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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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174話 ララ法国4

 それから3日間勾留された紫鬼達が宿屋に戻ってきたのを出迎えた白狐。

「大丈夫でしたか?」

「何が辛いって折角街にいるのに飯が携行食みたいなもんだった事だ!」

「あれは不味かったな。」

 監獄での食事に不満爆発の紫鬼だったが、原因を作った紺馬と言えばケロッとしていた。

「全く。今度尻を触られてもパンチ1発くらいで済ませよ。」

「そうだな。キツいの1発で勘弁してやろう。」

 紫鬼と紺馬の会話を呆れながら聞いていた白狐。

「まぁ無事戻って来て何よりですよ。お2人がいなかった間も領主からは返事がありませんでした。私は街で聞き込みしてましたが、特にこれと言った情報はなかったですね。」

 少し疲れたような白狐に紺馬が問う。

「どうした破王?監獄にいたワタシ達より元気がないな。」

「えぇ。この街の人達はまだ戦勝モードでして。酒場でも絡まれるわ、吞まされるわで大変でした。」

「それはそれは。苦労かけたな。」

 白狐の肩をバシバシ叩きながら紫鬼が言う。

「全く反省して下さいよ。ホントに。」

「ワタシは悪くない。」

「ワシも正当防衛じゃ。」

「反省してないですね。」

 ため息を吐きながら肩を落とす白狐。

「兎に角、領主からの返事待ちです。ちょっとむしゃくしゃしたから今日は私、傭兵ギルドで魔物討伐の依頼でも受けてきます。」

「1人で行くのか?」

「えぇ。思いっきり暴れてきますからお2人は街で聞き込みでもしておいてください。くれぐれも問題は起こさないように。」

 そう言って宿屋を出て行った白狐であった。


 残された2人も街の食堂などを回って聞き込みしてみたが、やはり有力な手掛かりはない。

 そんな2人だが、暫く前から後ろを付けてくる者達がいることには気付いていた。

 顔を見合わせた2人は、路地の暗がりへと進んで行く。

 すると後ろから声が掛かった。

「待ちな!てめぇら!」

「あれで済むと思うなよ!」

「アニキ!コイツらです!やっちまって下さい!」

 やはり3日前に揉めた奴らである。

 助っ人を連れてのお礼参りとはやる事が雑魚い。

 そんな男達に紫鬼が言う。

「また街中でやり合うと衛兵達が飛んでくるぞ?」

「なんだ?このやろー!怖じ気付いたか!」

「いや。違う。どうせやるなら街の外でとことんやり合おうではないか。」

 歯を剥き出しにして笑う紫鬼に男達はたじろぐ。

 しかし、助っ人として呼ばれた男は違った。

 身の丈2m越えの紫鬼よりもさらにデカイ。そんな体形に合わせて態度もデカイ。

「いいぜ。やってやろうじゃねーの。街の外じゃ衛兵達に止められる事もねぇ。ぶっ殺してやるよ。」

 そんな事を言う大男に紫鬼が笑いかける。

「威勢がいいのぅ。んじゃちょいと街の外まで行こうか。」

「逃げんじゃねーぞ!先歩け。」

「はいはい。」

 紫鬼と紺馬の2人は街の外へと向かって歩き出す。

 付いてくる男達。

 すでに1度紫鬼に伸されている5人は少し及び腰だ。しかし紫鬼の実力を知らない助っ人大男はやる気満々である。


 男達を引き連れて街の外に出て1kmほど歩いただろうか。

「おい!もうこの辺でいいだろ!時間稼ぎのつもりか?」

 その言葉にニヤけながら振り向く2人。

「いや。簡単には街中に逃げ込めない位置まで来ただけよ。」

 その顔は猛獣の如く、捕食者のそれであった。


 ここに来て助っ人大男は2人が危ない人物だと気付く。

「で、どっちから来る?」

 2人同時に掛かってこないように1人ずつ相手にする事をほのめかす大男。

「アンタの相手はワタシがするよ。」

 紺馬が前に出る。

「じゃあ、残りはワシが相手をしてやろう。」

 獰猛な笑みを浮かべてうしろの6人を見据える紫鬼。

「ひっぃ!」

 6人のうちの1人が声を上げる。

「まさか、ここまで来てビビってるとか言わんよな?」

 紫鬼が煽る。

「あ、あぁ!やってやらー!」

「この前は酒が入ってたからだ!」

「そうだ!6人相手にただで済むと思うなよ!」

 ますます笑いを深めて紫鬼が言う。

「御託はいい。掛かって来い。」

 それを合図に1対6の闘いが始まった。


 動き出した6人を見て紺馬が言う。

「んで、アンタは来ないの?」

「はっ!女だからって手加減しねぇーからなぁ!」

 こちらも1対1の闘いが始まった。


 勝敗はすぐについた。

 紫鬼と対峙していた6人は全員肩の骨を折られて悶絶、気絶すらさせて貰えない。

 紺馬と対峙していた大男は白目を剥いて気絶している。

「ちょっとは、スッキリしたか?」

「あぁ。スッキリした。」

 紫鬼の問いに満面の笑顔で答える紺馬。

 そんな紺馬を見て紫鬼も笑顔になる。

 そして紺馬の横で気絶していた大男を引っ叩いて無理くり覚醒させると言った。

「ぶっ殺してやるとらまで言ったんじゃ。ぶっ殺される覚悟はあるんじゃろな?」

「ヒィッ!お助けを。お願いします。お助けを。」

 土下座して謝る大男。

「お、おい。おめぇらも謝れ!」

 骨を折られて悶絶していた手下達にも土下座させる。

 それを見てピンと来た紫鬼。

 声を敢えて低くして言い放つ。

「よし。許してやる。代わりにお前ら街の人達に神徒か、王、もしくは神の加護持ちについて聞き回って来い。」

「し、しんと?」

 大男が聞き返す。

「そうだ。神徒だ。分かったか?」

「「「「「「「はい!」」」」」」」

「よし。報告は傭兵ギルドに来る事。分かったか?」

「「「「「「「はい!」」」」」」」

「よし、行け。」

「「「「「「「失礼します!」」」」」」

 7人の男達は一目散に去って行った。


 そんな2人に近付く影が1人。

 白狐だ。

 全身血塗れの酷い状態だった。

「どうしたんです?2人とも?」

「どうしたはこっちの台詞じゃ!どうした?」

「何があった?」

「え?あぁ、これ全部返り血ですから。私は怪我1つしてません。」

 安堵のため息を吐く2人。

「なんだ。返り血か。」

「えぇ。オーガ数体分ですからちょっと量が多かったですね。」

「そんなんじゃ街も歩けないだろう。まずは宿屋で湯浴びだな。」

「そうですね。」

 それから2人が何故街の外にいたのか説明しながら、3人はゆっくりと街へと戻るのであった。


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