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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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142話 戦後

「親愛なる聖神様、その比護により目の前の傷つきし者に最大なる癒やしの奇跡を起こし給え。ハイヒーリング!」

 度重なる戦闘が終わり、皆が緑鳥により癒やしの奇跡を受ける。

 肩口を食い千切られた紫鬼の肩もすっかり肉が盛り上がり元通りとなった。

 そこで白狐が黒猫に話しかける。

「クロさん、あの、その、ヨルさんはやっぱり?」

「あぁ。銅熊の放った破魂でやられた。どうやら片方の魂しか壊せなかったみたいだ。」

「そうですか。残念です。」

 肩を落とす黒猫の背中を摩る白狐。

「アイツ言ってたんだ。クロは儂がいるから大丈夫だって。きっと破魂を受けた時に俺を庇ってくれたんだと思う。」

「そうですか。ヨルさんに命を助けられましたね。」

「あぁ。アイツには助けて貰ってばかりだった。」

「そんな事ないですよ。クロさんもヨルさんの助けになっていたはずです。」

「だといいんどけどな。」

 そして全員への聖術がかけ終わった。


 まずは無事を伝える為、広間の扉を開けて桃犬達を招き入れる。

 ヨルを失いすっかり意思消沈した黒猫の元にドランがやってくると、宥めるかのように体を擦り始めた。

「ドラン。あぁお前がいるな。よしよし。」

 ドランを撫でる黒猫。

「黄豹も遺体もこのままって訳にはいかんな。」

 金獅子が言う。

「黄豹の王玉は…なんと!割れておる。」

 黄豹の亡骸がつけている右足のアンクレットの王玉が砕け散っていた。

「死神の力は失われたかったよ。」

 銀狼が言う。

「クロよ。ヨルがいなくなって影収納はまだ使えるのか?」

 金獅子が訊ねる。

「あ?あぁ、試してみよう。影収納。」

 無事に影収納が発動して黒猫の影から薪が出てくる。

「きっとヨルさんと一緒にいた事でヨルさんの妖気を浴び続けたから妖術が使えるようになったんですね。」

 黒猫が妖術を扱える理由を白狐が考察する。

 黄豹の火葬用に沢山の薪が影収納から取り出された。

 金獅子と蒼龍、紫鬼で薪を組んでいく。

 ジッと黄豹の亡骸を見つめる黒猫。

「一緒に盗賊やろうなって言ってたんだ。」

「そうですか。」

「殺し屋稼業は辞めるって。」

「そうですか。」

 白狐は黒猫の背中を摩りながら相槌を打つ。


 火葬用の薪が組み終わった。

 紫鬼が薪の上に黄豹の亡骸を寝かせ、桃犬とシュウカイワンが魔術と魔法で火を付ける。

 燃え上がる炎。

 珍しく龍王が一筋の涙を流した。若者の将来を憂いていた龍王にとって黄豹の死は辛いものだったのだ。

 その頃になってようやく、1階でガーゴイルと戦っていたバルバドスらが最上階にやって来た。先頭は勇者パーティーだ。

「大魔王は?大魔王はどこだ?」

 勇者バッシュが問う。

「黒猫が倒したよ。」

 紫鬼が素っ気なく答えてやる。

「なに?もう倒したのか。せっかく勇者の出番だと思って駆けつけたのに。」

 バッシュは悔しがっている。

「でもガーゴイル達を勇者様が押さえ込んだおかげで奴らが大魔王を討てたんですぜ?」

「そうですわ。流石は勇者様。おいしい所を他人に譲れる寛大さ。惚れ直してしまいますわ。」

 ライオネルとサーファが続けて言う。

「そうだな。僕の働きがあったからこそだな。」

 勇者パーティーはそれで納得したようだ。

 火葬中の炎を見てバルバドスが問う。

「誰か死んだか?」

「あぁ。黄豹とヨルがな。」

 金獅子が答える。

「ヨル?あの猫か?そうか。」

 バルバドスは静かに燃える炎を見ていた。


 火葬が済んだ後、バルバドスが訊ねてくる。

「して、あの色白の魔人が大魔王だったのだな?それならこっちの虫の化け物はなんだ?こんな魔物見た事も聞いた事もないが?」

「あぁ。それは甲蟲人と言うらしい。復活した邪神が放ってきた刺客だ。」

「なんと?!邪神が復活しただと?」

 そこで金獅子は事のあらましを説明してやる。

「1年後、一月毎に1体の刺客…か。これは本国に戻って早急に対応策を練らねばならんな!」

「あぁ。世界的に対処が必要になる。我が獣王国も手立てを考えねばならん。」

 顎髭を触りながら言う金獅子に対してバルバドスが素っ頓狂な声を上げる。

「我が獣王国?我がと言ったか?いやおっしゃいましたか?」

「うむ。俺様は獣王国の国王。獣王金獅子である。」

「なんと?なにゆえ一国の王が傭兵団などと?」

「その方が今までは動きやすかったからな。だがこれからは獣王国の王として動く必要がある。」

「ははぁー。度重なる暴言失礼致しました。」

「なに。気にするな。お前は傭兵団員に向けて話していたのだ。気にとめる必要は無い。」

「そう言って頂けると助かります。して、これからどうされるおつもりで?」

「うむ。まずは国に戻る。そして獣王と聖王の共同声明として世界中の各国へ邪神復活の旨、通達し迎撃態勢を構築していく事になろうな。」

「そうですか。なら我が国、帝国も含めた三国からの共通声明としてくだされ。皇帝陛下には私から話をしますので。」

「うむ。状況を知る国が多いのは良いことだ。情報が錯綜しないようにだけ気を付けてくれ。」

「はっ。畏まりました。」

「ではこの城にも長居は無用だろう。帰ろう。俺様達の国へ。」


 こうして対魔王の城を後にする事にした金獅子一行と帝国軍兵士達。

 まず目指すは獣魔族の街だ。

 金獅子は新たな領主となったわけでこのまま放置する訳にもいかない。

 まずは領主代行を立てて、そいつに街のことは任せようと考えていた。

 その後は無能の街を目指す。

 案内役として同行してくれていたワンリンチャンとシュウカイワンを帰さねばならない。

 1つ思いついた金獅子は3階のダンスホールで倒したゴーレムの破片を黒猫の影収納に仕舞って貰った。きっと後で役に立つだろう。

 1階は足の踏み場もないほどにガーゴイルだった石像が散乱していた。おびただしい血痕などが戦闘の凄まじさを物語っていた。

 少なからず帝国軍兵士達にも死傷者が出たとのことで、その者達にも黙祷を捧げる。


 そして一行は獣魔人の街を目指して旅立ったのである。


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