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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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168話 モーノ共和国2

 ダブルアップに12連勝した金獅子は周りの客からも注目を集めた。

 ここまで勝ち進めるとは思っていなかった金獅子ではあったが、ギャンブラーから話を聞くのにはちょうどいい環境となった。

 隣から賞賛を送る青年に声をかける。

「ちと聞きたいのだが、この辺りで神の加護を受けた神徒、もしくは王の話を知らんか?」

「神の加護?まさしくアンタがギャンブルの神様の加護を持ってるんじゃないのか?ダブルアップに12連勝なんてなかなか見ないぜ!」

 興奮気味に答える髪を逆立てた青年。

「いや、俺様は獣神の加護を受けておる。他に神の加護持ちの話を知らんか?」

「お?やっぱり神の加護持ちなのか?だよな!12連勝なんて神の加護でもない限り出来ないぜ!羨ましい限りだ!」

 こいつは話にならない。別の髪をオールバックにした青年にも聞いてみる。

「神の加護を得た人物の噂などは知らんか?」

「神の加護?おれが欲しいくらいだね。」

 こいつもダメだ。その隣の禿げたおっさんに声をかける。

「神の加護を持つ者に心当たりはないか?」

「神の加護か。そんなもんあれば負けた分くらいは取り戻せるかな。」

 なんなんだ。こいつらは。ギャンブルの事しか頭にないのか?

 金獅子は支配人のバレールにも聞いてみる。

「支配人よ。神の加護持ちの噂を聞いた事はないか?神徒とか王とか。」

「神様の加護持ちですか。30年近く前にはギャンブルの神に愛された男とした有名だったギャンブラーはおりましたが。」

「それではないな。最近加護を得た者だ。」

「申し訳ございませんが、当方に心当たりはございません。」

「そうか。分かった。ありがとう。」

 金獅子はルーレット台を離れた。

 バーコーナーに移動する。

 ここはチップと引き換えに飲み物を提供してくれる。つまり1杯1万リラと言う事だ。高級店にも程がある。

 だがそんなバーコーナーにも客はいる。大勝ちしている富裕層だ。一応その者達にも聞いてみる。

「最近神に加護を授かった人物なんかの噂話を知らんか?」

「最近?いやー。昔はギャンブルの神に愛された男ってのがいたけどな。」

「あぁ。最近は聞かないな。」

「そうか。ありがとう。」

 ここでは情報収集もろくに出来なそうである。

 金獅子はチップ交換所で手持ちのチップを現金に交換する。

 4106万リラ。思わぬ収入を得た。旅の資金にちょうど良いだろう。

 その日はもう宿に戻って寝る事にした金獅子。


 翌日は昼前から行動を開始した。

 まだ酒に溺れていないシラフの人が多く街を行く。

 金獅子は目についた食堂で昼食がてら情報収集をする事にした。

 食堂はギャンブルの街らしく華やかな内装にド派手なシャンデリアがぶら下がった金持ちが好きそうな店だった。

 Aランチのハンバーグカレーを注文する。

「カレーか。黒猫は今頃どうしてるかな。あやつのカレーが懐かしいわ。」

 独り言ちる金獅子。

 注文してから10分後にカレーが運ばれてきた。

 金獅子はウェートレスにも聞いてみる。

「最近神の加護を得た者に心当たりはないか?」

「ハイ?神様の加護ですか?すいません。ちょっとわからないです。」

「そうか。ありがとう。頂きます。」

 カレーは思ったよりも辛口で尚更、黒猫の中辛のカレーが懐かしい。

「さて、どうしたものか。この街は皆、頭がギャンブルの事でいっぱいの様だしな。でもまぁ酒場がら1番噂話が集まるか。」

 やはり1人行動を続けてきたせいで独り言が増えた金獅子。

 そんな自身の呟きにも気付かずに会計をして食堂を出る。

 まずは手近な酒場に向かう金獅子であった。


 まだ昼頃という事もあり、酒場はベロベロの人は少なかった。ごく僅かに24時間経営の賭博場で大負けしたらしき者がくだを巻いている程度だ。

 金獅子はまだ呑み始めて間も無さそうな禿げかかっているおっさんに声をかけた。

「最近神の加護を受けたとか言う噂話を知らんか?」

「何?神の加護?いや聞いた事はないな。」

「そうか。ありがとう。」

 隣の席の短髪の青年と長髪の青年にも声をかける。

「最近神の加護を授かった人物に心当たりはないか?」

「神の加護だ?いや、知らないな。」

「俺も聞いた事がない。」

「そうか。ありがとう。」

 店のマスターにも話を聞く。

「神の加護持ちについて何か情報はないか?」

「情報?うちは酒場だよ。まずは注文してくれなきゃ。」

「うむ。それもそうか。ビールを頼む。」

「はいよ。銅貨6枚だ。」

「うむ。これで頼む。」

 大銅貨1枚を払う金獅子。

「はいよ。銅貨4枚のお返し。で、何だって?神の加護だ?」

「あぁ。最近神の加護を授かった人物を探している。心当たりはないか?」

「神の加護ねぇ。30年くらい前にはギャンブルの神の加護を持ってるなんて言われてた奴はいたが。最近は聞かないな。」

「そうか。」

 出されたビールを一気に飲み干す金獅子。

「ご馳走様。何か情報があったら集めておいてくれ。また来る。」

 そう言い残し店を出る。

「別の賭博場にでも行ってみるか。」

 昨日とは別の賭博場に足を運んだ金獅子。

 そこでもルーレット台をやり、ダブルアップ10連勝を叩き出す。

 1024万リラの勝ちである。

 連勝に湧いた人達にも情報を求めるが、やはり神の加護持ちについての情報はなく、この日も宿屋に戻るのであった。


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