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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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155話 エルフの里4

 行きと同じくまた8日間かけて無事に捕らわれた4人の女エルフを連れてエルフの里へと戻ってきた白狐達。

 長老からは大層な礼を言われた。それだけにとどまらず感謝の意を示して今日は宴会を開くとの事だ。

 まぁ歓待されて悪い気はしないので、急ぎの用があるとは言いつつも白狐も紫鬼も宴会を楽しんだ。

 中でも出し物として紺馬が一度に5本の矢を射て的を捉えたのには驚かされた。

 戦闘中は精度を高める為に3本までとしているそうだが、やる気になれば一度に5本射れるらしい。

 飲めや騒げやの宴会は夜遅くまで続き、長老などは酔いつぶれてしまった。

 白狐は紺馬に話かける。

「長老さんからお話は聞いているとの事でしたが、どこまで聞いてます?」

「邪神復活と7カ月後の甲蟲人侵攻の為の神徒探しをしているというところまでだ。」

「ほぼ全てですね。それで紺馬さんも一緒に来てくれますか?」

「邪神の復活ともなれば地上界全土に影響が出る話だ。エルフの里も被害を受けるかもしれない。そうならない為にも是非ワタシにも同行させて欲しい。」

「おぅ。やったな。白狐。早速神徒1人を仲間に出来たぞ。」

「そうですね。幸先いいですね。」


 そんな会話をしていた中、緑鳥からの水晶での交信があった。

『ドワーフ王国で大地母神の加護を持つ方を発見しました。早速1名発見ですよ。』

「なんと。ドワーフ王国にも神徒がいましたか。こちらの精霊の住まう森のエルフの里でも1名、精霊神の加護を持つ精霊王の紺馬さんが仲間になってくださるとの事です。」

『まぁ。一度に2名も見つかるなんて幸先いいですね。』

「そうですね。でもここからが問題ですよ。どの神が加護を与えたかはわかってますが、どこの誰に加護を与えたのかが全くわかりませんからね。」

『そうですね。銀狼様と蒼龍様も今そのことを話し合ってらっしゃいます。』

「2人の義手はいつ頃出来そうなんですか?」

『1週間程度はかかるそうです。』

「2人分で1週間?早いですね。」

『その大地母神の加護を持つ方が義手を作成して下さっているのです。加護の影響で生産速度が大幅に上がったのだとか。』

「なるほど。そう言う事ですか。では私達はこのまま東方面に向かって神徒の噂話などを仕入れてみます。隣のヌイカルド連邦国からケイル王国に抜けるルートで移動しますね。」

『ではわたし達は義手が出来次第、南東の法国あたりを探してみます。』

「了解です。くれぐれも気を付けてくださいね。」

『はい。白狐様達もお気をつけて。』

 という事で通信は切れた。


「聞いていた通り、私達はこのまま東に向かって、再度ヌイカルド連邦国とその隣のケイル王国を目指しましょう。」

「さすがに地理に詳しいな。」

 紫鬼が問う。

「昔から放浪の旅をしてましたからね。大陸の国々の位置関係ならばっちりですよ。」

「ワタシは里からあまり出た事がないので外の世界には詳しくない。よろしく頼む。」

「えぇ。私に任せて下さい。」

 と言う事で宴会明けの翌日、早速紺馬を伴ってエルフの里を出ようとする白狐達を長老が呼び止めた。

「少ないが旅の途中の食料にでもしておくれ。」

 そう言って差し出されたのは兎肉の燻製だった。

「ありがとう。ありがたく頂こう。」

「何。里の危機を救ってくれた救世主様方だからな。本当はもっと沢山渡せれば良かったのだが、人攫いの件で十分な狩猟も行えていなかったのでな。少なくてすまんの。」

「いや。お気持ちだけで十分ですよ。食料なら途中で魔獣を狩れば良い事です。もしもの場合の保存食として有効活用させて頂きますね。」

「紺馬は里からあまり出たことがなく多少常識知らずな面もある。すまんがその辺りのフォローもよろしく頼む。」

「えぇ。任されました。」

「ではそろそろ行くか。」

「はい。行ってきます。長老。」

 長老は大きく手を振る。

「気を付けてな。」

 それに合わせて宴会で潰れていた大人達や目覚めた子供達も見送りしてくれる。

「気を付けてねー。」

「紺馬ねーちゃん、元気でねー。」

「体に気を付けてー。」

「バイバーイ。」

 紺馬は大きく手を振り、皆に別れを告げた。


 森を抜けたところに置いておいたパラライア達から奪った馬車の御者台に紺馬が乗る。

 白狐と紫鬼は乗ってきた馬にまたがり、準備万端だ。

「まずはヌヌスを目指しましょう。この前は人質奪還だけで情報収集は出来ませんでしたからね。もしかしたらヌイカルド連邦国にも神徒がいるかもしれませんし。」

「あぁ。わかった。先日行ったからヌヌスへの道は問題ない。」

 精霊の住まう森からヌヌスまでは草原が広がっており、起伏の少ない道だ。

 馬も好調に走らせる。

 途中出てくる魔物も低ランクで問題なく瞬殺出来ている。

 特に多いのがスライム系である。スライムは単細胞生物であり、自身を分裂させて仲間を作る為、1匹みたら30匹はいると思えと言われている。

 そんなスライム達は特に問題ないのだが、たまに変異種が出てくる。先日のデットリーポイズンスライムのように

 毒を操るものや、今目の前にいるアシッドスライムのように酸を操るものなどだ。

 まずはスライムに馬がやられないように遠く離れた位置に馬を置き、紫鬼が護衛に付く。

 アシッドスライムは体全体が酸性であり、生半可な武器では斬りつけた武器の方が溶かされてしまう。

 その為、白狐は距離を取り、飛ぶ斬撃で対処していた。

「飛剣・鎌鼬!」

 跳ぶ斬撃がアシッドスライムの体を削る。が、すぐにまたくっついて元通りになってしまう。

 核を正確にとらえる必要があるのだ。

 そこで活躍を見せたのが紺馬だった。

 弓に番えた矢は正確にアシッドスライムの体の中心を捉え、核を撃ち抜いた。

 核を失い、その場に溶け出すアシッドスライム。その解けた後ですら酸に焼かれて陥没していた。よほど強い酸を持っていたのだろうことが伺えた。

「遠距離攻撃ならやはり弓矢には敵いませんね。」

「いや。破王の飛ぶ斬撃もなかなかだったぞ。」

 そんな事を言い合いながら一同はヌイカルド連邦国の首都ヌヌスへと向かうのであった。


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