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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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129話 人蛇2

 破王は槍を手にしたエキドナと対峙していた。

 鋭い突きを放ち、槍の射程範囲からなかなか近付けないでいるところに、太く長い蛇の尻尾での足払いが来る。

 そんなを足払いを避けるために後方に跳ぶとまた槍に優位な位置関係になってしまう。

 そんな事を繰り返していたが、焦れてきた。

 槍を突き出された瞬間に跳躍して頭を越えると、振り向きざまに刀を振り抜いた。

「「シャァァァ!」」

 咄嗟に避けたのであろうエキドナの頭に生えていた2匹の蛇が地面に落ちる。

 そしてまた尻尾での足払いが来る。

 破王は尻尾に向けてクロに買って貰ったミスリル製の脇差しを振り下ろし、地面に縫い付ける。

「ギャァァァア!くそがぁぁぁ!」

 とそこに槍の突きが来て肩口を掠める。

「ふっ!」

 その槍を白刃・白百合で弾き上げると、スッと懐に入り込み白刃・白百合を振り抜く。

 尻尾を縫い付けられたエキドナは逃げることも出来ずにその首を胴体から落とすことになったのだった。

「ふぅ。槍は面倒ですね。次は長剣持ちに行きましょうかね。」

 破王は呟くと別のエキドナに向けて走り出した。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 獣王は長剣を持つエキドナと向き合っていた。

 もう何度か剣を合わせている。

「俺様の大剣をそんな細い長剣で受けるとはなかなかやるな。」

「フフフッ。アタイの剣技はまだこれからだよ。」

 エキドナの剣が攻勢に打って出る。

 獣王は危なげなくその剣筋を見極めて大剣で受けていく。

 大きく大剣を振るってエキドナに後退させて距離を取る。

「攻め手の方もなかなかだな。しかし、俺様には通じんよ。」

 そう言うと獣王は跳び上がってエキドナの頭頂部を捕らえる。

「断頭斬!」

 エキドナは長剣を掲げて大剣を防いだが、その勢いに負けて長剣が半ばから折れてしまう。

 数合のやりとりだけで長剣には罅が入っていたのだ。

 咄嗟に頭を傾げて頭頂部への攻撃を避けるも肩口にザックリと刺さり肺にまで大剣が進み入る。

「ガハッ!」

 ここで獣王は勝利を確信した。してしまった。

 獣王が着地した次の瞬間には、両脚に蛇足が巻き付き、身動きが出来なくなった。

 エキドナは最初から剣技で倒そうとは思ってなかったのだ。

 巻き付いて圧殺する。それが1番の得意技だった。

 蛇足がどんどん絡みつき腰にまで達した。

 もう獣王は上半身しか動かせない。

 下半身を完全に巻き取られた為に、大剣を振るう際の踏み込みすらままならない。

 これで勝利を確信したエキドナ。まだ大剣は持っているが十全に振るう事が出来ない大剣など恐るるに足らず、そう思っていた。

「むむ。最初からこれが狙いだったかよ。でも甘いな。俺様にはこれがある。」

 そう言うと獣王は大剣を寝かせて左右に大きく振るう。

「雷鳴剣!」

 大剣の先から電撃が迸り、エキドナの体を焼く。

 電流による痺れで下半身の拘束が緩んだ。

 その時を逃さず獣王は再度跳躍すると頭頂部に向けて大剣を振るった。

「雷撃断頭斬!」

 雷鳴剣での電撃を浴びて硬直していたエキドナには避ける術がなかった。

 頭の頂点から臍部分までを大剣で真っ2つにされたエキドナは傷口を電撃で焼かれながら息絶えた。

「ふむ。蛇足には注意が必要だな。」

 獣王は呟くと次のエキドナに向けて歩き出した。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 


 牙王は槍持ちのエキドナと対戦していた。

 素早い槍での連続突きを双剣で弾いて防御する。

 しかし、連続突きが止まらない。

 常人なら必ず必要な息継ぎの瞬間すらない連続突きはすでに5分以上続いていた。

 大きく上に弾くもすぐさま引き戻して次の突きが来る。

 下方に弾いてもダメ、横に弾いても同じである。

 牙王は1度離れて仕切り直す事にした。

 背後に跳ぶ牙王、しかしその左足を掴む物があった。

 蛇足である。

 息つく暇も無い槍での突きの合間に蛇足を足元に移動させていたのだ。

 片足を取られて逆さ吊りにされる牙王。

 その状態でも槍が迫ってくる。

 双剣で受けつつ、足を掴む蛇足へと斬撃を入れていく。

 しかし蛇足は弱まるどころかさらに絡みつき圧力を増していく。

「くそっ!氷結狼々剣!」

 左右から蛇足へと斬撃を放つ。これは受けた物を凍らせる斬撃である。

 瞬間的に蛇足が凍りつき、あまりの寒さにエキドナの動きが鈍る。

 蛇故に寒さに弱いのだ。

 凍りついた蛇足に斬撃を入れて砕くと、そのまま動きが鈍くなったエキドナに向けて駆け出す。

「双狼刃!」

 左右の肩から入った斬撃は胸元まで引き裂き、両方の肺を潰した。

 それでもまだ生きていたエキドナであったが、もうすでに槍を持ち上げる気力すら残ってはいなかった。

 牙王は首元に双剣を一閃させると、その首を刎ねたのだった。

「次は行くか。」

 牙王は呟き次のエキドナへと向かっていった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 龍王は槍を持つエキドナと向き合っていた。

 すでに数合のやりとりは行われており、槍使いとしては龍王の方が上であることがらわかっている。

 エキドナが繰りだした槍での突きも、龍王は三叉の槍で絡め捕るように槍の周りを周回させて大きく弾き飛ばし、逆に三叉の槍での刺突を放つといったやり取りが続いている。

 すでにエキドナの体のあちらこちらでは槍で突かれて出血が目立つ。

「ハァハァ。アンタ一流の槍使いであるアタシを圧倒するとは何もんだい?」

「お主が一流?随分と狭い範囲で生きてきたようだな。」

「言ってくれるね。これならどうだい!」

 槍での刺突に合わせて髪と同化した2匹の蛇が伸びてくる。

 この頭の蛇は毒を持っており、噛みつけば相手を麻痺させるほどに強力な毒使いであった。

 しかし相手が悪かった。龍王は全身を王鎧で包み込み、噛みつく隙間すらなかったのだ。

 槍を跳ね上げて空いた腹部に三叉の槍を突き刺す龍王。

「グボッ!」

 エキドナは血を吐くも倒れずに槍を構える。

 2匹の頭から生えた蛇は王鎧に噛みつくも毒を注入出来ずにその牙を離した。

「なんなのさ、その鎧は!狡いじゃないのさ!」

「狡いかどうかは知らん。我の装備がこれだっただけのこと。相手の装備にあれこれ言うようでは一流とは言えんな。」

 龍王の槍が心臓部に突き刺さる。

「そんな。アタシが槍で…負ける…。」

 その一言を残してエキドナは力尽きた。

「うむ。まぁなかなかの槍使いではあったよ。」

 龍王は死骸となったエキドナに一声かけて、次の獲物を求めて戦場を駆ける。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 鬼王は長剣持ちのエキドナと対峙していた。

 長剣での薙ぎ払い、突き、振り下ろしを全て拳で払いのける鬼王。

「なんなのだ?!お前は?なぜワタシの剣が届かない?」

「お前さんの剣は素直すぎるのだ。これなら何合打ち込まれようともワシの体には届くまい。」

「キィー!言わせておけば、生意気な!」

 エキドナの振るう剣の速度が上がった。

 しかし全てを素手で払いのける鬼王。

「次はこちらの番だ!」

 大きく左手の甲で外側に向けて長剣を弾いた鬼王。

 長剣が流れるままに右前方へと体が流れるエキドナに対して、右腕で強烈なアッパーを繰り出した鬼王。

 そのアッパーは見事にエキドナの顎先へとクリーンヒットしてエキドナの体が浮く。

 しかしエキドナとてただで殴られはしない。

 浮いた蛇足を鬼王の体に巻き付けると一気に締め上げる。

「ぐぬぬ!」

 両腕を蛇足で押さえ込まれた鬼王は為す術なく締め付けられる。

「ぐぬぬぬっ!」

 すでに蛇足の大部分が鬼王を締め上げており、エキドナは両手を地面に付いて蛇足へと力を込める。

「ぬがぁぁぁあ!」

 なんとエキドナの全身を使った締め上げから、これも全身の力を込めた両腕を振り上げる事で拘束から脱した鬼王。

 拘束を解かれた先に蛇足は四方八方に引き千切られて吹き飛ばされた。

 下半身の大半を失ったエキドナはそれでも生きていた。

 長剣を片手に地面を這って鬼王へと迫る。

 そんなエキドナに向けて鬼王は渾身の下段突きを放つとその頭を爆散させた。

「ほぅ。危ないところじゃったな。蛇足には気を付けねばならんな。」

 そう言い残し次のエキドナを求めた駆け出していった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 不死王はラミア達をかき分けて目の前にやって来た槍持ちのエキドナと対戦していた。

 不死王が操る刃付きトンファーでの攻撃は全て槍1本で防御されている。

 トンファーでの薙ぎ払い、突き、振り下ろしと出来る範囲の事は全て試したが、その全てを短く持った槍1本で防ぎきられてしまった。

 正直もう、攻める手がない。

 相手のエキドナはと言えば防御姿勢を崩さず、決して自分から攻めてこようとはしない。受けの体勢なのだ。

 これでは相手の隙を突くことも難しい。

 相手に攻めの体勢を取らせる事が優先だと思った不死王は明らかに隙を見せ始める。

 トンファーを弾かれれば敢えて大きく腕を広げて胸を開く、トンファーを避けられれば敢えてたたらを踏んで腹部をさらけ出す。

 そこまでやってもなおエキドナは防御姿勢を崩さない。

「んー。やり辛い。」

 ここで不死王は大胆な行動に出る。

 両手に持ったトンファーを離してしまったのだ。

 そして大きく腕を広げて胸部も腹部も顔面すらもさらけ出す。

 ここまでされればエキドナも攻勢に打って出る。

 今まで短く持っていた槍を持ち替えて鋭い突きを心臓部に目掛けて繰り出す。

 ドスッ。

 確実に心臓を貫いた感覚がエキドナにはあった。

 しかし、不死王の不死王たる由縁は死なない事である。

 不死王は自身に刺さったままのエキドナの槍を掴むと、むしろグイグイ自身に突き刺すように前進する。

「な!?どうしてまだ生きている?!」

「ん。内緒。」

 不死王はエキドナのすぐ目の前まで来ると、太股に装着した釵を引き抜き、エキドナの首筋に突き刺した。

 そのまま抉るように釵を捻り上げる。

「な?!なぜ…死な…ない。」

 エキドナは最後まで疑問を口にしながら朽ち果てた。

 不死王は自身の胸部に刺さった槍を抜き、穴が塞がるのを待つ。

「んー。痛かった。」

 胸部に空いた穴も塞がり、王鎧も元通りになった不死王は緑鳥達を守りながら次のターゲットを探すのであった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 結局1人5体近くのエキドナを倒したので、30体近くいた事になる。

 エキドナはランクで言えばAランク、ラミアはBランクに相当する。

 ラミアは200体近くいたことからかなりの強敵の集団だったと言える。

 帝国軍兵士達にも死傷者が多数出たようだ。

 だが、今立っているエキドナもラミアもいない。

 俺達の勝利だ。

 エキドナにラミアの死体についてはやはり上半身が人型と言う事もあり、帝国軍兵士達も食用にはしないとの事。

 俺達はドランの食料とする為に解体していく。

 下半身の蛇部分だけを肉片にして影収納に収めていく。

 途中から帝国軍兵士達も手伝ってくれたので、量の割には早く片付いた。

 残った上半身部分については一纏めにして火炎魔術で焼いて貰った。


 ひとまずはその場で休憩を取ることにした俺達は、昼食の準備をする。

 景気づけに今日もドラゴン肉にする。薄切りにして鍋に投入、野菜も大量に入れたドラゴン鍋にした。

 ドラゴン肉は焼いても煮ても美味い。


 さて、これから先はどうなる事やら。

 ひとまずはドラゴン肉を喰って精を出す俺達であった。


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