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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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172話 ララ法国2

 ララ法国の第二の都市、ララ・ライカに入る時にも一悶着あった。

 直近で隣国と戦争をしていた事もあり、敵国に雇われた傭兵ではないかと疑われたのだ。

 幸いエルフが2人、正確にはエルフに見える2人がいた事でエルフの里から出てきたばかりだと言う事が信じて貰え、無事に街の中には事が出来た。

 ララ・ライカは直近で戦争をしていたとは思えないくらい穏やかな時間が流れていた。

 街の商店街にも活気がある。

 戦勝国としては当然かもしれないが、中には戦争で男手を失った家族もいるだろうに悲壮感は全くない。

 気になった白狐達は宿屋で部屋を取る時に店主にそれとなく聞いてみた。

 すると、

「なぁに。法国の軍師様が大活躍でね。戦争を1日で終わらせちまった。だから戦死者なんかもほとんど出てねぇんだ。皆無事に亭主や息子が帰ってきたってんで今街は祝勝モード全開って訳よ。」

 との事だった。

 ここでも軍師様の話である。首都だけでなく第二の都市にまで名を広げる軍師ともなればやはり気になる。


 続いて白狐達は旅の途中で狩った魔物の素材を売る為に傭兵ギルドへと顔を出した。

 中でもクリムゾンベアの皮や爪、牙などは流石Aランクと言った金額で取引された。

 馬車がある為、狩った魔物も放置ではなく素材回収が出来た。

 3人になり、旅の資金も余裕はなかった為、嬉しい収入となった。

 ギルド職員の話では、最近レッドベアがクリムゾンベアに進化する事が多いらしく、街の周辺でもクリムゾンベアが目撃されるようになったらしい。

 これも邪神復活の影響だろうか。

 それとなくギルド職員にも軍師について聞いてみる。

「あぁ。法国の軍師様は大層頭がキレる方らしいですね。小競り合いとは言え、戦争を1日で終結させたって聞きましたしね。」

 との事。軍師の名前こそ聞かないが軍師の功績はしっかりと耳に届いているようだ。


 続いて街の食堂に向かった3人。

 旅の間は携行食だけしか食べていなかったので久々のまともな食事だ。

「はぁー。クロさんがいれば毎日美味しい料理が食べられたんですけどねぇー。」

 白狐がため息混じりに言う。

「そんな事を言うても仕方あるまい。奴も奴なりに考えて去って行ったんじゃから。実際問題Sランク相当の甲蟲人を相手にするんじゃ。王化出来ないとなれば命に関わるじゃろうて。」

「それはそうなんですけどねぇー。美味しかったなぁ。クロさんの料理。」

 それを聞いていた紺馬が問う。

「そんなにクロと言う者は料理が上手かったのか?」

「えぇ。クロさんは私の旦那様なんですけどね。それはもう料理の腕は抜群で、特にカレーなんかは絶品だったんですよ。」

「男なのか?男で料理を。ワタシは女なのに料理の腕はからっきしでな。上達したのは弓だけだった。」

「まぁそれも才能じゃろう。」

「まぁな。それでそのクロとやらは何故去って行ったんだ?」

「話すと長くなるんですが、クロさんには相棒のヨルさんと言う猫がいて、実際の神徒、夜王はヨルさんだったんです。」

「猫が神徒?」

「えぇ。猫と言っても化け猫で、クロさんに取り憑いてたんです。」

「化け猫。取り憑いてた。」

「そうなんです。だからヨルさんはクロさんの体を借りて王化してたんですよ。」

「体を借りて、ねぇ。」

「はい。でも先の大魔王、帝王の銅熊との闘いでヨルさんが殺されてしまったんです。」

「化け猫が殺されたのか?」

「えぇ。相手は破魂と言う魂を壊す技を持っていまして、化け猫であるヨルさんの魂を破壊してしまったんです。」

「なるほど。その化け猫を失ったから王化出来なくなったと。」

「はい。それでご本人がこれからの闘いにはついて行けないだろうと自ら去って行ったんです。」

「そう言う事か。納得した。それにしても破王に旦那がいるとは驚いたな。」

「へへへっ。いい人なんですよ。クロさん。料理も上手いし、刀を振るう事を止めもしないで。」

「普通危ない事からは遠ざけようとするだろうにな。」

「えぇ。そこがクロさんの良いところなんです。」

「そうか。」

 そんな会話をしながら食事を終えた3人は店の店主にも話を聞く。

「最近神様の加護を得た人の噂とか聞いてません?」

「神様の神様?いやー知りませんね。」

「そうですか。ありがとうございます。」

「やはり一般人に聞いてもあまり情報は出てこないな。」

「うむ。まずは怪しい軍師様とやらを調べるか。」

「ですね。となると領主邸にでも行ってみますか?」

「あぁ。領主なら軍師について詳しく知っているかもしれんな。」

「よし、では行こう。」

 3人は食堂を出て街の領主邸に向かった。


 領主邸にはばっちり警備兵がいた。

 門の左右に1人ずつ、上から下まで甲冑に身を包み、腰には長剣を佩いている。

 普通門番などは軽装なものだが、全身甲冑を纏っているのは戦後間もない事の影響か、はたまたこの国では平常なのか。

 白狐は片方の門番に話しかける。

「あのぉー、領主様にお会いしたいのですが、どうしたら会えます?」

「む?アポイントメントは取っているか?」

「アポですか。ないですね。」

「アポイントメントもなしに簡単に領主様に会えるとでも?見た所傭兵のようだが、何用だ?」

「ですよね。私達は軍師様にお会いしたくて、領主様に取り次ぎをお願い出来ないかと思いましてね。」

「はっん!領主様だけでなく軍師様に用事だと?」

 もう片方の門番も会話に入ってくる。

「どうせ戦時中と聞きつけて兵士として取り立てて貰おうって魂胆だろう?残念だったな。戦争はもう終わったんだよ。」

「そうだ。その軍師様の活躍で1日で終結よ!」

「いや、だからその功績の理由が気になってましてね。もしかして神様から加護を得たりしたんじゃないかと。」

「なに?神様の加護だ?おい、聞いたことあるか?」

「いや。聞いたこともないな。」

「そうですか。分かりました。ちなみにどうしたら領主様にアポ取り出来ます?」

「む?普通はまず領主様に書状で申し入れを行うものだ。」

「書状ですか。それって大体どれくらいで処理されるものです?」

「そうだな。1週間といったところか。」

「1週間ですか。分かりました。書状書いて持ってきますね。」

 白狐はくるっと回って門番から離れて行く。


 少し離れた所にいた紫鬼が聞いてくる。

「どうじゃ?領主には会えそうか?」

「いやー書状を出してから1週間くらい待つそうです。」

「待つのか?」

 紺馬も聞いてくる。

「どうしましょ?1週間待つくらいなら直接首都に赴いて軍師様に取り次ぎ依頼した方が早いですかね。」

「一国にさの軍師にはそう簡単には会えんぞ?獣王国でも難しい。」

「ですよねぇ。とりあえず領主様宛の書状書いてみて1週間様子見ますか。」

「そうだな。直接軍師に会おうとするよりはハードルが低かろう。」

「人間の国の事はワタシはからっきしだからな。2人に任せる。」

「では、宿屋に戻って書状書いて来ちゃいましょう。お2人は街で聞き込みでもしますか?」

「そうだな。酒場でも回ってみるか。」

「あぁ。ワタシはそれで構わない。」

「では私は宿屋に戻ります。夕飯時には一緒にご飯食べましょう。宿屋の食堂に集合でいいですよね?」

「おう。分かった。」

「では、また後で。」

 白狐は宿屋で書状をしたために、紫鬼達は酒場での情報収集にと分かれる事にしたのであった。


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