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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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175話 ララ法国5

 白狐が領主宛に書状を出して1週間が経過しようとしていた。だがまだ領主からの使者はない。

 夕方過ぎの時刻。

 3人は聞き込みを終えて宿屋に戻ってきていた。

「白狐よ、どんな内容の書状を送ったのだ?」

「邪神復活の事は伏せて、神の加護を持つ仲間を集めている事と、軍師殿がその仲間かもしれないので繋いで欲しいって言った内容にしました。」

「何?領主に会いたいではなくてか?」

「あ、その為にも1度領主様にお会いしたいって感じに書きました。」

「なるほど。直球だな。アタシが書くとしてもそうなるかもな。」

「素直が1番でしょ?」

「うむ。まぁそれで領主の目に留まればだがな。」

 そんな会話をしていたところ、宿屋の前に馬車が停まった。

 馬車から降りてきたのは執事服を身に纏った上品そうな老紳士。

 真っ直ぐ宿屋のカウンターへと向かって行く。

 カウンターで店主と二言三言喋ったかと思えば白狐達の下へとやってくる。

「白狐殿はどなたですかな?」

「あ、はい。私ですが。」

「領主様がお会いになるとの事です。今からでも宜しいですかな?」

「お!来たではないか!」

「ちゃんと書状に目を通して貰えたようだな。」

「今からでも大丈夫です。仲間達も一緒でいいですよね?」

 老紳士は3人を見回して言う。

「3名ですね。馬車には余裕がございます。問題ありませんよ。」

 と言う事で3人と老紳士は馬車に乗り込んだ。


 馬車に揺られる事、20分ほどで領主邸に到着した。街中ゆえに歩くのと大差ない時間が掛かっての到着である。

「こちらへどうぞ。」

 老紳士に連れられるまま、領主邸の中に入り、応接室に通された3人。

「主人が参りますまで、お座りになって少々お待ち下さい。」

 応接室に残された3人。

 応接室はほどほどに金がかけられた作りではあるが、派手さはなく、落ち着いた雰囲気の部屋になっていた。

 促されるままに座ったソファーはフカフカである。


「流石第二の都市の領主邸ですね。調度品もそれなりにお金掛かってますよ。これ。」

「うむ。城塞都市モーリスの領主、カイゼスの屋敷と同じ様な感じだな。」

「どこの領主邸もさほど変わらんだろう。人間は見栄っ張りだからな。人目につく部屋には金をかけたがる。」

「まぁ、確かにそうなんでしょうね。」

 暫く3人で話していると扉がノックされ、先程の老紳士と一緒に髪を撫でつけた壮年の男が入って来た。

「初めましてだな。わたしが領主のサルマ・ルルだ。」

 3人は立ち上がりお辞儀すると代表して白狐が喋る。

「お初にお目に掛かります。私が書状を出した白狐です。こちらは仲間の紫鬼と紺馬です。」

「おぉ。エルフが2人とは、珍しい傭兵団だな。まぁ、掛け給え。」

 領主サルマに促され、再びソファーに座る3人。

 サルマは3人の目の前に座り、老紳士はその後ろに立つ。


「それで君達が神の加護を持つ者達なんだね?」

 サルマが言う。

「はい。私達3人とも異なる神の加護を得ています。」

「どうだろう?その神の加護とやらをここで見せてはくれないか?疑ってる訳ではないのだよ。興味本位だ。」

 サルマは面白い者でも見るかのように3人を眺めて言う。

「では私が代表して。」

 白狐は立ち上がり、ソファー前にからそれた場所に立つ。

「では参ります。王化!破王!!」

 言うなり白狐の右耳にしたピアスにはまった真っ白い石から、白い煙が立ち上り白狐の姿を覆い隠す。

 次の瞬間、煙は白狐の体に吸い込まれるように消えていき、残ったのはどことなく狐を思わせる真っ白いフルフェイスの兜と、同じく真っ白い全身鎧に身を包んだ白狐の姿だった。

「おぉ。これが神の与えた加護か。何処から鎧が出てきたのだ?」

 驚きを隠せないサルマ。

「神通力で鎧を形成しているのです。これで信じて貰えましたか?」

「あぁ。凄いものを見せて貰った。」

「では、王化、解除。」

 白狐がそういうと真っ白い全身鎧は白い煙になり、右耳にしたピアスにはまっ真っ白い石に吸い込まれていった。

 またソファーに座り直す白狐。

「凄いな。そちらの2人も同じように?」

「あぁ。見せようか?」

「あ、いや。いい。大丈夫だ。もう分かった。あの手紙は本当だったんだな。」

 紫鬼の申し出をやんわり断るサルマ。

「やっぱり疑ってました?」

「まぁな。いきなり神の加護がどうこう書いてあったからな。しかし試すような真似をして悪かったな。」

「いえ。きっと王化して見せる事にはなるだろうと思ってましたから。」

 そこで気が付いたように老紳士に声をかける。

「おい。お客様にお茶をお出して。」

「はい。畏まりました。」

 そう言って老紳士が部屋を出て行く。

「さて、それで我が国の軍師が同じく神の加護を持っているのではないかと君達は考えているんだね?」

 優雅に足を組みながらサルマが問う。

「はい。巷で耳にした軍師殿の活躍を聞くに、最近加護を得られたのではないかと。」

「ふむ。軍師が君達のようにいきなり鎧姿になったと言う話は聞かないがな。」

「まぁ人前ですと目立ちますからね。戦地に向かわれた際にこっそり王化されていた可能性はあるかと考えています。」

「ふむ。まぁなくはないか。本国の軍師は20年ほどは今の地位にある。が、ここまでの活躍を見せたのは今回が初めてだったのだよ。」

「それだ!最近加護を得たならあり得る話じゃろ?」

 話に飛びつく紫鬼。

「ふむ。あり得るかもしれないな。それにしても神の加護とはどう言った人物に与えられるのかね?」

「そうですね。分かり易い所で言えば獣人族の王、獣王なんかも我々の仲間なんですが、その者なんかは獣神の眷族の王と言う事で加護を授かっています。私の場合なんかは神の意思に1番沿う人物だったからっと言ったところでしょうか。」

「ふむふむ。要するに眷族か、神の加護を得るに相応しいか、と言う事かな?」

「ですね。」

 そこまで話していると部屋の扉がノックされ、先程出て行った老紳士がお茶を持って戻ってきた。

「どうぞ。紅茶でございます。」

 3人とサルマの前にティーカップを置いていく老紳士。

「ありがとうございます。頂きます。」

 一声掛けて紅茶を啜る白狐。それに習って紫鬼と紺馬も紅茶に口を付ける。

「ふむ。話は分かった。軍事に会えるようわたしが取り計らおう。」

「本当ですか?」

「あぁ。わたしはサルマ・ララ。現法王の従兄弟にあたる。わたしが言えば軍師も時間を作ってくれるだろう。」

「ありがとうございます。」

「ふむ。そうだな。使者を出して返事を待つ間もこの街に滞在するか?」

「いえ。出来れば早くお会いしたい為、使者の役割を私達に任せて頂けませんか?」

「そうか。なら法王に向けた手紙を渡そう。首都ララ・ダウトに着いたら法王城にそれを出すといい。」

「助かります。ありがとうございます。」

「なに、神の使者様の言う事なら聞いておいた方がバチも当たるまい。ははは。」

 そう言うとサルマは席を立つ。

「手紙をしたためてくる。少し待っておれ。」

「はい。」

 サルマと老紳士が部屋を出て行き、また3人になる。

「上手くいきましたね。」

「うん。破王の素直な書状が上手いこと刺さったんだな。」

「兎に角これで首都ララ・ダウトに行って軍師に会えそうじゃな。」

 それから暫くして老紳士が手紙を持って戻ってきた。

 馬車で送ろうかとの申し出もあったが、これを辞退した白狐達は、宿屋へと戻るのであった。


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