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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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126話 進軍11

 黒猫達がエルダートレントを相手にしていた頃、帝国軍兵士達もトレントに囲まれていた。

「これが、魔樹か。確かに動く木々だな。」

 バルバドスが全体に聞こえるように号令をかける。

「重装兵は前に出て攻撃を防げ!炎の魔術を使える者達は魔術の準備をしろ!」

 一番最後に魔術を放ったのは伝令兵の帝国軍魔導士オリカルクムだった。

「魔素よ集まれ、集まれ魔素よ。火炎の力へとその姿を変えよ。魔素よ燃えろ、燃えろよ魔素よ。我が目前の敵を火炎となりて打倒し給え!ファイアボール!」

 オリカルクムが呪文を唱え終えると短杖の先に描かれた魔法陣より直径15㎝程度の大きさの火球が生まれ、トレントの群れに直撃する。

 1体のトレントが燃え上がり、その炎のが燃え移ったトレントも燃えていく。

「やはり炎が弱点のようだな。続けて魔術を放て!」

 あちこちで火炎魔術が発動される。

「魔素よ燃え盛れ、燃え盛れ魔素よ。我が目前の敵達に数多の火球となりて打倒し給え!ファイアショット!」

「魔素よ燃えろ、燃えろよ魔素よ。我が目前の敵を火炎となりて打倒し給え!ファイアボール!」

 あちこちでトレントが燃え上がる。

 一時は他の木々にも燃え移り森林火災一歩手前までいったがどうにか消火活動が間に合って森林火災には至らなかった。

「どうにかトレントは全て倒せたか。にしても木の魔物だと倒しても食料に出来んな。」

 バルバドスの呟きをそばで聞いていたシャラマンはバルバドスに向かって言う。

「まぁ大将。被害がなかっただけでもよしとしましょうや。」

「うむ。そうだな。最初から弱点を聞けてたのが良かったな。」

 バルバドスは全体に聞こえるように声を張り上げる。

「まだトレントが出てくるかもしれん。魔術が使える者はすぐに打てるように準備しておけ。」

 その後も何度かトレントに囲まれて魔術を放って撃退するを繰り返した帝国軍兵士達。

 またいつ木々が襲ってくるかわからないため、休憩のタイミングを逸したバルバドスは進軍を止めず、月明かりの元進み続け、いつの間にか黒猫達が野営している場所まで辿り着いたバルバドスはやっと部隊を休憩させる事が出来たのだった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 次の日起きるとすぐそばまで帝国軍兵士達が侵攻してきてきた。

 夜間も移動を続けたらしい。

 確かにこうも木々がいきなら動き出す森の中にあっては十分な休息を取ることもできないだろう。

 俺達はまずは森を抜ける事を第1に考えて先を急ぐ事にした。

 とは言え食事は大切だ。

 きちんと朝食を食べてから移動を開始する。

 今朝はワイルドウルフの肉を使った生姜焼きにした。

 獣臭さをショウガで消す事が出来て、なかなかの出来だったと思う。

 ドランは相変わらずハーピーの肉がお気に入りで塩コショウをしたハーピー肉の塊を20体分も平らげた。


 その後もトレントに襲われながらも森を進んでいると、森の中に裸の女性が立っていた。

 明らかにおかしい。

 見れば裸の女性は緑がかった色の皮膚をしており、体のあちこちに蔦を絡めており、所々に花を咲かせていた。

「あれはアルラウネですね。女性の姿形をしていますが、性別はないトレントの仲間みたいなもんですね。あの花は魅了効果のある花粉を飛ばしてくるから要注意です。」

 やっぱり魔物に詳しい白狐が説明してくれてる。

「男性陣は魅了効果にかかりやすいから待機でお願いします。私と黄豹で仕留めます。」

 と言うことで俺達は白狐と黄豹の戦闘を遠巻きに眺める事になった。


 まずは白狐の抜刀術での一閃がアルラウネを襲うが、全身を巻いた蔦を絡めて白刃・白百合を止めてしまった。

 あの蔦はかなりの強度があるようで、白狐の抜刀からの一閃を難なく止めてしまった。

 ドラゴンの鱗すら切り裂く一閃なのにだ。

 さらに両手を伸ばして蔦を白狐に絡めようとするのを黄豹が刃付きトンファーで阻止する。

 そんな黄豹すらも蔦が絡め捕ろうとする。

 その時には蔦を切り裂いた白狐が刀を振るい、黄豹へと伸びる蔦を切り裂いていた。

 とここでアルラウネが魔法を使ってきた。

「ウィンドブラスト!」

 アルラウネを中心として爆発的な突風が辺りに撒き散らされる。

 すると一番先頭で白狐達の戦闘を見守っていた紫鬼がフラフラと白狐達に向かって歩き出した。

 それに続いて銀狼もフラフラと歩き出す。

 何事かと思って見ていればいきなり紫鬼が白狐に殴りかかった。

 銀狼も双剣で黄豹に斬りかかる。

「な?!どうしたんだ2人とも?」

 金獅子が声をかけるも反応はない。

「これは花粉に魅了されたようですね。」

 白狐が紫鬼の拳を避けながら言う。

「クロさん、金獅子さん、蒼龍さん!紫鬼さんと銀狼さんをアルラウネから遠ざけて下さい!近くにいたらさらに花粉を吸って魅了効果が続いてしまいます!」

 銀狼の双剣を両腕のトンファーで受けながら黄豹も言う。

「ん。これじゃアルラウネに集中出来ない。早く遠ざけて。」


 俺達は紫鬼と銀狼を羽交い締めにしてアルラウネから距離を取ろうとする。

 しかし紫鬼は俺達の中で1番膂力が強い。

 金獅子と俺でどうにかアルラウネから引き離す。

 その間も暴れる紫鬼をどうにか押さえ込み、ズリズリと引きずるようにアルラウネから距離を取って行く。

 銀狼の方も蒼龍が三叉の槍で双剣を絡め捕り、アルラウネから引き離していく。

 もとの観戦位置よりも大分後方に引きずってきたが、まだ紫鬼も銀狼も暴れる。

 仕方なく、トレントから切り離した蔦を使って2人を縛り上げる。

 それでもまだ暴れる2人。

 白狐と黄豹はアルラウネを相手に攻めあぐねていた。蔦がどうしても邪魔をしてくるのだ。

 そこで蒼龍が王化する。武王形態になって炎に燃え盛る槍を使ってアルラウネを仕留めようと考えたのだ。


「王化!龍王!!」

 首から下げたネックレスにはまる王玉から蒼色の煙を吐き出しその身に纏い、その煙が体に吸い込まれるように晴れると龍の意匠が施された兜に蒼色の王鎧を身に着けた龍王形態となる蒼龍。

 さらに声を張り上げる。

「王化!武王!」

 そう叫ぶと右手親指にしたリングにはまる紅色の王玉から紅色の煙が立ちのぼり蒼龍を包み込む。

 その煙が右腕に吸い込まれるように消えていくと、右腕に紅色の線が入った王鎧を纏い、その手に燃えるような紅色の槍を持っている。

「白狐、黄豹離れろ!」

 紅色の槍を構えた蒼龍がアルラウネに向かって走り寄る。

「はぁぁぁぁあ!」

 燃え盛る紅色の槍を振り上げる蒼龍。

 咄嗟に蔦を絡ませようと片手を上げ蔦を伸ばすアルラウネ。

 しかし伸びた蔦は燃え盛る炎に焼かれてアルラウネ本体にまで火の手が迫る。

 後方に跳び下がるアルラウネ。

 しかし蒼龍は踏み込むと振り下げた紅色の槍を途中で止めて刺突に切り替える。

 振り下ろした槍を片手で止めて刺突に移行するなんて相当な腕への負荷がかかる行為だが、蒼龍は難なくこなす。

 紅猿の棍を使った訓練が功を奏したようだ。あの棍、重いからな。

 燃え盛る槍を胸元に受けたアルラウネは断末魔を上げて燃え上がる。

「ギョエェェェェエ!」

 鋼鉄すら切断する白狐の一閃をも止めた蔦ではあったが、やはり植物。火には弱かったらしい。

 アルラウネが燃えるに合わせてその身を包む蔦も燃え上がる。

 残ったのは人型の炭となった。


 アルラウネが死んだことで魅了の効果が切れたのか暴れていた紫鬼と銀狼が大人しくなった。

「む?ワシは何を?なんじゃこの蔦は?」

「ん?オレはどうしたんだ?敵はどこにいったんだ?」

「お前らはアルラウネの魅了効果の餌食になってたんだよ。暴れてしゃーないからその辺にあった蔦で縛り上げておいたんだ。」

「なに?魅了を受けてただと?」

「オレは敵と戦ってると思っていたが?」

「全く敵の魅了効果を受けるなんてだらしないのぅ。」

 金獅子も苦言を呈する。

「そりゃすまんかったな。ワシはもう大丈夫だ。蔦を解いてくれ。」

「オレも大丈夫だ。蔦を解いてくれよ。」

 もう安全だと思ったオレはナイフで蔦を切ってやる。

「魅了効果は危険だな。風下には立たないように注意せにゃならんな。」

「すまなかっまな。金獅子の兄貴。」

「次からは気を付けてくれよ。」

 そんな会話をした30分後には新たなアルラウネに遭遇し、今度は金獅子がアルラウネの魅了の花粉を受けた暴れ出した。

 紫鬼が押さえ込み、蔦でグルグル巻きにしてから俺が王化して、ヨルが呪王形態になって炎のナイフでアルラウネを倒した。

「む。俺様はいったい?」

「今度は兄貴が魅了の効果の餌食になってたぜ。」

「何だと?俺様が?そりゃすまなかったな。もう蔦を切ったくれ。食い込んで痛いわ。」

 銀狼が蔦を切ってやる。

 王化を解いた俺も金獅子に言う。

「全く。情けないな。さっき自分で注意してたばかりなのに。」

「むぅ。かたじけない。」

「アルラウネと戦う時は皆さんもっと遠くに避けていて下さいな。危なくて仕方ないですよ。」

「そうだな。そうさせて貰おう。」

 白狐に言われてシュンとしながら金獅子が答える。


 その後も数体のアルラウネに遭遇したが、白狐と黄豹だけで対処した。

 蔦はかなりの強度があったが、アルラウネの本体自体は大した事はなかった。

 黄豹が蔦を相手にしているうちに懐に入った白狐が首を刎ねてとどめを刺していった。

 トレントにアルラウネ、樹木系魔物にはもう辟易した。

 さっさと森を抜けたいところだ。


 俺達はその後も森を進む。


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