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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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167話 モーノ共和国1

 金獅子が死者の砂漠を越えてモーノ共和国の首都モリノに到着したのは夕方になってからだった。

 愛馬を失い一人きりになってからというもの、夜間も魔物の接近に速く気付けるようろくに寝ていない。

 そんな金獅子であった為、まずは宿屋に向かい部屋を取った。

 捜索を考えて1週間分の料金を払う。

 そして食堂にて実に6日ぶりのまともな食事にありついた金獅子はその後部屋に戻り泥のように眠った。


 金獅子が気付いたのは通信用水晶の受信音だった。

 まだ眠い目を擦りながら水晶に向かう。

『あぁ。良かった金獅子様。なかなか繋がらないから何かあったのかと思いました。我々は聖都セレスティアに戻ってきました。金獅子様は今どこに?』

「あぁ俺様もモーノ共和国に着いたところだ。…ん?聖都に着いただと?まだドワーフ王国を出立して5日だろ?早すぎないか?」

『え?いえ。ドワーフ王国を出たのは8日前ですよ?』

「なんだって?」

 計算が合わない。それが本当なら金獅子は丸3日も寝ていた事になる。

「今日は何日だ?」

『今日は…。』

 確かにモーノ共和国に着いてから3日目経過していた。

 ひとまず宿屋に着くなり1週間分の宿泊料金を払っていた為、誰も起こしに来なかったのだ。

「なんて事だ。俺様は丸3日も寝ていたようだ。」

『まぁなんと。よほど死者の砂漠での旅がお疲れだったのでしょう。あまり根を詰めないように。ご自愛下さい。』

「あぁ、そうだな。砂漠を1人で越えたのはキツかったからな。」

『ひとまず銀狼様がモーノ共和国に向かわれるとの事です。今は首都モリノに?』

「あぁ。モリノだ。まだ何も聞き込み出来ておらんからな。1週間程度は聞き込みを続ける事になるだろうな。」

『モーノ共和国の首都モリノと言えばギャンブルの街として有名ですし、様々な方が訪問されるでしょうし、聞き込みもお時間掛かるでしょうね。聖都からですと10日程度は掛かると思われます。銀狼様には到着したら傭兵ギルドに向かって頂きます。金獅子様も10日後には傭兵ギルドに顔を出して頂きますようお願い致しますね。』

「あぁ。分かった。傭兵ギルドに俺様の宿泊先を伝えておこう。銀狼にもよろしく言っておいてくれ。」

『分かりました。金獅子様なら問題ないと思いますがモリノではギャンブルで一文無しになってしまう方もいると聞きます。ご留意下さいませ。』

「あぁ。分かった。ではまた何かあれば連絡する。」

 通信を終えた金獅子。

 まさか3日目も寝て過ごしてしまうとは。よほど砂漠の旅が堪えていたらしい。

 しかし、すっかり寝てサッパリしたところで早速聞き込みに出る事にした。

 時刻は夕方過ぎ、酒場を巡るのにはちょうど良い時間帯だ。

 だがその前に宿屋の食堂で夕飯を食い、宿泊期間の延長料金を払う事も忘れない。銀狼が来るであろう10日後までは連泊出来るように手配した。


 街に出た金獅子が目にしたのは華やかなネオンに包まれた街並みだった。

 街の至る所で喧騒が響く。

 まずは傭兵ギルドに行って銀狼が尋ねてきた際には自身が泊まっている宿屋に来るよう言伝を頼む。

 その後は街の至る所に乱立する飲み屋街を回る。

 酒場ではギャンブルに負けた者がヤケ酒に溺れ、ギャンブルに勝った者が賞盃を上げる。

 街のあちらこちらで酒に溺れる者達が騒ぎ立てる。

 話を聞こうにもすっかりベロベロな輩ばかりでろくに話が聞けない。

 そこで金獅子は夜間も営業している賭博場へと足を運んだのだった。


 夜だというのに賭博場には人が多く集まっていた。

 どの人も皆手にはチップを抱えてギャンブルに勤しんでいる。

 1種の熱気を感じるそこは日常とはかけ離れた場所となっていた。

 そんなギャンブル場をチップも持たずに歩く金獅子は1人浮いていた。

 それを見た1人の人物が声をかけてきた。

「我がギャンブル場、パレーションにようこそ。支配人のバレールと申します。見た所お客様は初めてのご来店でしょうか」

 支配人バレールはしっかりとしたスーツに身を包み、七三分けのきっちりとした髪型をしていた。

「む?確かに俺様は初めて来店したが、何故わかる?まさか客の全ての顔を認識している訳ではあるまい?」

「あはは。わたしも流石に全てのお客様のお顔は覚えられません。チップですよ。初めてのお客様はチップ交換を知らない方が多いのです。ですからチップを持たずに歩いている方は目立つんですよ。」

「なるほど。チップか。」

「えぇ。宜しければチップについてご説明致しますが?」

「いや。俺様はギャンブルをしに来た訳ではないのだ。情報収集がしたくてな。」

「なるほど。情報収集ですか。ですが、ギャンブラーはギャンブラーにしか心を開きません。ギャンブラーに話を聞きたければ同じ土俵に立たなくては。」

「む?そう言うものか?」

「えぇ。そう言うものでございます。」

「そうか。ではチップについて教えてくれるか?」

「はい、喜んで。チップ交換はあちらの交換所にて行います。当店の最低チップ額は1万リラになっております。チップは色毎に金額が事なり、白色チップは1万リラ、赤色チップは5万リラ、青色チップは10万リラ、緑色チップは25万リラ、水色チップは50万リラ、黒色チップは100万リラ、紫色チップは500万リラ、黄色チップは1000万リラとなっております。」

「色で分かれておるのか。」

「はい。宜しければ交換所までご一緒致しますが?」

「あぁ。では頼もうか。」

「はい。こちらへどうぞ。」

 七三分けの支配人バレールに連れられてチップ交換所に移動する。

「おいくらほど交換致しますか?」

「そうさな。まずは10万リラにしておくか。」

 そう言って10万リラを交換所のカウンターに出す金獅子。

「10万リラですね。では白チップが宜しいですかね。白チップを10枚お出しして。」

 バレールは交換所の店員に指示を出す。

 店員は白チップを10枚カウンターに置いた。

「宜しければゲームについてもご説明致しますが?」

「そうさな。教えて貰おう。」

「はい。カード、スロットなどもございますが1番人気はルーレットになります。」

「ルーレットか。」

 バレールはルーレット台へと金獅子を案内する。

「はい。ルーレットは0~36に00を加えた38のポケットがあり、どこに球が入るかを予想するゲームです。この1、2、3と書かれたテーブルにベットするチップを置きます。」

「うむ。」

「ベット方法はいくつかありまして、まずは数字にベットするインサイドベット。こちらは数字1つにベットするストレートアップは36倍、隣接する2つの数字にベットするスプリットは18倍、横並びの3つの数字、縦に並んだ4・5・6などにベットするストリートは12倍、隣接する4つの数字にベットするコーナーは9倍、0・00・1・2・3の5つの数字にベットするファイブナンバーは7倍、横並びの6つの数字にベットするラインは6倍となっております。」

「むむ。」

「数字以外のアウトサイドベットとして、1~12・13~24・25~36の12個の数字にベットするダズンは3倍、線1列の12個の数字にベットするカラムは3倍、赤色か黒色にベットするレッド・ブラックは2倍、19~36のハイ、1~18倍のローのどちらかにベットするハイ・ローは2倍、偶数か奇数かにベットするオッド・イーブンは2倍となっております。」

「難しいな。」

「初心者の方でしたらアウトサイドベットの方がお手軽でしょうか。0または00以外ならどれかには当たる為、2択、または3択になっております。」

「なるほど。2択か。では赤にベットしてみようか。まずは白チップ1枚だ。」

 赤を示すテーブルの上に白チップを1枚置く金獅子。

「ではノーモアベット。参ります。」

 ディーラーが言うと球をホイールに投げ入れる。

 球がルーレット台の中を回る。数字が書かれたウィールも回る。しばらく回り続けた球が入ったポケットは14。赤だ。

「おぉ。おめでとうございます。お見事赤で2倍になります。」

 バレールが賞賛の声を上げる。

「勝ったのか。なるほど。そう言う事か。なら次は勝った分の1枚を赤に賭けよう。」

 そうして勝った分をどんどん賭けていき、金獅子は12連勝した。

 手元のチップは元の換金した分も合わせて4106枚分、黄色チップ4枚に水色チップ1枚、緑色チップ1枚に青色チップ2枚、白チップ16枚にもなっていた。


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