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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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152話 エルフの里1

 聖都セレスティアを出立して8日後。

 早馬を走らせてきた白狐と紫鬼は精霊の住まう森に到着した。

 森は鬱蒼と茂る太く高い木々に遮られて

 先が見渡せない。馬に乗って歩くにも木々の根が所々に出ており中々に難しい。

 仕方なく馬から下りて手綱を引きながらの移動となった。

 精霊の住まう森は知れ渡っているが、その中のどの辺りにエルフの里があるのかは一般的には知られていなかった。

 その為、白狐と紫鬼は深い森の中を当て所なく彷徨う事となった。


 森に出てくる魔物はホーンラビットやその上位種のブレードラビット、ジャイアントボアにジャイアントスライム等、お決まりの低ランクのものばかりだ。

 馬を傷付けない様に戦うのには多少苦労したが問題なく退けられている。

 しかし森の中を彷徨っていると現在地が分からなくなる。

 さっきも通ったような場所をぐるぐる回っている気にもなる。


 森の中を彷徨う事と5時間。

 すっかり辺りが暗くなってきた為、野営の準備を始める。

 夕食は狩ったばかりの兎肉を塩コショウで焼いたものだ。

 この4日間同じ様な食事ばかりである。

 黒猫がいた時の多彩な料理の数々を思い起こさずにはいられない。

 そんな夕食を終えて2人は交互に見張りにつきながら就寝する。

 夜間は森の魔獣達も活発になる為、馬をやられないように注意が必要だった。


 白狐が見張り番をしている時だった。

 周りの木々が一斉に動き始めたかと思えば木の中からドライアドが複数出てきた。

 ドライアドは木の妖精であり、葉の髪を持ち樹皮の体をした少女の姿をしている。

 そんなドライアド達が一斉に話しかけてくる。

「貴女はなんてお名前?」

「貴女達は何をしているの?」

「貴女はどこから来たの?」

「貴女は何をしにこの妖精が住まう森にやって来たの?」

「貴女はだあれ?」

「貴女達はなぜ妖精が住まう森に来たの?」

 白狐は面くらいながらも冷静に答える。

「ドライアドですか。私は白狐と言います。この森にはエルフの里を探しに来ました。」

 ドライアド達は宙に浮きながら白狐の周りを漂い始める。

「エルフの里だって。」

「教えちゃう?」

「エルフに聞かなきゃダメだよ。」

「エルフの里に確認しに行く?」

「エルフの里になんの用?」

「エルフの里には簡単には行けないよ。」

 ドライアド達は口々にエルフの里の在処を知っているような口ぶりだ。

「私はエルフに害を与えるつもりはありません。確認したい事があるだけなんです。」

「確認したい事?」

「なぁに?」

「何を確認するの?」

「害はないってさ。」

「エルフの里、教えちゃう?」

「エルフに聞かなきゃダメだよ。」

 白狐は静かに語りかける。

「ドライアドさん達は知ってますか?精霊神の加護を与えられた人物の事を?」

 ドライアド達が世話しなく動き回る。

「精霊神様だって!」

「精霊神様の事知ってるの?」

「精霊神様の加護を与えられた人だって!」

「知り合いなのかな?」

「精霊神様と知り合いなの?」

「加護持ちと知り合いなのかな?」

 白狐は確信した。エルフの中に精霊神の加護持ちがいる。

 しかもそれをこのドライアド達は知っていると。

「エルフの里に確認してきて貰えませんか?別の神の加護を持つ者が現れたので、エルフの里に連れて行っていいかを。」

「別の神の加護?」

「神様の加護持ち?」

「聞いてきてあげる?」

「ホントに害はないの?」

「エルフの里に行ってこようか?」

「害がないなら案内してもよくなぁい?」

 ドライアド達の中でも意見が割れているようだ。

「エルフの里に案内してくれるのはエルフの許可が出てからで構いません。まずは精霊神の加護持ちに私の訪問を伝えて下さい。別の加護持ちが迎えに来たと。」

「わかったぁ」

「聞いてきてあげる。」

「別の神様の加護持ちだって。」

「害はないんだって。」

「行って来よう。」

「聞いてこよう。」

 ドライアド達は口々に言いながら木の中に戻って行く。


 翌朝まで待っていた白狐だったが、それ以上コンタクトはなかった。

 だがドライアド達がエルフの里に聞きに行ってくれたはず。

 その事を紫鬼にも共有する。

「じゃあ、ここでドライアド達が戻って来るまで待つか。正直動き回っても見つかる気がしないわい。」

「そうですね。ここにいた方がドライアド達も見つけやすいでしょうし。」

 そう言うことでその場で暫し待つことにした2人。

 そんな2人に近付く影が1つ。

 白狐も紫鬼もその影の存在には気付いているが、明確な敵対行動がない為、様子見である。

 そこに影の人物が声をかけてきた。

「あんたらがドライアド達の言ってた別の神の加護を持つ人か?」

 その人物は横に長い耳をした金髪の青年だった。エルフだ。整った顔つきをしており、手には弓矢を持っている。

 まだ弓に矢を番えていない為、特に攻撃の意思があるわけではなさそうだ。

「えぇ。昨晩ドライアド達に伝言を頼んだのは私達です。」

 青年エルフは安心したように息を吐いた。

「そうか。容赦なく襲ってくるような人達だったらどうしようかと思っていたけど、大丈夫みたいだな。」

「えぇ。害をなそうと言うつもりは毛頭ありません。」

「そうか。ドライアド達の言うとおりだな。今から里に案内するけど、おかしな真似したらその瞬間蜂の巣だからな。」

「安心して下さい。危害を加えるつもりはありませんから。」

「じゃあ着いてきてくれ。」

 そう言って先頭を歩く青年エルフ。

 白狐と紫鬼も馬を引き連れはぐれないように進む。

 進み始めて1時間程経った頃、ようやく2人はエルフの里に到着したのだった。

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