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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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165話 死者の砂漠2

 砂漠を行く金獅子。

 ジャイアントスコーピオンと戦った後はファイアーサラマンダーに襲われた。

 ファイアーサラマンダーはコモドドラゴンの近縁種であり、火を吐かない代わりに全身を火で包み体当たりをかましてくる厄介な奴だ。

 魔物のランク的にはDランクだが、ジャイアントスコーピオン同様にランクを当てにしていたら痛い目に合う。

 馬を杭でつなぎ止めてすぐにファイアーサラマンダーと向かい合う。

 幸い敵は1体だけだ。


 戦闘開始直後からファイアーサラマンダーは炎を纏った。

 それでなくても50度超えの灼熱の砂漠にあって対峙する魔物が炎塗れとなればさらに体感温度は上がる。

 これは早急に倒す必要がある。

 何よりも気を付けなければならないのはやはり毒だ。

 ファイアーサラマンダーも毒を持っている。目の横の耳線から毒を飛ばすのだ。

 だが炎を纏っている間は毒も蒸発してしまう為、飛ばしてこない。

 つまり炎を纏った状態が狙い目なのだ。

 だが攻撃しようと近付くと兎に角熱い。

 どこぞの学者が計測したところ、最大で500度超えの炎を纏うらしい。

「あっついのぅ!」

 体当たりをしてきたファイアーサラマンダーの頭部に向けて大剣を振り下ろす。

 コモドドラゴンと言う亜竜の近縁種なだけあって、外皮が硬いが竜鱗ほどではない。

 大剣を2度振り下ろしたところでその首が落ちて纏う炎も消えた。

「ふぅ。水は大量に買い込んで来てあるが、足りるかのぅ。心配になってきたわ。」

 独り言ちる金獅子。一人旅は独り言が増えてしまう。


 そうこうしているうちに日が落ちてきて過ごしやすい気温になる。

「なんだ。砂漠でも動きやすい時間帯もあるではないか。」

 金獅子は意気揚々と進む。

 どこか馬も元気を取り戻しているように見える。

 だがそんな事を言っていられたのも1時間程度。

 今度は急激に寒くなってくる。

「あー。寒い!このイエティの毛皮で出来たコートを買っておいで正解だったわな。」

 それは紅猿に会いに雪山を登る時に買った毛皮のコートである。

 値段が張っただけに捨てるのも躊躇われずっと持っていたものだ。

「全くどこで何が役立つかわからんな。」

 とは言え、こうも寒くては馬も先には進めない。


 金獅子は焚き火を焚いて暖を取る。馬も火に自ら近付いてくる。

 こうも寒くては魔物も襲って来ないだろう。そう考えていた時もあった。

 だが今目の前には数十のジャイアントマウスが近付いて来ていた。

 砂漠に適応したように通常のジャイアントマウスより体毛が長くフワフワしている。

 その体毛のお陰で夜の気温が下がった中でも行動出来るらしい。

 逆に金獅子は寒さで筋肉が固まり動きづらい状態だ。

 だがイエティのコートのお陰で動けない程ではない。

「よっしゃ!かかってこいや!」

 大声を上げて少しでも体温を上げようとする金獅子に向けて一斉にジャイアントマウスが動き出した。

 脅威となるのはその鋭利な前歯による噛みつきだ。

 金獅子は最初に近付いてきたジャイアントマウスを袈裟斬りにし、次のジャイアントマウスには心臓部に突きを放つ。

 次は首元を狙って頭を落とし、また袈裟斬りにする。次は逆袈裟斬りにして、頭上から思いっきり大剣を振り下ろす。

 ようやく体が温まってきた頃にはジャイアントマウスは全滅していた。

 こうして1日目の夜は過ぎて行く。


 翌日も綺麗に晴れて猛烈な日差しのもと、気温は50度を超えていた。

 ただ歩くだけでもフラフラになってくる。

 そんな中、注意力散漫になっていたのだろう。

 足元が砂に流れる。引き抜こうとしても流れる砂の速度が速く抜けない。

 そうこうしているうちに砂地が一気に凹み、あっという間に蟻地獄が出来上がった。

 すり鉢状の蟻地獄の中心には巨大なアリジゴクがいた。

 体長2m程度の体を砂に埋めて獲物が来るのを待っている。

 足を抜こうと、もがくも足は抜けずどんどん中心部へと流されて行く。

 こうなったらアリジゴクを倒すしかない。

 アリジゴクは噛みついたら毒入りの消化液を注入してくる。その毒性はかなり強く、フグ毒の約130倍だとか。噛みつかれたら終わりである。

 砂に流されながらも体勢だけはいつでも剣を振るえるように保つ。

 そしてアリジゴクに近付いたところで一気に大剣を振り下ろした。

 1度目、まだアリジゴクは動いている。

 2度目、まだ微かに口元が動いている。

 3度目、ついに動きを止めたアリジゴク。

 どう言う原理かは分からないがアリジゴクを倒した事ですり鉢状の砂の流れが止まった。

 砂から足を引き抜く。

 結構急な坂を登り切るとそこには愛馬が、座って待っていた。

 咄嗟のことで杭で手綱を止めておくことも出来なかったのだが、問題なかったようだ。


 その後も日中は虫系の魔物に襲われ、夜間はジャイアントマウスに襲われる。

 全く気が休まる事がない。

 しかも、襲い来るペースが速く思った様に先に進めていない。

 太陽の位置関係から向かっている方向は間違っていないはずである。

 当初予定は4日間で縦断出来ると思っていたが、まだまだ掛かりそうである。


 2日目の夜を越えて、3日目の移動を開始した金獅子であった。


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