」

「それで早速で悪いんだがお父上はどこに?」

「旦那ですか?旦那は今村を襲いに来た魔物討伐に出てます。そろそろ帰ってくるとは思いますが。」

 そう言って村のはずれに視線を送る碧玲の母。皆釣られてそちらに目を向ける。

 ちょうどその時に遠くからこちらに向かってくる人物がいた。

「あ。あれですね。あれが父です。おーい。」

 近付いてくる壮年の男は2m近くある金獅子よりもはるかに大きく、もしかしたら一番大きい紫鬼よりも体格がよさそうだった。

 頭は剃っているいるのかスキンヘッドで目元には迫力がある。

「あなた。こちら碧玲がお世話になったと言う傭兵のお2人。この村に探し人がいるとかでうちに泊めてあげられないかしら?」

「お父さん。こちらの方々には町で悪い奴らに絡まれてたのを助けて頂いて、さらに傷ついた太郎平さんに代わって村までの護衛までして頂いたのよ。」

「む?そうか。娘が世話になったようだな。オラァは碧鰐(へきがく)と言う。この村のどぶさらいから防衛まで、何でも屋をやっている。」

 それが碧鰐との出会いであった。


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