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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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144話 領主権争奪戦

 金獅子が街に入るとすぐに気付いた住人達が、

「領主様のお帰りだぁ。」

「そら道を空けろ。」

「領主様がお戻りになられたぞぉ。」

 と大騒ぎだ。

 ひとまず一行は領主邸へと向かった。

 相変わらずデカイ屋敷に着いた金獅子達は早速中に入る。

 領主邸では執事らしき格好の羊系獣魔人の他、十数人のメイド達も待ち構えていた。

「お帰りなさいませ。領主様。本日はこちらでお休みになられますよね?支度は整っております。」

「む?そうか。でもまだ外に5000名近い兵士達がおるのだ。」

「5000名ですか。わかりました。街の宿屋に手配させましょう。領主様はお気になさらずお部屋でお休み下さい。お仲間の方々もお部屋は用意出来ておりますのでおくつろぎ下さいませ。」

 至れり尽くせりである。

 とても領主を辞退する話が出来そうにもない。

 仕方なく、その日は領主邸で1泊したのだった。


 明けて翌日、金獅子は執事の羊系獣魔人に話を打ち明ける。

「実は俺様は人族領に国を持っておってな。この街の領主を続ける事は難しいのだ。」

「なんですと?!ではこの街は領主様なしで運営していかなければならないのですね。」

「あぁ。すまんな。」

「いいえ。内政の事は先代領主様もそっちのけで戦闘訓練などをされていたので私めが対応しておりまして、今後もそれが続くと考えれば問題は無いのですが。領主不在と言うは問題がありまして。」

「内政の対応はお前がやっていたなら問題ないではないか?」

「いえ。喧嘩の仲裁や犯罪の抑止など、力仕事を任せられる領主様の存在は大きいのです。」

「そうか。力仕事か。ならこうするのはどうだ?街の民から新領主を選出して、俺様と交代するというのは?」

「領主権の譲渡ですか。それなら30年ぶりに『領主権争奪戦』を開催する事になりますね。」

「『領主権争奪戦』?おぉ。それで領主の座を取り合うのか。」

「はい。しかし何せ開催するのが30年ぶりとなります故、開催に当たってのルール等を再確認しないことには。」

 金獅子は顎髭を撫でながら言う。

「そうか。面倒を掛けるがよろしく頼む。」

「畏まりました。それでは開催に向けて準備させて頂きます。」

 執事の羊系獣魔人は急ぎ資料室へと向かって行った。

「これは新領主が決まるまではここで待機が必要になるか?」

 金獅子が言う。

「いや、大丈夫じゃないか?あとは街の皆でその『領主権争奪戦』とやらを開催して貰えばいいんだろ?」

 銀狼が答える。

「まさかその『領主権争奪戦』は現領主が見守っている必要があるなんてルールはないでしょうしね。領主が後釜を決める前に無くなった場合等に行われる争奪戦でしょうし。」

 白狐も言う。

「龍の谷では、族長が存命の場合は族長が見守る中で新族長を決める戦いが行われるぞ。」

 蒼龍が言う。

「ではこの街の『領主権争奪戦』も同じ様なルールがあってもおかしくはないな。」

 紫鬼も言う。

「そもそもが強者が領主になるって話だったよな?先の戦闘で戦士として戦える人員は全て俺達が倒してしまったんじゃないか?争奪戦を行うにしても参加者が募るか怪しいもんだろ。」

 黒猫が言った。

「「「確かに。」」」

 それには全員一致で納得した。

「まぁ今は執事さんのルール確認が済むまではこちらに滞在する他ないでしょう。」

 緑鳥が締めた。


「ルール確認が出来ました。」

 羊系獣魔人の執事が戻ってきたのは夕方になってからだった。

「現領主からなんらかの理由により領主権を譲渡する場合は『領主権争奪戦』を現領主が見守る中、執り行い、勝者となった新領主への権限委譲を宣言する。とありました。」

 金獅子は顎髭を触りながら言う。

「つまり俺様はその争奪戦を見ている必要があるのか?」

「さようにございます。」

「なんとか獣魔人達だけでどうにかならんか?」

「正式ルールですので、こちらを破って新領主と成られても皆が納得するかどうか。」

「むぅ。仕方ないか。では早急に争奪戦開催の案内を全住民に頼む。」

「畏まりました。本日付けでお触れを出します。開催タイミングは早い方がよろしいので?」

「あぁ。なるべく最速で頼む。」

「畏まりました。では3日後に開催と致しましょう。」

 そう言う事で領主権争奪戦が行われる事となった。


 お触れが出されてから3日後。

 金獅子達は街の中にある闘技場に来ていた。

 闘技場には街の住民が詰めかけており、観戦席に座れない者まで出ているようだった。

 金獅子達は特別席での観戦だ。

 自身の実力を鑑みて、出場する事に決めたのは4名の獣魔人達。

 1人目は牛系の獣魔人。牛系の獣魔人は先の戦闘でも参加者がいたくらいだ。戦闘能力はそれなりに高いと見える。均整の取れた体つきをした男だった。

 2人目は河馬系の獣魔人。体が大きい牛系獣魔人よりもさらに一回りは大きい。性別は男性。

 3人目は麒麟系の獣魔人。体の大きさはそこまででもないが長い首のお陰で1番身長は高い。性別は女性のようだ。

 4人目は犀系の獣魔人。丸で鎧のような外皮を持った大男だ。牛系獣魔人よりも大きく、河馬系獣魔人よりは小さい。


 そんの4人の対戦表は、くじ引きの結果、牛系獣魔人対麒麟系獣魔人、河馬系獣魔人対犀系獣魔人となった。

 ルールは簡単、負けを認めさせるか相手を殺した方が勝ち。

 殺してもいいと言うルールな辺りが魔人だと改めて認識させられるところだろうか。


 1回戦は牛系獣魔人対麒麟系獣魔人。

 牛系獣魔人は両刃の片手斧を持っており、麒麟系獣魔人は金属製の棍棒を持っていた。

 まずはお互いに武具の打ち合いが続いた。片手斧と棍棒と言う両者質量同士のぶつけ合いの為、結構な迫力のある打ち合いとなった。途中までは。

 武具同士の打ち合いが続いていたと思いきやいきなり麒麟系獣魔人がその長大な首をしならせて頭突きをかました。

 ぐらつく牛系獣魔人。その隙を突いて麒麟系獣魔人が棍棒を腹部に叩き付ける。

 吹き飛ぶ牛系獣魔人。しかし、すぐさま立ち上がると逆に頭を下げて角でのぶちかましを麒麟系獣魔人にぶち当てる。

 吹き飛ばされる麒麟系獣魔人。これは効いたらしく中々立ち上がれない。

 これは決まりかと思われたが不用意に倒れ込んだ麒麟系獣魔人に近付いた牛系獣魔人が股間に思いっきり棍棒を叩き付けられた。

 思わず見ていた男性陣が皆一様に股間を押さえた。

 その一撃をもって立ち上がれなくなった牛系獣魔人の頭部に棍棒を叩き付けて意識を刈り取った麒麟系獣魔人が勝利となった。


 2回戦は河馬系獣魔人対犀系獣魔人の対戦だ。

 河馬系獣魔人はフレイルと呼ばれる柄の先に鎖で繋がれた鉄球の付いた武器を、犀系獣魔人は槌を持っていた。

 河馬系獣魔人の持つフレイルの鉄球には細かい刺が付いており、当たればかなり痛い事になるのは誰の目にも明らかだった。

 フレイルの方が槌よりもリーチが長い事に加えて河馬系獣魔人の方が体格も良い為、よりリーチ差が出ている。

 それを見た観客達は河馬系獣魔人の方が優位だと見ていた。

 しかし、そんな下馬評を覆す自体が起きた。

 犀系獣魔人の外皮が硬すぎたのだ。その為、フレイルの鉄球についた刺が刺さらなかったのだ。

 そんな硬い外皮に物を言わせて急速接近して犀系獣魔人が槌を振るう。

 フレイルを振り回しつつ、距離を取ろうとする河馬系獣魔人だったが、犀系獣魔人の突進力に終始押され気味だった。

 最後までその関係性は続き河馬系獣魔人は体格差などの優位性を示せないまま犀系獣魔人に敗北する事になった。


 決勝戦は麒麟系獣魔人対犀系獣魔人。

 ここでも犀系獣魔人が自身の硬い外皮を武器に棍棒の打撃にも負けず、突進を繰り返した。

 これは犀系獣魔人の勝利かと思われたが、ここでも長い首を活かした麒麟系獣魔人の頭突きが炸裂。

 犀系獣魔人の横っ面をビシバシ叩く事になった。

 さらに棍棒も振り回し犀系獣魔人はメタメタに叩かれ槌も手放して防御一択となり、最終的には降参した。

 こうしてトーナメントの優勝者は麒麟系獣魔人となった。


 金獅子が武舞台に上げられ、麒麟系獣魔人への正式な領主権授与が大勢の前で行われた。

「アタシが立派に領主やっていくからアンタは気にせず街を去るがいいさ。」

 麒麟系獣魔人、ハンライの言葉を受けて大きく頷く金獅子であった。

 その後は新領主ハンライの言葉をもって領主権争奪戦はお開きとなった。


 早速新領主となったハンライにも邪神復活の事、1年後から侵攻が始まる事を伝える。

「まぁ。なんと。アタシ達は邪神は200年前に滅ぼされたと聞いていたんだけどねぇ。まさか復活するとは。」

「うむ。それでもしかしたら邪神の魔の手が、ここ獣魔人の街にまで及ぶかもしれん。戦士達は皆俺様達が討ってしまった事は分かってはいるが、街の防備には留意して欲しい。」

「はいよ。その辺りは新領主となったアタシが何とかするさ。安心してちょうだい。」

 と言う事だった。


 と言う事でこれをもって金獅子は獣魔人の街の領主の座を降りる事となったのだった。


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