表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

142/550

141話 甲蟲人:蜚蠊1

 甲蟲人:蜚蠊(ごきぶり)は破王の白刃・白百合によって受け止められたメイスを再び振り上げた。

 その隙を見て破王は白刃・白百合を蜚蠊の腹部に向けて斬り込む。

 ガギンッ

 その手応えは先程対峙したゴーレム同様に硬質なものだった。

 つまりこの甲蟲人は外皮がアダマンタイト並に硬いと言う事だった。


 蜚蠊がメイスを振り下ろす。

 破王は引き戻した白刃・白百合で受ける。

 その間に獣王が大剣を振りかざし蜚蠊に迫る。

 頭部を狙った斬撃を放つ獣王。

 ガギンッ

 獣王の大剣すらもその頭部の外皮は受け止めてしまった。

「ギシャァァァア!」

 蜚蠊が吼える。

 白刃・白百合に受け止められたメイスを獣王に向けて薙ぎ払う。

 咄嗟に後退して避ける獣王。


 そのタイミングで龍王の双槍による突きが蜚蠊を襲う。

 ガギンッ

 硬質な音を立てて槍が外皮に受け止められる。

「ギシャァァァア!」

 獣王に向けて振るったメイスを今度は龍王に向けて薙ぎ払う。

 龍王は三叉の槍でメイスを受けると、紅色の槍で再び蜚蠊を突く。今度は体の節を狙った突きだ。

 首筋の節を狙った紅色の槍での突きが蜚蠊に当たると一気に燃え上がる。

「ギシャァァァア!」

 メイスを振り回しながら消化しようと暴れ回る蜚蠊。


 そこに近付いたのは鬼王。

「鬼拳!」

 妖気を纏った拳を蜚蠊の外皮に包まれた胸部に向けて繰り出す。

 ガギンッ

 硬質な音が響く。

 鬼拳をもってしても外皮を砕く事は出来なかった。


 暴れる事で消化した蜚蠊はメイスを持った手をだらりと下げ、周りを見回した。

「ギシャァァァア!」

 敵が4人いることを確認した蜚蠊は1度後方に下がってから高速で4人の周りを回り始めた。

「む。こいつ素早いぞ。」

 獣王が皆に聞こえるように言う。

「硬いだけじゃなく、膂力も強いし、速度もある。強いですね。」

 破王も話を合わせる。

「節への攻撃は効いた様に見えた。外皮を避け、体の節を狙うべきだろう。」

 龍王も言う。

「捕まえられればワシの関節技で腕くらいなら折ってやれるじゃろ。捕まえられればな。」

 鬼王も言う。


 4人の周りを回っていた蜚蠊は両手に槍を持った龍王目掛けてメイスを振り下ろしてきた。

 先程燃やされたのを恨んでの事かもしれない。

 三叉の槍でメイスを受けると、再び体の節である腕の付け根を狙って紅色の槍を突き入れる。

 メイスを持つ腕の付け根が燃え上がる。

「ギシャァァァア!」

 蜚蠊は再び火を消化する為に、メイスを振り回し暴れる。

 その隙をついて破王が左腕の付け根を狙って白刃・白百合を振り下ろす。

 ガギンッ

 左腕を上げてこれを防ぐ蜚蠊。お返しとばかりにメイスを振り下ろす。

「ギシャァァァア!」

 引き戻した白刃・白百合でこれを受ける破王。しかし、その威力を完全には殺せず、後ろに数歩下がる。


 そんな破王を追いかけてメイスを振り上げる蜚蠊。

 そこに割って入ったのは獣王。

 振り上げたメイスを持つ右腕の肘の節を狙って大剣を振り下ろす。

「断頭斬!」

 ガギンッ

 僅かに狙いが逸れて右腕に当たる大剣。だがそのおかげてメイスを振り下ろすタイミングがズレた。

 破王の目の前を通り過ぎるメイス。

 その振り下ろした風圧だけで凄まじい膂力である事がわかる。


 再び破王の背後から蜚蠊に近付き拳を放つ鬼王。

「鬼拳!」

 これを左肩で受けた蜚蠊はお返しとばかりにメイス振るった。

 ガギンッ

 メイスを左肩に受けて吹き飛ばされる鬼王。数回転がりながらもすぐさま立ち上がる。

 鬼拳を受けて痺れているであろう左肩に向けて破王と獣王が刀と大剣を振り下ろす。

 ガギンッガギンッ

 肩関節の節に当たる。

 蜚蠊は1度左腕の感覚を確かめるように肩を回す。まだ動きに支障はないようだ。


 蜚蠊は獣王に向き直りメイスを振るう。

 大剣で受ける獣王。しかし、その膂力に押される形で膝を着く。

 その間にも破王が左肩関節目掛けて白刃・白百合を振るう。

 1回。

 ガギンッ

 2回。

 ガギンッ

 3回。

 ガギンッ

 これを嫌がった蜚蠊が破王に向き直りメイスを振るう。

 白刃・白百合で受け流す。そしてお返しに伸びた右腕の肘関節に白刃・白百合を

 叩き付ける。

 ガギンッ

 刀を受けた事など気にする様子もなく、再びメイスを振るい破王の腹部を殴りつける蜚蠊。

 腹部を強打された破王は吹き飛びされる。その腹部の王鎧には罅が入っていた。

「なんて威力ですか。」

 呟きながら立ち上がると、蜚蠊に向かって駆け出す破王。

 直前で跳び上がり、龍王に向けてメイスを振るっていた蜚蠊の頭頂部に白刃・白百合を叩き付ける。

 ガギンッ

 それでもやはり硬質な外皮に弾かれてしまう。

 その間も鬼王は蜚蠊を殴り続けているが意に介した様子はない。

 振り下ろされたメイスを三叉の槍で受けていた龍王だったが、あまりの膂力に膝を着いてしまう。そこに強烈な蹴りが飛んできて転がされる。

 龍王を蹴り飛ばした蜚蠊は再び破王に向き直りメイスを横薙ぎに払う。

 白刃・白百合で受けた破王だったが、その膂力に押される形で鬼王共々吹き飛ばされる。

 唯一フリーになった獣王が破王に向けてメイスを振り払ったタイミングを見て再度左肩に目掛けて大剣を振るう。

 ガキッ

 これが見事に節に当たり左肩を半分近く斬ることに成功。

「グギギギッ!」

 これで蜚蠊の左腕が上がらなくなった。


 それでも構わずメイスを振り回す蜚蠊。

 大剣での防御が間に合わずメイスを胸部に受けてしまい吹き飛ばされる獣王。

 獣王の王鎧に罅が入る。

「一撃で王鎧を割るかよ。」

 獣王が呟く。

「ギシャァァァア!」

 再び龍王に向けてメイスを振りかざす蜚蠊。三叉の槍で受ける龍王。

 しかし膂力に負けて段々と競り負ける。

 左腕の紅色の槍も入れて両腕でメイスを押し返す。

 そんな中、鬼王がメイスを持つ右手を捕まえた。

「うぉぉぉぉお!」

 肘関節を極めて足払いして蜚蠊ごと倒れ込む。

 ゴギンッ

 メイスを持つ右腕が肘から先をあらぬ方向に曲がる。


 両腕を不能にされた蜚蠊であったが、体を振る事で動かなくなった左腕と肘から先が折れ曲がった右腕を振る。

「うおぉぉぉぉ!」

 獣王が大剣を振りかぶって跳躍する。

「断頭斬!」

 ガキッ

 ちょうど蜚蠊の左肩に当たった大剣はその勢いのままに左肩を切断した。

 振り回されるメイスを持った右腕。しかし折れ曲がっている為、先程までの威力はない。これを白刃・白百合で受け流すと、折れ曲がった右肘目掛けて白刃・白百合を振るう破王。

 ガキッ

 折れ曲がって強度が脆くなった右肘も切断される。


 攻撃の手段を失ったかに思われた蜚蠊だったが、大口を開けて破王に噛みついてきた。

 咄嗟に左腕でガードする破王。腕に噛みついた蜚蠊。

 ミシミシミシッ

 王鎧を噛みつぶす勢いで噛んでくる。

「くうぅぅ!」

 思わず声が漏れる破王。

 破王の腕によりをかけ噛みつく蜚蠊の首の節を狙って龍王と獣王が攻撃を仕掛ける。

 これを嫌がった蜚蠊は破王の腕を離し、後方に跳ぶ。

 すると背中が割れて翅が現れた。

 その翅を使って空中に跳び上がる蜚蠊。

 破王の左腕からは鮮血が滴る。

「ギシャァァァア!」

 鳴きながら空中を飛び回る蜚蠊。

「飛剣・鎌鼬!」

「水撃・龍翔閃!」

 破王度龍王が遠距離攻撃を仕掛けるもその速度についていけず空を切る。


 と、ここで鬼王の王化が解けてしまう。爪王の力も使っていた為に王化可能時間が短くなっていたのだ。

「王化が解けたなら緑鳥さん達の所へ。王鎧なしでは危険すぎます!」

 破王が紫鬼に言う。

「問題ない!ワシはまだやれる!」

 そう言ったそばから蜚蠊が紫鬼に向けて降下し、左の肩口を噛み千切る。

「ぐぬぅ!」

 かなり深く噛まれたようだが、まだ左腕は動く。致命的なダメージではないが、噛み千切られた箇所からは大量な出血がある。

「ほら!早く緑鳥さん達の所へ!」

「いかん!ワシが行けばこちらに気が向いとるこいつが緑鳥達の方へと向かうかもしれん。」

「確かにそうだな。」

 獣王もその判断に賛成した。

「分かりました。紫鬼さんは背が高い分狙われ易いでしょうから、中腰になるかしゃがんでいて下さい。」

「おう。分かった。」

 空中から顎をカチカチ言わせながら4人を狙う蜚蠊。

 空中から舞い降りては肩や腕などに食らいつこうとする。

 上昇しては降下を繰り返す蜚蠊。

 対空の技は何度放とうともその速度についていけずに空を切る。

 龍王も槍で迎撃しようとするが、槍を突き出した瞬間には再上昇してしまい、槍が届かない。

 もう1度左腕を噛ませて白刃・白百合で斬りかかろうとする破王だったが、その狙いがバレているのか龍王や獣王、鬼王に向けて顎を突き出してくる。

 何度目かの獣王を狙った降下中、ここで獣王が攻勢に出る。

「雷撃断頭斬!」

 空中の蜚蠊目掛けて跳躍し、雷撃を纏った大剣を叩き付ける。

 真っ直ぐに自身に向かってきていた為に、見事に右肩口にヒットする。

 ビリビリビリッ

 雷撃を受けた蜚蠊は墜落する。そこに破王と龍王が殺到する。

 首の節を目掛けて白刃・白百合で斬りかかる破王と三叉の槍と紅色の槍で突く龍王。

 そこに着地した獣王も混ざり、首の節を一斉に攻撃する。

「双龍覇連突!」

 2本の槍での高速突きを放つ龍王。

「雷鳴剣!」

 雷撃を纏った大剣を叩き付ける獣王。

「抜刀術・飛光一閃!」

 鞘に戻した白刃・白百合を高速で振るう破王。

「抜刀術・閃光二閃!」

 さらに二擊の剣閃。

「抜刀術・発光三閃!」

 ダメ押しの三擊。

「ギシャァァァア!」

 最後の断末魔を上げて蜚蠊の首が刎ねられた。それでも体だけが、飛び跳ねて対空する。

 まだ動くのか?と4人が見上げる中、しかし暫く対空した蜚蠊の体は力を失い墜落した。


 こうして蜚蠊は倒れたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ