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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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177話 モーノ共和国5

 金獅子と銀狼がモノリスの町に到着したのは首都モリノを出発してから2日後だった。

 道中は街道になっており、魔物の襲撃も少なく、難なく到着する事が出来た。

 急ぐ旅ではあったが、銀狼がそれまでにも移動し続けて来た為、金獅子の提案でモノリスの町に1泊する事にした。

 馬留に馬を預け、町の宿屋に部屋を取る。

 町の宿屋は朝食しか出ないと言うので、町中の食堂に向かった2人。

 そこで1人の少女とそれに絡む2人の男に気付く。

「や!止めてください!」

「いいじゃねーか。一緒にこいよ。」

 男2人は如何にも町のチンピラ風で、明らかに少女の方は嫌がっていた。

「おい。嫌がってるぞ。」

 割って入る銀狼。

「あ?なんだ。テメェ。関係ない奴はすっこんでろ!」

 チンピラ風の男の片割れが銀狼の肩を押す。

「もう割って入ってしまったからな。関係なくない。当事者だ。」

 銀狼はそう言いながら肩を押してきた男の手を捻り上げた。

「あ痛たたたたた!」

「テメェ何しやがる!」

 片割れも銀郎に掴みかかろうとする。

 その手を新しい義手で掴み取る。そして同じように捻り上げた。

「痛てててて!」

 先に捻られた方が音を上げた。

「やめろよ!放せよ!」

 続けて二人目も音を上げる。

「分かった。悪かったよ。放してくれ!」

 突き放すように放してやる銀狼。すると男達は町中だと言うのに刃物を取り出した。

 刃渡り15cmほどのナイフだ。

「おいおい。そんなもん出されちゃこっちも本気になるぞ?」

 腰の双剣に手をかける銀狼。

「うるせぇ。抜く前に刺してやる!」

「うおぉぉぉぉ!」

 男2人が突進してくる。

 1人は銀狼が難なく抑え込む。

 もう片方は傍観していた金獅子が割って入ってその腕を取った。

 一斉に捻り上げる。

「痛ててててて!」

「痛たたたた。悪かったよ。放してくれよ!」

 落ちる2本のナイフ。それでも捻り上げる事をやめない金獅子と銀狼。

「分かった。わかったから。今度こそホントに分かった。」

「頼む。放してくれ。肩が外れそうだ。」

「もう町中で刃物出したりしないと誓えるか?」

「あぁ。もうしねーよ。」

「ホントだ。もうしねー。」

 最後にグイっと捻る力を込めてから2人を開放してやる。

「ち。行くぞ。」

「あぁ。待ってくれよ。」

 やっと少女から離れていくチンピラ風の2人組。


「ありがとうございました。助けて頂いて。」

 少女は頭を下げた。

「いや。問題ない。」

 銀狼はなんでもない事のように言う。

「私、モードの村から出てきたばかりで右も左もわからなくて。」

「お?モードの村?オレ達が明日向かう場所だな。」

「え?お2人は傭兵さんですか?」

「ん?あぁ。傭兵ではあるな。」

「ホントですか?助けて頂いた上にさらにお願いなんて厚かましいんですけど、明日一緒に村まで移動して頂けませんか?」

 そう聞かれた銀狼は金獅子に視線を送る。ゆっくりと頷く金獅子。

「ん?別に構わないが、こちらは馬での移動だぞ?」

「あ。はい。こちらも馬車での移動です。実は村から薬草を卸しに3人で来たんですが、護衛役の人が来る時に魔物に襲われて怪我をしてしまって。代わりに護衛を務めてくれる傭兵の方を探してたんです。」

「あぁ。それでさっきのチンピラに。」

「確かに馬留に馬車も止まっていたな。」

 納得したように頷く銀狼と金獅子。

「はい。ギルドを通さず直接契約なら少額でも依頼を受けて下さるとギルドで声を掛けられて。その話をする為に外に出たらあんな事に。」

「傭兵の中にはあんなのもいるからな。安全に依頼をする為のギルドだ。次からは気を付けた方がいい。」

「はい。すみません。あ。私、碧玲(へきれい)って言います。」

「碧玲か。オレ達は銀狼とこっちが金獅子だ。」

 銀狼が自分と金獅子を指して自己紹介する。

「銀狼さんに金獅子さんですね。」

「あぁ。で、オレ達は明日朝には出立するが碧玲も同じ頃に出発でいいのか?」

「あ。はい。もう薬草の売買は終わっているので、私達も明日朝には出発出来ます。」

「では朝9時に馬留に集合でいいか?ここから村まではどのくらいなんだ?」

「2日間といった移動になります。」

「途中での水や食料も準備は大丈夫だな?」

「はい。村から持ってきております。」

「では朝9時に馬留で。」

「はい。よろしくお願いします。」

 そう言って碧玲とは別れた。


 その後食堂で夕飯を食べて宿屋に戻り、1泊した金獅子と銀狼。

 宿屋での朝食を終えた2人は翌朝9時には馬留に向かったのだが、そこにはすでに碧玲とその他2人の姿もあった。

「おはよう碧玲。待たせたかな?」

 銀狼が朝からさわやかな声で問う。

「いいえ。私達も今来たところです。」

「そうか。では行くか。」

 馬留に料金を払い、馬に跨る2人。

 馬車の方には怪我をした護衛役ともう一人が乗り込み、碧玲は御者台に座った。

「では参ろうか。」

 先に動き出す金獅子。それを追うように馬車と銀狼が動き出す。


 金獅子が戦闘を行き、その後ろを馬車と銀狼が並走する。

 いつもなら早馬で最速で駆けていくが、馬車も一緒の為、そこまで速度は出さない。

 無言で移動もどうかと思った銀狼は碧玲に声をかける。

「村からはいつも薬草を卸しに来るのか?」

「はい。いつもならお母さんが来てたんですが、ちょっと体を壊して、今回初めて私が同行したんです。」

「そうか。だから町に慣れていなかったのか。」

「はい。馬車に乗っている者は以前から町に卸しに来てたので、私も慣れる為にちょうどいいから行ってこいと父が送り出してくれました。」

「可愛い子にはなんとやらだな。だが2日間とは言え、魔物が活性化した今となっては村から町への移動も大変だTったろう?」

 器用に馬を操りながら会話を続ける2人。

「魔物が活性化してるんですか?知らなかったです。確かに最近村を襲いに来る魔物は増えてましたけど。」

「知らないのか?聖邪結界が崩壊してから魔族領からも魔物が押し寄せているんだぞ?」

「あ。聞きました。帝国の要塞都市ガダンが魔物のスタンピードに巻き込まれて崩落したとか。」

「ん?いや。あれは魔族の侵攻によるものだ。」

「魔族の侵攻?あれホントの話だったんですか?ガダン崩落の知らせを受けてからそれなりに備えてたんですが、一行に魔族が押し寄せて来なかったから魔族の侵攻なんてなかったんだろうって村の人が言ってましたけど。」

「いや。オレはあの時実際ガタンにいてな。魔族の侵攻によってガダンは崩落したんだ。」

「えぇ!実際にいたんですか?生き残りはほとんどいなかったって聞いてましたけど。」

「あぁ。オレは助けてくれた人がいてな。」

 そんな会話を続けながら移動をする事、1日。

 夜半になった為、馬を止めて野営の支度をする。

 村から出てきた3人も手慣れたもので簡易テントを設営していた。

 こうしてモード村までの道のり、1日目が過ぎていった。


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