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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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166話 死者の砂漠3

 今日も死者の砂漠を縦断する金獅子。

 すでに3日目である。

 早速朝から襲い掛かってきたジャイアントスコーピオンを倒した後のこと。

 通信用水晶に緑鳥から連絡が入った。

 大地母神の加護を得た地王、茶牛を仲間にしたと言う。一行は今から聖都セレスティアに戻ると言う。

 紺馬と茶牛、それに朱鮫を見つけた事で残りは3名になった。

 捜索開始から1ヶ月程度で半分見つけたのだ。順調と言えるだろう。

 そんな気の緩みもあったかもしれない。

 金獅子はここで愛馬を失う事になった。


 そもそもの始まりは突如砂から顔を出したジャイアントセンチピードとの遭遇からである。

 ジャイアントセンチピードは体長10mを越える巨体を持ち、熱光線と言う100度を越える光線を放ってくる厄介な奴だ。

 死者の砂漠での死亡者数を跳ね上げているのはこいつのせいだとも言われている。

 そんなジャイアントセンチピードが突如目の前に顔を出したのだ。

 馬を引く手綱を杭で止める間もなく戦闘に入った。

 ジャイアントセンチピードはその巨体を活かして体当たりしてくる。

 それを大剣で弾く金獅子。

 愛馬は逃げることなく金獅子の後ろをウロウロしていた。

 ジャイアントセンチピードの外殻は硬く、大剣で弾いても軽く傷付ける事しか出来ない。

 だが言わばデカイ百足である。

 体の節を狙えば攻撃は入ると見て大剣を振り下ろす。

「ギギャァァァ!」

 見事に節に当たった大剣は緑色の血を撒き散らす。

 と、ここでジャイアントセンチピードが顔をこちらに向けて熱光線を放って来た。

 超高温の光線を浴びれば無事では済まない為、体を左前に投げだしてこれを避けた金獅子だったが、金獅子の後ろには愛馬がいた。

 金獅子の後ろをウロウロしていた愛馬の首が熱光線により切断された。

 暫くは立ったままでいた愛馬だったが、ジャイアントセンチピードが体を捩った時の地面の揺れにより体を横に倒した。

「俺様の馬がぁ!」

 嘆く金獅子だがジャイアントセンチピードはそんな時間も許さない。

 熱光線を放出しながら金獅子の姿を追う。

 熱光線が通る度に体を投げだして避ける金獅子。

 実に10秒もの間吐き出され続けた熱光線は愛馬の首を斬るだけに留まらず倒れ込んだ体まで切断した。

「よくも俺様の馬を!許さん!!」

 危険なのは熱光線だけである。体当たりは大剣で防げる。

 熱光線も連発は出来ないようだ。それなら熱光線を放たれる前に節を狙って切り刻むのがいい。

「ギギャァァァ!」

 大剣を振り回して緑色の血を撒き散らす。

 1回目の熱光線から5分後、再度熱光線を射出してきた。

 兎に角避けまくる金獅子。大剣で防げば防げるかもしれないが、狙いが少しでもズレれば腕や足を失いかねない。

 ここは逃げるのが正解だろう。

 砂の上に体を投げだして飛び込み前転する。

 そこをまた熱光線が狙う為、別の角度に飛び込み前転する。そんな事を繰り返して10秒を耐える。

 長い体の節節は大剣でザックリと斬ってやった。

 それでもまだ動き回る大百足。

 もう何度目になるかわからない斬撃をお見舞いしてようやくその体を半分に切断した。

「ギシャァァァ!」

 それなのにまだ動くジャイアントセンチピード。短くなった体を器用に動かして砂の中に逃れようとする。

「逃がすかよ!」

 砂の中に大剣を差し込み、力任せに思いっきり砂をかきあげる。

 その勢いに巻き込まれたジャイアントセンチピードも宙を舞う。

 落ちてくるジャイアントセンチピードの頭の直ぐ下の節を狙って大剣を振り抜く。

「ギギャァァァ!」

 最後のひと鳴きを放ちジャイアントセンチピードは動かなくなった。

「あぁ。馬が…俺様の馬が…。」

 途方に暮れる金獅子。大量に買い込んだ食料や水、それに雨具などの荷物をすべて運んでくれていた馬が死んでしまったのだ。

 これからは自分で運ぶしかない。


 仕方なく馬の鞍を外し逆さにしてそこに大量の荷物を載せていく。

 手綱を鞍に結び引っ張っていけるようにした。

 馬の死骸は仕方なくそのままにする事にした。

 放っておけば魔物に食べられて骨すら残らないだろう。

 下手に埋めても掘り返されるだろう事を考えればこれが1番の弔いだろうと思う。


 そんな事で馬を失って自ら荷物を引っ張る事になった金獅子。

 ますます移動速度が遅くなった。

 当初予定では4日間程度で砂漠を越えてモーノ共和国の首都モリノに到着しているはずだった。

 だが3日目の今日でもまだまだ先は長い。

 兎に角魔物に襲われる為、戦闘に時間を要して遅々として移動出来ないのだ。

 こんな時魔法や魔術が使えれば敵を一網打尽に出来るのだろう。

 自然と先日の魔石魔術を思い出す。

 自分にも魔術が使えるようになるかもしれない。期待感は上がる一方だ。

 あと半年で物にすると約束した朱鮫。

 僅かな時間しか会話はしなかったが、魔石魔術に対する情熱だけは確かに感じられた。

 あれなら半年後、魔石魔術師の軍勢を用意出来るかもしれない。

 さて、残るは3人。

 今から向かうモーノ共和国に居なければまた砂漠を通って帝国にまで足を伸ばすつもりだ。

 今日から聖都セレスティアに戻ると言う緑鳥達、聖都に戻る前には自分がモリノに到着しているだろう。となるとモリノで合流するべきか。

 当初予定ではドワーフ王国から戻ったら緑鳥は聖都で待機し、残るメンバーは各地に散らばる事にしていた。

 特に一人で旅をする金獅子の元には銀狼が合流する話になっていた。

 2人なら砂漠越えも楽になるだろうか。

 暑さに朦朧としながら金獅子は考える。

 ダメだ。水を被ろう。

 水で濡らした事で頭がサッパリした。

 兎に角今は砂漠を速く越えてモリノに到着する事が先決である。

 しっかりした足取りとなった金獅子は砂漠を進む。


 結果、金獅子が砂漠を抜けるまでにはさらに3日を要した。


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