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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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134話 決戦2

 鬼王は巨大な戦斧を持つ牛頭鬼と向き合っていた。

 まず動いたのは牛頭鬼の方。両手で持った巨大な戦斧を振り下ろしてきた。

「ブモォォォォオ!」

 紙一重でこれを躱す鬼王。お返しとばかりに左の拳を突き出す。

「はっ!」

 突き出された左の拳は牛頭鬼の腹部に刺さるが、その感触は硬質な岩を叩いたが如く、まるで拳が沈み込まなかった。

 それに意を介した気配もなく、またしても巨大戦斧を振り下ろしてくる牛頭鬼。

 これも紙一重で避けるが、牛頭機は戦斧の軌道を変えてきた。

 振り下ろされた戦斧が、曲がり鬼王を追いかけて横凪に払われる。

 咄嗟に後ろに跳びこれを避ける鬼王。

「ブモォォォ。今のを避けるか。」

「ふはは。今のはちょっと危なかったぞ。」

 まだ会話を交わす余裕が両者ともにあった。

「次はワシから行くぞ!」

 鬼王が一気に距離を詰め、左のジャブから右のストレートといったコンビネーションをお見舞いする。

 体格差からジャブもストレートも、牛頭鬼の腹部に刺さる。

 しかし、牛頭鬼は痛む様子がなく、戦斧を振るってくる。

「ワシの打撃が効いてないのか?!」

 驚きつつ戦斧を避ける鬼王。

 それでも避けながら左のジャブからの左フックを腹部に叩き込む。

 牛頭鬼の腹部は人間のそれと同じである。見事に割れた腹直筋に盛り上がった外腹斜筋ではあるが、ダメージが全くないのはおかしい。

 巨人すら沈めた鬼王の拳である。効いてない訳がない。

 そこで鬼王は戦斧を振り上げた際にがら空きになった腹部に向けてラッシュを叩き込む。

 左ジャブ、右ジャブ、左フック、右ストレート、左ジャブ、右ストレート。

「ブモォォォォオ!」

 ここで初めて牛頭鬼が痛がるように1歩後退した。

 それでもなお戦斧を振り下ろしてくるあたりは流石だ。

 戦斧の振り下ろしを、ギリギリで躱す鬼王。しかしまた戦斧の軌道が変わり横薙ぎに払われる。

 ギリギリで戦斧を避けていた鬼王の腹部に戦斧が当たる。

 ガギンッ!

 硬質な物は同士が当たる音がする。

 王鎧に守られた鬼王にダメージはないが、王鎧の腹部が少し削られた。

「うおぉぉぉ!」

 再びラッシュを仕掛ける鬼王。それを腹部に受けながらも戦斧を放ってくる牛頭鬼。


 2人の戦いはまだ始まったばかりである。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 龍王は巨大な金砕棒を持つ馬頭鬼と向き合っていた。

 まずは龍王が仕掛ける。三叉の槍で強烈な刺突を放つ。

 馬頭鬼は金砕棒で三叉の槍を弾くと、そのまま龍王へと殴りかかる。

 素早く弾かれた槍を戻し金砕棒を受ける龍王。金砕棒を弾き返すと、ひとまず距離を空ける。

 馬頭鬼は空いた空間を詰めるように金砕棒を振り上げて迫ってくる。

 振り下ろされた金砕棒を槍で弾き返し、そのまま刺突を放つ龍王。

 身長差から狙う位置は必然腹部になる。

 咄嗟に身を捩り三叉の槍を避ける馬頭鬼だったが、微かに槍を受けて脇腹から出血する。

「ヒヒィィィン!」

 槍が通らないほど、強固な外皮を持っているわけではない事がわかった。

 馬頭鬼は金砕棒を横薙ぎに払ってくる。

 これを跳躍して避けた龍王に馬頭鬼の拳が迫る。

 空中にいる為に回避行動が取れずに辛うじてガードするに留まった龍王は大きく吹き飛ばされる。

 が、王鎧に守られた為にダメージは深くない。すぐさま立ち上がり馬頭鬼に向かって駆けだす。

 馬頭鬼も金砕棒を振り上げて龍王を待ち構える。

 振り下ろされた金砕棒をギリギリで避けた龍王は走ってきた勢いそのままに三叉の槍で刺突を放つ。

「ヒッヒヒィィィン!」

 避けきれず腹部に深々と槍が刺さるも意に介さず、金砕棒を横殴りに振るう馬頭鬼。

 槍を引き抜いて金砕棒を受ける龍王。

 膂力は対等。そのまま金砕棒と槍での押し合いが始まる。

 槍を大きく払い、金砕棒を弾いた龍王はがら空きになった腹部に向けて再度刺突を放つ。

 これは後退して避けられる。さらに弾かれた金砕棒を振り下ろす馬頭鬼。

 三叉の槍で受け流す龍王。

 地面に落ちた金砕棒は床を大きく凹ませる。

 そんな金砕棒を潜り抜け懐に入った龍王は再び三叉の槍を腹部に突き入れる。

 2度目の腹部への刺突により大きく穴を空ける事となった馬頭鬼は、堪らず後退して距離を取る。

 これをチャンスと見た龍王は畳みかける。サッと馬頭鬼に近付くと槍で刺突を放ち、避けられれば槍を振るい避けた先を追う。

 金砕棒の振り下ろしがところどころで来るも紙一重で避けて槍を振るう。

 金砕棒での横殴りが来ればこれを上へと受け流し、がら空きになった腹部に向けて再度刺突を放つ。

 そんなやり取りを続けて、すでに馬頭鬼の腹部はズタズタである。

 対する龍王は王鎧に守られたおかげて大したダメージはない。

 しかしながら槍の刺突も深くは刺さっているものの、内臓を傷付けるには至っておらず、まだ余裕の表情を見せる馬頭鬼。

 ただ馬面なのでその余裕の表情を龍王が読み取る事は出来ない。ただ苦しがっているようにも見えない程度である。

 本当にまだ余裕があるのか、強がって見せているのかは本人が知るばかり。


 龍王と馬頭鬼の戦いもまだ始まったばかりである。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 獣王は小脇に兜を抱え、反対の手に騎士剣を携えたデュラハンと向き合っていた。

 デュラハンの身長は2m強、対する獣王は2m弱なので、若干デュラハンの方が高い。

 最初に動いたのはデュラハンの方であった。

 騎士剣を振り上げて真っ直ぐ降ろす。実直な剣筋である。

 獣王は大剣で受けると大きく弾き飛ばし、デュラハンに斬りかかる。か、大きく弾いたはずの騎士剣がいつの間にか戻ってきており、大剣を受け止める。

 片腕で兜を抱えている為に騎士剣を持つ手も片手なのだが凄い膂力だ。両手で持った大剣を易々と受け止められてしまった。

 大剣が弾かれて騎士剣による突きが来る。

 獣王は身を捩りその突きを避けると、再び大剣を振り下ろす。

 するとまた突きを放ち伸びきった腕がいつの間にか戻り騎士剣で大剣を受け止めている。

 膂力だけでなく速度もあるようだ。

 それでも獣王は果敢に攻め込む。大剣で薙いで、払って、振り下ろしてと猛ラッシュだ。

 しかしながらその大剣全てが騎士剣によって阻まれる。

 反撃の太刀筋は素直な騎士そのものであり、読みやすい為に避けるのは容易い。

 しかし、獣王の攻撃も当たらないのだ。

 まるで別の角度から獣王を観察し、その動きを読んでいるかのようだ。

 そこで獣王は気付く。

 あの片手に持っている兜からの視界で動いてるのではないかと。

 そう考えて観察してみれば、確かに攻撃の都度小脇に抱えた兜を獣王に向けてきている。

 あれならば獣王の動きを俯瞰的に見ることが出来て、すぐさま攻撃モーションから防御に切り替える事も出来るかもしれない。

 だがカラクリは見えた。

 であるならば兜から見えないように動けばよい。

 普段は左足を前に左手が前、右手が後ろにくるように構えているが、それだと左脇に抱えられた兜から獣王の動きが丸見えだ。

 だから獣王は普段とは逆に右足を前にし、兜側に背中を見せるように構える。

 それ以降の攻撃は時折騎士剣に止められる事もあるが、確実にデュラハンの鎧を削り始めた。

 1度お互いに肩口への攻撃をし合う場面もあったが、獣王は王鎧に守られていた為にさほどダメージはない。少し腕が痺れた程度だ。

 だがこれも普段の王鎧を纏った状態でのダメージとしては異例の事態だ。王鎧を超えて衝撃を受けた事になる。

 余程の膂力だと言う事が分かるというものだ。

 互いに1歩も退かず数合打ち合う獣王とデュラハン。


 2人の戦いもまた始まったばかりである。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 破王は3m近い長大な杖を持ったリッチーと向き合っていた。

 リッチーの身長は174cmの白狐より若干低いくらいだ。それなのに手に持つ杖は3m近い。アンバランス極まりない。

 しかしその杖から放たれる魔法は本物だった。

「ファイアアロー。」

「ウォーターアロー。」

「サンダーアロー。」

「アイスアロー。」

「ロックアロー。」

 リッチーは速度と貫通力の高いアロー系の魔法を多用してきた。

 これには速度に自信がある白狐と言えども避けるのに精一杯だ。

 リッチーは魔法使いが懐に入られるのを嫌うように速度のある魔法で牽制しているのだ。

「ファイアアロー。」

「なんのこれしき!」

 飛んでくる火炎の矢を高速の抜刀術で引き抜かれた白刃・白百合で弾き飛ばす。

 弾かれた先でファイアアローは小爆発を起こした。

 あまりの抜刀の速度に着弾時に爆発するはずの矢が離れた位置で爆発したのだ。

「ひっ、サンダーアロー。」

「これも斬ります。」

 白狐は抜刀した刀を振るい雷撃の矢を斬る。

 しかし、刀に矢が振れた瞬間。

 ビリビリビリッ!

 白狐は一瞬のうちに感電した。思わず足も停まる。

 そこに降り注ぐ魔法の矢。

「ウォーターアロー。」

「ファイアアロー。」

「ロックアロー。」

「ウィンドアロー。」

「アイスアロー。」

「サンダーアロー。」

 ひたすらに全属性が使えることを自慢するかのように様々な属性の矢を放ってくる。

 一瞬意識が飛んでいた白狐は正気に戻るなり、体勢を低くしてリッチーの元に走りだした。

 迫り来る矢をギリギリの所で屈んで避けると、一気にリッチーの懐に入り、刀を一閃させる。

 しかし、リッチーもただ斬られるのを待ちはしなかった。

「ウォーターウォール!」

 咄嗟に繰り出された魔法は自身の前に水の障壁を作り出すものだった。

 しかし、相手は白狐である。滝すら切り裂く高速の斬撃は水の障壁を斬り裂き、リッチーに迫った。

 魔法を撃ちだした瞬間に後ろに下がっていなければ両断されていたかもしれない。そんな一撃だった。

 これを見たリッチーは戦法を変えてきた。

「ファイアボム!」

「ウォーターボム!」

「アイスボム!」

 ボム系魔法は任意の座標で爆発する魔法である。

 ショットよりも射程距離は短いが、攻撃範囲は広い。

 自身の目の前に絨毯爆撃のように魔法を炸裂させる事で、接近されるのを抑止しようと言うのだ。

 これは自身が接近戦に弱いと言っているようなものである。

 白狐は再び爆撃の隙間を縫うようにリッチーに肉迫すると白刃・白百合を振り抜こうとした。

 その時、リッチーと白狐の間にファイアボムが放たれた。

 爆発を受けて後ろに吹き飛ばされる白狐。

 対するリッチーは無傷である。自身に魔法障壁を張っていたのだ。

 魔法障壁は魔法によるダメージを軽減するものであり、直接攻撃には影響がない。

 だからこそ、自身の目の前で爆発を起こし、白狐を巻き込んだのだ。

 爆風に煽られ転がる白狐。だが王鎧のおかげでそこまで酷いダメージはない。

「やってくれますね。」

 白狐は呟きながら立ち上がる。

「ぶった斬ってやりますよ!」

 リッチーに向けて走り出す白狐。

 対するリッチーも絨毯爆撃を再開する。


 2人の戦いが激化するのもこれからであった。


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