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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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161話 ヌイカルド連邦国1

 ヌイカルド連邦国の首都ヌヌスへと白狐達が到着したのは、エルフの里を出て8日目だった。

 途中出てくる低ランクの魔物はほぼ全てが近付く前に紺馬が弓矢で射殺した。

 刀を振るう機会がめっきり減った白狐は少々機嫌が悪い。

 ヌイカルド連邦国は5つの小国がくっついて出来た連邦国であり、首都ヌヌスはそんな小国の1つであり、1番規模の大きな都市である。

 情報収集にはこの都市で聞き込みするのが最適と思われた。

 街の規模はそれなりに大きく、傭兵ギルドでまず3人で情報収集してからは二手に分かれて酒場などを回る事にした。紫鬼は1人で、白狐と紺馬が一緒に回る事になった。

 犯罪組織等が必要悪と見なされて警備の目を潜りぬけているヌヌスは、決して治安が良くはない。

 女2人、しかもエルフの女2人での情報収集ともなると絡んでくる輩もそれなりにいた。

「おぅおぅ綺麗なねーちゃん達じゃねーか。こっちで一緒に酒吞もうぜ。」

 今回の奴はしつこかった。

 最初はやんわりと断っていた白狐だったが、腕を捕まれた瞬間に刀の柄で男の鳩尾を強打していた。

 最近刀を振るう機会が少なくて機嫌が悪いのだ。

「おい!何しやがる!」

「綺麗な顔してる空って調子に乗るなよ!」

 酒場の男達が騒ぎ出す。

「いいですよ。相手になってやりますよ。何人でも掛かって来て下さい。」

 そんな挑発をする白狐を見て紺馬がタジタジである。

「お、おい。破王。ここは引いた方が良くないか?」

「いえ。1回懲らしめた方がいいんですよ。こんな奴ら。」

 刀に手を置く白狐。

「このアマ!調子に乗るなよ!」

 大男が両手を広げて掴みかかってくる。

 白狐は逆に1歩踏み出して刀の柄で男の顎下をかちあげる。その一撃で意識を飛ばした大男がその場で倒れ込む。

「やりやがったな!このアマ!」

「やっちまえ!」

 酒場の中にいた男達が一斉に白狐に向けて殺到する。

 店の中の為、小回りが利く脇差しを抜くと、峰部分で次々と男達を昏倒させていく白狐。

 通常峰打ちなどしたら峰部分が衝撃に弱い刀は曲がってしまったり、折れてしまったりするものだが、そこは達人の域にある白狐。力任せに殴るのではなく相手の骨を1、2本折るくらいに手加減して薙ぐように当てていく。

「このヤロー!」

「やりやがったなぁー!」

 喚き散らす男達。

 だが10分も掛からず店内の男達を皆昏倒させた白狐。

「気絶させたら話が聞けないじゃないか。」

 紺馬が呆れていると、白狐は倒れた男達を次々と頬を叩き起こして行く。

 最終的には店内は白狐と紺馬だけが立ち、男達が正座させられるという構図になった。

「で、誰か神徒とか王に関する情報を持ってる人はいますか?」

 白狐が問うが男達は皆、顔を横に振るばかりである。

「知りませんか。分かりました。」

 そう言って店を後にする白狐達。

 そんな聞き込みをあと4、5件繰り返したところ、街では『狂犬女エルフ達』としてちょっとした有名人になった。

 自分も含まれている事には納得いかない紺馬であったが、その噂のお陰で聞き込みもし易くなった。


 一方の紫鬼はと言えば、すっかり荒くれ者と意気投合して一緒に酒を飲み交わすようになった。

 もちろん吞んでるだけでなく情報収集もしている。

 だが、めぼしい情報はなく、やれどこの犯罪組織が潰されただの、どこぞの犯罪組織が新しく出来ただの、どっかの犯罪組織のボスが入れ替わっただのといった話ばかりだった。


 酒場が賑わうのは夜間の為、日中は同じ宿屋で白狐達と情報交換して、傭兵ギルドに顔を出し、簡単な魔獣討伐等の依頼を受けて、夕方になったら酒場に繰り出すということは事を続けること1週間。

 別の都市の噂話なども飛び交う為、ここで話が聞けない以上、ヌイカルド連邦国には神徒はいないと決定付けても良さそうである。

 その代わりに仕入れた情報として、隣国のララ法国とその隣のケイル王国が軍事衝突したが、ララ法国の軍師が凄い活躍を見せて1日で戦争が終わったと言う話を聞いた。

 邪神が地上界を滅ぼそうと言う時に小国同士で小競り合いなどしている場合ではないだろうに、人間とはなんと愚かな生き物だろうか。

 ただララ法国の軍師が凄いらしいと言う情報はあちこちで耳にした。

 そこまで凄いと言われている人物であれば、何らかの神の加護を持っていてもおかしくないのでは?と3人は話し合った。

 と言う事で、次の目的地をララ法国と決めて旅の支度をする。


 ララ法国は少し遠い。ヌヌスからだと第二の都市ララ・ライカが1番近いがそれでも馬で2週間程度掛かる距離である。

 その為、食糧や水を買い込む事にした。

 幸い紺馬が乗って来たのは人攫いから奪った馬車である。

 荷台に荷物を積み込む事が出来る。

 途中何があるかわからないので、3週間分程度の食料と水を買い込む事にした。

 すると手持ちの金にちょっと不安が残る。

 そこで傭兵の仕事を入れようと決めた。

 そこで気が付いたのが、紺馬が傭兵登録していないと言う事だった。

 ヌイカルド連邦国では特に街に入る時に身分証明書などの提示が不要だった為、失念していた。

 他の国に行くとなれば傭兵証明書くらいあった方がいい。

 そう言う訳で3人は傭兵ギルドへと足を運ぶのだった。



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