136話 決戦4
4mの人の体に牛の頭部と蹄を持つ牛頭鬼と戦っていた鬼王であるが、打撃だけだは辛いと思い初めていた。
なにせ、牛頭鬼の腹部の肉が厚い。
こるでは打撃の衝撃も十全には浸透させられていないかもしれない。
そこで鬼王は奥の手を1枚切る。
「王化!爪王!」
鬼王が叫ぶと左腕のバングルにはまった王玉から灰色の煙が立ちのぼり、左腕に吸い込まれるように消えていき、左腕に灰虎が付けていたような灰色の鉤爪付きの籠手を身に着けた爪王形態になる。
「これならどうじゃ?」
試しに左腕を振るってみると、鉤爪から風の刃が出現し、牛頭鬼の腹部を切り裂いた。
いける。これなら皮膚を削り肉を絶つ事が出来る。
牛頭鬼が振るってくる巨大な戦斧を掻い潜り、腹部を殴りつける。
「鬼拳!」
そしてさらに風の爪で斬撃を放つ。
「風刃・鬼斬!」
パッと飛び散る牛頭鬼の血飛沫。
まだ外皮を切り裂いただけだが、全くの素手の時よりは与えたダメージが見えやすい。
とそこに牛頭鬼の横殴りの戦斧が逼ってきた。
風の刃で受ける鬼王。
しかし、その膂力は凄まじく、横に吹き飛ばされる。
数回転がりながらもすぐさま立ち上がる。
油断した。爪擊が見事にはまった事で気が緩んだ。
最初に銅熊が言っていた通り、魔将として神通力を分け与えられていなくとも十分強い相手である。
油断禁物。自身に言い聞かせる。
「よし。」
鬼王は呟き、牛頭鬼に向かって駆けだす。
振り下ろされる戦斧を避けて大きく跳躍すると、牛頭鬼の顔面目掛けて爪擊を放ち、風の刃を振るう。
咄嗟に片手で顔面を覆う牛頭鬼。その手のひらが大きく裂ける。
飛び散る鮮血。
さらに地上に降り立った、鬼王は右腕で拳を放つ。
「鬼拳!」
吹き飛ばされる牛頭鬼。
ここに来て初めて明確なダメージを与える事に成功した。
「ブモォォォオ!」
雄叫びを上げて突っ込んでくる牛頭鬼。
横薙ぎに払われる戦斧を屈んで避けると空いた脇腹に左手の拳を突き出す。
左手には灰色の鉤爪を装備している。
その鉤爪が深く牛頭鬼の脇腹に沈んでいく。
「ブッブモォォォ!」
相手の突然の攻撃手段の変化に牛頭鬼は焦っていた。しかし牛の顔である為、鬼王ではその表情変化には気付かない。
牛頭鬼は焦り戦斧を我武者羅に振るってくる。
迫り来る巨大な質量を前に、鬼王は避け、受け流し、また避ける。
受けてはダメだ。質量に負けて吹き飛ばされる。
横薙ぎに払われる戦斧を前に、跳躍して避けると共に再び顔面へと爪擊を放つ。
今度は手のひらが間に合わず顔面を斜めに切り裂いた。
「ブモォォォ!」
2人の戦いはまだまだ続く。
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龍王は訝しんでいた。
あれほど深く槍を刺したのに馬頭鬼の腹部から流れる血の量がすくないのだ。
それもそのはず。馬頭鬼は腹筋に力を入れる事で傷口を閉めて出血を防いでいたのだ。
そんな龍王に金砕棒が振るわれる。
三叉の槍で受け流し、地面へと叩き付けられる金砕棒によって自慢が陥没する。
よほどの膂力だ。腹部に深い傷があることすら忘れてしまうような一撃だっま。
地面に突きささった金砕棒が上へと振り上げられる。
咄嗟に槍でガードするも吹き飛ばされる龍王。
こちらも巨大な金砕棒はとてつもない質量を伴って襲ってくる為、受けるのではなく受け流すか、避けるかしないと吹き飛ばされる。
全く待って油断できない。
なおさら傷を負わせてもそれを無視したような攻撃を繰り出してくる相手だ。
気合いを入れて挑まなければいけない。
馬頭鬼が駆け寄ってきて金砕棒を振り下ろす。
横に転がりながらも金砕棒を避けると、すぐさま立ち上がり腹部への刺突を放つ。
「水撃・龍翔閃!」
刺突をの槍の先から高圧の水流が放たれ、馬頭鬼の腹部に穴を空ける。しかも貫通したようで、背後から鮮血が飛び散る。
「ヒヒィィィン!」
これには馬頭鬼も苦悶の表情であるが、馬面の為、龍王にはどのようや表情なのか読み解く事が出来ない。
「ヒッヒヒィィィン!」
金砕棒を我武者羅に振り回す馬頭鬼。
避け、受け流しが、躱す龍王であったが、猛烈な攻撃を前に、受けざるを得ない状況もある。
槍で受けるも威力を殺せず吹き飛ばされる龍王。
もう何度目になるかわからない。
王鎧に守られているとは言え、衝撃も全て肉体に伝わらないという事はない。
地面に叩き付けられた衝撃は確実に龍王の体力を削いでいく。
「仕方ない。王化!武王!」
龍王がそう叫ぶと右手親指にしたリングにはまる紅色の王玉から紅色の煙が立ちのぼり蒼龍を包み込み、その煙が右腕に吸い込まれるように消えていくと、右腕に紅色の線が入った王鎧を纏い、その手に燃えるような紅色の槍を持った武王形態になる。
両手に槍を構えた龍王が馬頭鬼に向かう。
金砕棒の振り下ろしを三叉の槍で受け流し、紅色の槍で突く。
紅色の槍は火炎を灯して馬頭鬼の腹部に吸い込まれるように刺さる。
傷口を一瞬で燃え上がらせる為、出血はないが、確実にダメージは蓄積している。
2人の戦いもまだまだ続くのであった。
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獣王と斬り合うデュラハン。
片腕ながらも1歩も退かぬ戦いを見せていたが、段々と獣王が押してきた。
と、ここでデュラハンが不思議な行動に出た。
自身の小脇に抱える兜を空中に投げたのだ。
「天眼。」
投げられた兜が言う。
と両手で騎士剣を持ち直したデュラハンが猛攻を仕掛けてきた。
獣王も大剣で受けるが、デュラハンの攻撃が早い。
肩口、腹部、胸部と強烈な斬撃を受けた獣王は思わず後退する。
と、空中に投げられた兜をまた手に取り小脇に抱えるデュラハン。
あれはきっと天眼の名の通り、天空から俯瞰して眺める事で僅かな隙を見逃さずに攻めたてる事が出来るデュラハンの技なのだろう。
しかし、兜を手放した瞬間こそ最大のチャンスでもあるはずだ。
獣王は再び足を踏み出してデュラハンに斬りかかる。
「天眼。」
またデュラハンが空中に兜を放り投げた。
今だ。
「雷鳴剣!」
雷撃を纏った斬撃をデュラハンへと叩き付ける。大剣は騎士剣で受け止められたが問題ない。剣を通して感電したデュラハンの動きが一瞬止まる。
その間に獣王は跳躍して空中の兜に向けて大剣を振り下ろす。
「雷撃断頭斬!」
雷を纏った断頭の斬撃をもろに兜に食らったデュラハンは呻き声をあげる。
「グハァァァァ!」
そして断頭斬を受けた兜は急降下し、地面に叩き付けられる。
「グフッ!」
慌てたようにデュラハンの体が兜を拾い上げる。
まだ空中にいた獣王は再び大剣を振り下ろす。
「雷撃断頭斬!」
頭部を拾ったばかりのデュラハンの首元に断頭の斬撃がヒットする。
鎧が削れ、さらに雷撃に寄って体が痺れるデュラハン。
これをチャンスと見た獣王は攻めたてる。
大剣で薙ぎ払い、振り下ろし、突き、袈裟懸けに斬る。
猛攻を受け大きく後退するデュラハン。
すでにデュラハンの鎧は傷だらけである。
それでも果敢に攻め込むデュラハン。
騎士剣でもって大上段からの振り下ろしが獣王を襲う。
大剣で受ける獣王。
と、ここで三度デュラハンが兜を空中に投げた。
「天眼。」
そして片手で持っていた騎士剣を両手で掴み力を入れてくる。
押し潰される獣王。
片手でも互角の膂力だったのに両手で攻め込まれたら獣王には分が悪い。
押し込まれ膝立ちになる獣王。
「うおぉぉぉ!」
どうにか騎士剣を弾き返す。
すぐさま立ち上がる獣王にデュラハンが再度騎士剣を張り降ろす。
防御が間に合わず胸部に痛打を受けた獣王は吹き飛ばされる。
「痛ててて。まだこんな力があったかよ。」
吹き飛ばされた先で大剣を杖代わりに立ち上がる獣王。
王鎧に守られている為、斬撃による切り傷こそないが、衝撃は生身に伝わっており、そこそこダメージがある。
しかしまだ獣王には雷撃がある。
デュラハンに向けて走り出す獣王。
その大剣には雷撃が込められている。
「雷鳴剣!」
獣王とデュラハンの戦いもまだ続くのであった。
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リッチーと対峙する破王は攻めあぐねていた。
とにかく魔法の弾幕が凄くてなかなか近寄れないのである。
「ファイアボム!」
「ファイアアロー!」
「ファイアショット!」
リッチーは鎧を通して熱傷を与えられる火炎系魔法を多用してきた。
その為、王鎧に守られて裂傷などは抑えられているが、度重なる火炎攻撃によって鎧内部で熱傷を受け始めた。
いざ弾幕を掻い潜りリッチーに近付くと、
「ファイアウォール!」
「ファイアボム!」
炎の壁に阻まれて爆撃で距離を取られる。
昔いた道場で魔術使いは近寄れば無力だとか言っていた奴は何も分かっていない。
むしろ近付くことが困難なのだ。
魔術であれば詠唱のタイミングで近寄れたかもしれないが、魔法使いには詠唱は不要だ。自身の魔力の続く限り、魔法を打ち続ける事が出来る。
破王自身、完全な魔法使いと対峙するのは初めての事だった。
ここまで近付くことが困難だとは思いもしなかった。
それでも諦める訳にはいかない。
果敢に攻め込み、爆撃を避け、弾幕を回避しつつリッチーに迫る。
刀を振るうと見せかけて、ファイアウォールを繰り出しても来た所をさらに踏み込む。
炎の壁に体を焼かれながらリッチーに向けて白刃・白百合を振るう。
「グギャァァァ!」
攻撃が通った。
自身も熱傷を負ったが、リッチーの腹部を切り裂くことに成功した破王。
リッチーの外套が大きく斬り裂かれ骨の如き肉体には一筋の刀傷がついた。
切断には至らなかったか。
「もうちょっと踏み込みが甘かったですかね。」
1人反省する破王。
対するリッチーはついた刀傷に自ら火炎魔法を放ち、傷口を焼いている。
「グギィィィ!」
傷口を焼くことで出血を抑えたのだ。
「あら。結構根性ありますね。」
自身も熱傷を受けた為、肩で息をする破王。
軽口を叩くのはまだ余裕があると見せる為でもある。
「私の魔法を前にして1歩も退かぬその姿勢、賞賛に値する。」
リッチーが褒め始めた。
「だこらこそ、この大技を繰り出そう。」
身長よりも長い杖を高くかざしてリッチーが吼える。
「エクスプロージョン!」
破王の目前で大爆発が起こる。
耐えきれず吹き飛ばされる破王。
床も天井迄も焦げている。
天井の高さは10mはありそうな部屋である。
その天井の迄が焦げたと言う事は途轍もない大爆発だったら事がわかる。
実際、他で戦う者達まで爆風を受けたくらいだ。
目前で大爆発を受けた破王のダメージは相当なものになる。
「痛たたた。なんですかその馬鹿みたいな威力。」
「フッフッフッ。私の放てる魔法の中で最大の威力を誇る爆撃魔法ですよ。」
吹き飛ばされた先で刀を杖代わりに立ち上がる破王。
「今のはちょっと効きましたね。でもそれだけの威力度なれば連発は出来ないゆでしょ?」
「フッフッフッ。試してみるか?」
にらみ合う2人。
この2人の攻防もまだまだ続くのであった。




