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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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132話 城内

 3階に上がった俺達。相変わらず天井が高い。

 3階は大きく4つの部屋に分かれており、1つ目が厨房。2つ目が食堂。3つ目が会議室。4つ目が舞踏会などを行えるダンスホールになっていた。

 で、そのダンスホールで俺達を待ち構えていたのが数体のゴーレムだった。

 大きさ的には縦2m、横2mのずんぐりむっくりとした形をしており、近付いても反応はない。

 試しに白狐が白刃・白百合で斬りかかると、

 ガギンッ

 と硬質な音が響いただけで、ゴーレムは斬られていなかった。よほど硬質な物質で作られているようだ。

 そんなゴーレムが7体もいる。

 ただのゴーレムならランクはBかC程度だ。

 王化せずとも倒せるだろう。今後の事を考えると王化は取っておきたい。


 と考えているとゴーレムの目に光が灯り、一斉に動き出した。

 決して動きは素早くない。

 模しろゆっくりとした動作で殴りかかってくる。

 紫鬼がパンチにパンチを合わせる。

 ガギンッ

 紫鬼の手にした手甲とゴーレムの拳があたり凄まじい音をたてる。

 紫鬼の手甲はアダマンタイト製だ。そんな手甲とぶつかっても無事な所を見ると、ゴーレムもアダマンタイト製だと考えた方がいいだろう。

 魔人族領にはアダマンタイトがないと言っていたがこんなところに大量に使われていたのだ。そりゃ一般には普及しないだろう。

 ゴーレムは無機質生命体な為、痛覚はない。

 魔法によって仮初めの命を吹き込まれた人形である。

 それだけに倒すのは尋常じゃなく面倒だ。

 動かなくなるまで削り続けるしかないのだ。

 しかも最高硬度のアダマンタイト製ともなればその手間は考えるだけで投げ出したくなる。

 しかし、ゴーレムが襲ってきている以上、相手をするしかない。

 俺達は自身のアダマンタイト製武具を持ってゴーレムに立ち向かう。


 ゴーレムの数は7体の為、緑鳥を除く俺達だけで相手が出来る。

 伏兵がいないとも限らないので、ドランと桃犬達には緑鳥の護衛を任せた。

 俺は拳を突き出してくるゴーレムの腕の関節部分を狙ってナイフを突き刺した。

 大抵関節部分だけは脆くなってたりするのが一般的なゴーレムだ。

 それでもナイフは硬質な物体に弾かれて突き刺さらない。

 こんなやつ相手にどうしたらいいんだ?

 俺は諦めずに何度も腕の関節部分を狙ってナイフを振りかざす。

 左右のパンチを避けながらの為、遅々として削れない。

 それどころか関節部分を狙うことに集中し過ぎた俺は、ゴーレムのパンチを腹部に受けてしまった。

 痛ぇ。ゴロゴロ転がりながらもすぐさま立ち上がってゴーレムに向けて跳躍すると、その頭部にナイフを突き立てた。

 しかしやはり硬い。

 ナイフは硬質な頭部に弾かれてしまう。

 やはり関節部分を狙って地道に解体するしかないだろう。


 戦い始めて30分は経っただろうか。

 ガシャンッ

 と音がして紫鬼が対峙していたゴーレムが崩れ落ちた。

「関節技じゃ!関節部分を狙って攻撃してたら、崩れていったぞ!」

 紫鬼が声を上げる。

 俺ときたら関節部分を削り続けてやっと片腕の肘から先を解体する事に成功したまでだ。

 まだ片腕も残っているし、前腕が外れた腕も肩から先も残っているし、足もある。

 一気に首元を解体すれば止まるのか?でも腕が邪魔してくるので首元を狙い続けるのも難しい。

 1体のゴーレムを倒した紫鬼は黄豹も元に駆けつけていた。

 ゴーレムの腕を取り、無理矢理逆関節へと曲げていく。

 ボギンッ

 ゴーレムの前腕が取れた。なるほどああやって解体していったのか。

 力任せだがそれ故に回避するのが難しいだろう。

 続けて肩部分も外していく紫鬼。

 黄豹はパンチを避けながらの紫鬼の邪魔にならない程度にトンファーを振るっている。

 これは紫鬼に頑張って貰うのが一番かもしれないな。

 そんな事を考えながらもう片方の肘目掛けてナイフを振るい続ける。


 暫くしてもう片方の腕の肘も壊す事に成功。それでもゴーレムは前腕のない腕で殴りかかってくる。

 その頃には黄豹が相手にしていたゴーレムも紫鬼が解体し終えていた。

 紫鬼は蒼龍のもとへ行く。黄豹は銀狼のもとへ向かった。

 まだ俺は単独でゴーレムを相手取る必要がある。

 両腕の前腕を失ったゴーレムは蹴りも放ってくるようになった。

 これは肩より先に足を破壊するべきか。

 俺は膝関節を中心に攻撃するようにした。

 蹴り足の膝に集中するあまり、1度もう片方の足での蹴りを受けそうになったが、ギリギリで避けた。

 耐久性が上がっている分、速度がなくて助かった。

 にしても片足から跳び上がって蹴りを放ってくるとは思ったよりも身軽な行動をしてきやがる。

 それに、心なしかパンチを繰り出してきた時よりも蹴りを繰り出す動作の方が早い。

 その後も何度か蹴られそうになったり、実際に蹴られて転がされたりしたが、骨に異常は無かった為、膝への集中攻撃を継続した。

 ガギンッ

 と膝が外れたのは数十回攻撃を入れた後だった。

 単純に体力的が奪われる。肩で息をしながら片足の膝から先を失いバランス悪く立つゴーレムに向けてナイフを繰り出す。

 もう少しで解体出来る、もうすぐだと自分に言い聞かせながら残る片足と腿から先と両肩から先を解体していく。


 さらに30分は経っただろうか。

 ようやく四肢は全て解体出来た。

 両手足を無くしたゴーレムはそれでもまだ機能を止めてはいない。

 ここからは首の解体だ。

 ゴーレムの習性として中にはその辺にある鉱石で手足を再生するものもいる為、外した手足は遠くに放ってある。

 紫鬼は蒼龍のゴーレムも解体終えたようで、次は金獅子のゴーレムへと向かった。

 金獅子と蒼龍はゴーレムにしこたま殴られたようで、緑鳥の聖術をかけて貰っている。

 残るは俺の相手にしているのと、銀狼が相手にしているのと、金獅子が相手をしていた今は紫鬼が相手にしている奴の3体だ。

 白狐もいつの間にか解体を終えて銀狼の奴の相手を3人でしていた。

 俺も手伝って欲しいな、と思いつつ首の解体を続ける。


 やっとの思いで首を解体し終えた俺はゴーレムの目に宿った光が消えていくのを確認して一息ついた。

 みんなも解体が終わり、全てのゴーレムを無力化する事が出来た。

 俺もあちこち傷だらけになったので、緑鳥に聖術をかけて貰う。

「親愛なる聖神様、その比護により目の前の傷つきし者に癒やしの奇跡を起こし給え。ヒーリング!」

 緑鳥の持つ錫杖から光が溢れ出し俺の体を包む。

 傷の治療だけでなく、なんとなく体力も回復したように思える。

「聖術って体力も回復してくられるの?」

 緑鳥に聞くと、

「一応ヒーリングには疲労回復の効果もあります。ですが、精神的な疲労感まではどうする事も出来ないので、そこは休息を取るしかないですね。」

 との事。

 大活躍した紫鬼も聖術をかけて貰って、皆一通りは回復した。

 しかし、1時間以上に渡る戦闘は精神的にも疲れた。

 と言うことで敵の城の中ではあるが、昼食休憩を取る事にした。

 疲れた時はこれ。ドラゴン肉だ。

 あまり時間をかけてもいられないので、さっと焼いて皆で齧りつく。

 ドランにはお気に入りのハーピー肉を焼いてやった。

 それにしてもガーゴイルと言い、ゴーレムと言い、自動迎撃システムが構築された城である。

 まぁゴーレムに関してはダンスホールを覗かなければ起動はしなかったかもしれないが。

 とにかく大魔王との戦闘中に乱入される恐れはなくなったので良しとしよう。

 さて、残るは最上階だけだ。

 そこに大魔王とやらがいるのだろう。

 邪神の復活に関するものも、今まで見てこなかったので、最上階に謎があるのだと思われる。

 それにしてもこれだけ時間が経過しているのにまだバルバドス達が昇ってくる気配がない。

 よほどガーゴイルに手こずっているのだろう。

 でも数的には帝国軍兵士達の方が有利だったからきっと大丈夫だろう。

 軽く食事を済ませた俺達は最上階に向かう階段へと戻る。

 さて、いよいよ大ボスだ。

 ゴーレム相手に王化しないでおいた為、制限時間的には問題ないだろう。


 そうして俺達は最上階へと続く階段を登り始めた。


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