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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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153話 エルフの里2

 青年エルフに連れられてエルフの里に辿り着いた白狐と紫鬼。

 そこは大樹をくり貫かれて作られた住居と木を削って作られた階段、蔦で作られた木と木を結ぶ吊り橋など、自然をそのまま住み家にしたような土地だった。

 住居部分は雨対策なのか、少し高い場所をくり貫いて作られていた。

 まさに森の中にある里である。煉瓦やブロック塀などは一切無い。

 里に住む人口は100人ちょっとらしく、長命種にありがちな子孫を残しにくい性質はやはりらしく子供の姿も少ない。

 里を歩く大人は皆背に弓矢と夜筒を背負い、いつでも臨戦態勢と言った様子見である。

 その事を不思議に思った紫鬼が訊ねる。

「何故に里の中でも弓矢を背負っておる?あれじゃ疲れるだろうに。」

「あぁ。これには事情があってな。長老から話を聞いてくれ。」

 歯切れの悪い答えである。


 長老の家は1番高いところに空けられた穴だった。

 高齢者が高いところに昇るのは大変だろうなと紫鬼は思っていたが、実際に会ってみた長老は見た目は40代と言ったところだ。とても長老と言う雰囲気ではない。

 長老は家の奥に座していた。

「よく来たな。外の者よ。お前さんはエルフのようだが、ここの出身ではないな?」

 白狐は人化の術を使った際に長命を誤魔化す為にエルフに寄せた外見になっている。長老はその見た目から白狐をエルフだと考えたようだ。

「えぇ。私は生まれも育ちも街です。」

 白狐は話を合わせる。

「長老って割には若いんじゃな?」

 思っていたことをすぐ口にした紫鬼。

「なに。見た目こそ若いが儂はもう800歳を超えておる。エルフは老化が遅くてな。1000歳を超えてから見た目が老人になっていくのだ。」

「そうなのか?そいつはびっくりじゃな。」

「エルフと共にいても知らんかったか。」

「あぁ。エルフについての話はした事なかったからな。」

 ゆっくり頷く長老。


「まぁ、座りなさい。ドライアドに聞いたが、なんでも神の加護を持つとか?」

「えぇ。私達2人とも神の加護を持つ王、神徒です。」

 代表して白狐が話す。

「おぉ、神徒。最近里に精霊神様の加護を得た王が生まれてな。そやつも神徒に選ばれたと言っておったわ。」

「やっぱりここに新たな神徒が生まれていましたか。私達、神徒を探す旅をしているのです。」

「ふむ。よくわからんのだがその神徒と言うのは神の代弁者のようなようなものではないのか?」

「えぇ。実は私達先日まで人族領に攻め込もうとする魔族と戦っていたのですが…。」

 ここで白狐は邪神の神徒が大魔王として人族領への侵攻を企てていた事。そして邪神を復活させた事。さらに7ヶ月あまりで邪神の先兵が攻め入ってくる事。それを迎え撃つ者として新たな神徒を探している事を伝えた。


「なんと。あの邪神が復活したと?」

 長老は800歳と言う事は200年前の聖邪戦争の経験者だ。その頃を思え返しているのか体を震わせる長老。

「そうか。邪神は滅びてはいなかったのか。それに亜空間からの甲蟲人の侵攻か。」

「えぇ。その侵攻を防ぐためにも新たな神徒を集める必要があるのです。それでその精霊神の加護を持つ王はどこに?」

 長老は言い辛そうに言う。

「いや、実はな。今エルフの里では問題を抱えておってな。精霊神様の加護を得た王もその対応に追われておる。」

「問題…ですか?」

「あぁ。実はここ最近里を出た者達がことごとく行方不明になっておるのだ。それも木の実などを取りに行った女のみな。」

「それは…もしかして人身売買ですか?」

「あぁ。そうだと思われる。だから里の者は皆臨戦態勢なのだよ。今はちょっと外に出るにも男が必ず付き添うようにしておる。」

「なるほど。その問題が片付かないと精霊神の加護持ちも手が離せないと。」

「うむ。今も里の外で情報収集に明け暮れておるはずだ。」

「なるほど、なるほど。ならこうしましょう。私達もその人身売買組織の撲滅に強力しましょう。」

「なに?」

「いや、邪神の事で地上界全土の危機なのに人身売買とかしてる悪い奴らはとっちめた方がいいですからね。」

「おい、白狐。そんな事言って何かあてはあるのか?」

「紫鬼さん。私の見た目をお忘れで?エルフですよ?女エルフ。私が囮になりましょう。で捕まえに来た奴らを逆に捕まえて組織ごと潰してやりましょう。」

「なるほど。囮か。白狐ならぴったりだな。」

「そんな囮だなんて。お前さんに危険が及ぶ。」

「大丈夫ですよ。私強いんで。」

 と言う事で早速白狐を囮とした敵捕獲作戦に打って出た。

 なんでも最近は弓矢を持った男エルフも一緒にいた為に攫われる人はいなかったらしいのだが、森には人の気配はあるのでまだ諦めてはいないはずだと言うのだ。

 それならばと早速愛刀の白刃・白百合と脇差しを置いて颯爽と森の中に入って行ったのだった。

 残された紫鬼には客室があてがわれた。

「大丈夫ですかな?」

「む?心配ないぞ。白狐ならここの男達が束になっても勝つだろうからな。」

「しかし、武器も持たずに。」

「なぁに。心配ない。一流の剣客は徒手空拳でも一流だ。」


 白狐が出て行って一晩経った。

 もうそろそろ昼時に差し掛かろうと言う時間帯に白狐が戻ってきた。

 その手には縄が握られており、その縄に繋がれた5人の男達を引きずって戻ってきたのだった。


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