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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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140話 復活

 門が開いた。

 その先に広がるのは真の暗闇。

「あぁ…門が…。」

 聖王の嘆きの声が聞こえる。


 門の中から真っ黒な煙が吹き出して空中に留まる。

 その煙は辛うじて人の形をしていた。

 煙は己を抱くように力を込めていく。

 圧縮される煙。段々と明確な人型を形作っていく。


 煙が完全に圧縮された時、そこに立っていたのは自身の肩を抱いた小さな子供だった。

 年の頃で言えば13歳程度に見える。

 灰色の神をして、深紅の瞳を持っていた。

 そんな子供が言う。

「アハハッ。やっと解放されたよ。」

 その声音は冷たく、まるで首筋を撫でられるかのように体を震えさせる。

「ボクの神徒はしっかりと使命を果たしてくれたようだね。」

 そう言うと広間を見渡し、床に伏せた帝王の姿を見つける。

「あぁ。なんだ。負けてしまったのか。せっかく無能と言われながらも戦闘に直向(ひたむ)きに向き合い、自身を昇華させ続け、無能ながらに他の種族に負けない戦闘能力を身につけた戦士。そんな彼をやっと見つけ神徒としたのに。そうか。負けてしまったか。」

 ゆっくり地に伏した帝王、銅熊の元に歩き出す。


 黒猫含め、各神徒達はその少年の放つ異様な気配に気圧され動く事が出来ないでいた。

「負けてしまったのならもう用はない。」

 銅熊の額に埋まった王玉を抉り取る少年。

「あぁそうだ。自己紹介がまだだったね。ボクの名は…まぁいいか。人はボクを邪神と呼ぶよ。」

 少年は近くに佇む黒猫には目もくれず門の方に歩き出す。

「あぁ…でも本当に長かった。やっと戻って来れた。亜空間は何も無くてね。たまに虫が湧く程度で他には何も無かった。でも気付いたんだ。虫が湧くと言う事は地上界に繋がっているのではないことね。そして見つけた。虫しか通れないほど小さな歪みを。亜空間と地上界を繋ぐ門だ。」


 少年は壇上に昇る階段に足を掛ける。

「そこからがさらに大変だった。僅かな歪みを通してボクの神徒たり得る者を探したんだ。そしてやっと見つけた。その者に亜空間との門の開き方を伝え準備させた。どれ程の時間が掛かっただろうね。」


 少年は壇上の玉座に腰掛ける。

「時間は有り余っていたからね。虫を改造するくらいしかやる事はなかった。でもようやくこの地上界に戻ってきたんだ。混沌に塗れた世界を作ってあげようじゃないか。」


 少年は玉座上で足を組む。

「でもせっかく長い時間を掛けて地上界に復活したのだ。すぐさま堕とすには勿体ないな。そうだ。こうしよう。今から1年猶予をあげようじゃないか。キミ達他の神の神徒も数が減っているのだろ?1年間で戦士を集めるといい。」


 少年は足を組み直す。

「1年後、一月に1回のペースで甲蟲人(こうちゅうじん)を放とう。あぁ甲蟲人と言うのはボクが亜空間で弄った虫達の事さ。そして13カ月後にボク自らがこの地に戻って来よう。そして世界を混沌の渦に堕としてあげよう。」


 少年はパチンと指を鳴らす。すると暗黒の門の中から蟲を無理矢理人型にしたような化け物が現れた。

 その化け物は玉座に座る少年の隣に立つ。

「こいつは甲蟲人の蜚蠊(ごきぶり)と言うんだ。先兵役として作ったんだけど、理性と言うものが育たなくてね。仲間の蜚蠊も食べてしまった。本能だけで戦う狂戦士と言う奴だね。まずは手始めにこいつの相手をしてあげて。亜空間でも爪弾き者でね。少しくらい構ってあげないと可哀想だろ?」


 少年は玉座から立ち上がった。

「あ。そーそー。もう亜空間との門が開いたんだ。ボクは何処にでも門を開けられるようになった。だから毎月ここに来なくていいよ?人族領の何処かに定期的に甲蟲人を送り込むから。じゃあ次は25カ月後に。精々強者を集める事だね。ボクが来た時にはすでに滅んでましたじゃあ詰まらないからね。」


 少年は門の方へと歩いて行く。

「それじゃ次は1年後に甲蟲人を送るから。今はその子の遊び相手をしてやってちょうだい。じゃあね。狂戦士:蜚蠊。楽しんで」


 少年は門の中へと消えていった。

 部屋の中に充満していた圧力が晴れる。

「あれが邪神…。」

 破王が呟く。

「身動き1つ出来なんだ。」

 獣王も呟く。

「1年後…。さらなる仲間か…。」

 龍王が呟くように言う。

「25カ月後にはまたあの邪神が来るっちゅう事か。」

 鬼王も呟くように言う。


 そこで聖王が声をあげる。

「皆さん!甲蟲人が動きます!お気を付けて下さい!」

 そこで破王は気付く。黒猫は王化も解かれて無防備状態だ。

「はっ!クロさんっ!」

 駆け出す破王。

 それに釣られるように獣王、龍王、鬼王も走り出す。

 牙王は未だ気を失っており、黒猫は放心状態だった。


 狂戦士:蜚蠊が1m程の先端が6つに、分かれた形状のメイスを取り出した。

 メイスとは打撃部分の頭部に柄がついた合成棍棒の一瞬であり、戦棍とも呼ばれる。

 甲蟲人はその体を外皮で覆われており、地に着く脚以外にも体から直接生えた数本の脚があった。それらが不気味に蠢く。

 狂戦士はゆっくりと玉座のある壇上から降りてきた。

 その目は真っ直ぐに黒猫を見ている。

 狂戦士はこれまたゆっくりとした動作でメイスを振り上げて黒猫の頭部を狙う。

 あんなもので鎧も着けていない頭部を殴られたら頭が破裂してしまうだろう。


 振り下ろされるメイス。

 その時、黒猫と狂戦士の間に破王が滑り込み、白刃・白百合でメイスを受け止めた。

 獣王に龍王、鬼王も続々と集まってくる。

 聖王は黒猫を牙王を寝かせた位置まで引っ張ってくる。

 これこら起こる戦闘に巻き込まない為だ。

 その間に牙王が目覚める。

「うぅ。何があった?帝王は?」

「帝王は黒猫様が倒しました。しかし、それと同時に封印が解け、邪神が復活しました。」

 聖王が説明する。

「何だって?」

「それで今は邪神が置いていった甲蟲人と戦闘に入る所です。」

「甲蟲人…?」


 聖王が牙王に説明した直後、狂戦士:蜚蠊対破王、獣王、龍王、鬼王の戦いが始まった。


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