145話 凱旋2
「さて、獣魔人の街のことはこれで良いとして次は無能の街を目指す事になるな。」
金獅子が言う。
「そうじゃな。ワンリンチャンとシュウカイワンを無事に帰さんとな。」
紫鬼が答える。
もう1泊して行けと新領主のハンライ始め、羊の執事にも言われたが街を出ることにした金獅子達。
まずは街の近場の草原を超えて森に入る必要がある。
しかし草原には以前もいたグリフォン達が上空を飛び回っていた。
グリフォンの数は見える範囲で10数体。以前よりも戦える人数の減ってしまった金獅子達だけでは対処が厳しく、帝国軍兵士達にも参戦して貰う事にした。
「そっちで戦えるのは4人か。なら残りは俺達、帝国軍兵士が受け持とう。」
バルバドスが宣言する。
「黒猫と銀狼は緑鳥達の護衛を頼む。俺様達は王化して挑むぞ!」
「「おぅ。」」
「はい。」
金獅子の号令に紫鬼、蒼龍、白狐が応える。
「俺達も行くぞぉ!帝国軍兵士の意地を見せてやれ!」
「「「おー!」」」
バルバドスの号令で帝国軍兵士達もグリフォンに向けて駆け出す。
敵の数が10体程度なので戦闘に自信のある兵士達だけを選出したようだ。
1体につき4人一組を三組あてがう。
獣王、鬼王、龍王、破王は1人1体を相手取る。
まずは機動力を削ぐ為にグリフォンの翼を狙うのが定石だ。
しかし、帝国軍兵士達ではグリフォンの行動力を抑えきれずに鋭い嘴や爪の攻撃を受けて傷つく兵士も多数出る。
「翼が狙えなければグリフォンの気をひいてはくれればこちらを倒してすぐ向かいますから!」
破王が帝国軍兵士達に聞こえる大声で言う。
「何を。帝国軍兵士の意地を見せてやるわい!ヤロー共!気合い入れろ!」
「「「おー!」」」
そこからの帝国軍兵士達の動きは中々のものだった。
重装兵3人で上空からの降下攻撃を受け止めると、一斉に6人の槍兵がグリフォンを突き、長剣を持った歩兵が3人で跳びかかって攻撃する。
ところでこの戦闘に参加していない勇者パーティーはと言えば周囲警戒と称して帝国軍兵士達の最後尾に陣取っていた。
確かに精鋭をグリフォン討伐に駆り出された状態で後方から魔物が襲ってくればひとたまりも無い為、間違ってはいないのだが、バルバドスは内心苛ついていた。
「サボりやがって。第3皇子でなければもっと言ってやれるのに。」
と独り言ちるのだった。
結局、金獅子達が加勢に入り2体ずつ討伐したが、残りは帝国軍兵士達だけで倒すことが出来た。
鋭い爪や嘴の攻撃を受けて不詳した者が多数出たが、死者は出さずに済んだ。
その後は特に問題なく森に入る。
今回はケットシー達の集落には寄らない為、16日間で森を抜けた
森を抜けた先、そこは悪魔達が住んでいた場所だ。
相変わらず木々に髑髏がぶら下がっていたりと不気味な印象だ。
そんな集落後はさっさと抜けて無能の街を目指す。
それから5日後には無能の街へと戻ってきたのだった。
無能の街に着いた金獅子達は街長のルイチェンの家に向かった。
「おぉ!皆さん、それにワンリンチャンにシュウカイワン。無事に戻られましたか。」
「あぁ犠牲も出しながらだが、なんとか無事に大魔王は倒してきた。」
「なんと、犠牲者が。それはそれは。大変でございましたな。」
金獅子の答えにルイチェンが言う。
「あぁ。それに新たな問題も出た。」
「問題ですか?」
「うむ。邪神が復活したのだ。それで1年後には侵攻を始めるとの事だ。」
「なんと!邪神が?滅ぼされたと聞いておりましたが、復活したと?」
「あぁ。奴は人族領に甲蟲人を放つと言っておったが、ここ無能の街が狙われないとも言い切れん。」
「そんな?!ここは無能の街ですよ?戦える人材などおりません。」
「その点はシュウカイワンが複合魔法を教えて少しでも抵抗出来るようにして欲しいのだ。」
シュウカイワンも金獅子の言葉に頷く。
「複合魔法ですと?聞いたことはございませんが、シュウカイワンが扱えると?」
「えぇ。わたしが考案した魔法になります。」
「おぉ!そうか、そうか。戦える術を身に着けて帰って来たのか。分かりました。それでは街の魔法が比較的得意な者にその複合魔法とやらを伝授して貰いましょうぞ。」
「ではそう言う事で頼む。」
「本日は1泊されて行きますか?宿の手配ならすぐにでもさせますが?」
「いや。俺様達もすぐにでも人族領に戻らねばならん。ワンリンチャンにシュウカイワン、世話になったな。」
「いいえ。こちらこそお世話になりました。」
「皆さんもお気を付けて。」
ワンリンチャンとシュウカイワンとの別れの挨拶もそこそこに金獅子達は無能の街を出たのだった。
街を出て4日目にはアンデッド軍団と戦った墓地に出た。
長いはせずにすぐに森に入る。
森では相変わらずワイルドウルフやレッドベアなどの魔獣に遭遇したが、特に問題なく先へと進むことが出来ている。
1泊挟んで森を抜けるとそこは巨人達が住んでいた山が広がっていた。
「また登山か。」
銀狼が疲れたような声を上げる。
「仕方ないですよ。この山を越えない事には人族領には行けないんですから。ほら、行きますよ。」
白狐が隻腕となった銀狼の腕を引く。
そうして再びの岩山登山が始まったのだった。




