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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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117話 竜魔6

 勇者パーティーは白色のドラゴンと対峙していた。

 白色のドラゴンは四足歩行タイプであり、あまり飛行が得意ではなさそうな事がバッシュ達には幸運だった。

 二足歩行タイプで上空からのブレス攻撃を放たれていたらあっという間に壊滅していただろう。

 相手が地に降りて戦う事が得意な四足歩行タイプだったからこそ、バッシュ達にも勝機はあった。


 まずはドリストルが魔術を放つ。

「魔素よ集まれ、集まれ魔素よ。火炎の力へとその姿を変えよ。魔素よ燃えろ、燃えろよ魔素よ。我が目前の敵を火炎となりて打倒し給え!ファイアボール」

 ドリストルが呪文を唱え終えると短杖の先に描かれた魔法陣より直径30㎝程度の大きさの火球が生まれ、白色ドラゴンへと放たれ顔面に当たり爆発する。

「グオォォォオ!」

「お!効いているぞ!どんどん打てや。ドリストル。」

 ライオネルが言う。

「連射は得意じゃないんだけどね。魔素よ集まれ、集まれ魔素よ。火炎の力へとその姿を変えよ。魔素よ燃えろ、燃えろよ魔素よ。我が目前の敵を火炎となりて打倒し給え!ファイアボール」

 ドリストルの持つ短杖の先に描かれた魔法陣より直径30㎝程度の大きさの火球が生まれ、白色ドラゴンへと放たれる。

 ここで白色ドラゴンの首が太くなった。

 ブレス攻撃の前兆だ。

「親愛なる聖神様、その比護により迷える我らを救い給え、そのお力で我等に害ある物を弾き給え。エリアシールド!」

 サーファの呪文が終わると同時に灼熱の火炎ブレスが放たれる。

 ゴゴオォォォォォ!


 エリアシールドは1回だけ物理攻撃を防ぐシールドの範囲版だ。

 この場合、火炎ブレスも物理攻撃として認識され、ひとまずはブレスの直撃を防いだ。

 地面も岩である為、燃え広がる事も無く、火炎は収束していく。

 僅かに残る熱気を感じつつもバッシュ達は無事にブレス攻撃を防いだのである。

「よし!俺は前に出るぜ!」

 ライオネルが巨大斧を両手に構えて白色ドラゴンへと斬り込む。

 4、5m級とは言え顔は遙か上方にあり、狙えるのは脚とわずかに覗く腹部のみ。

 ガキンッ!

 竜鱗に阻まれて刃が通らない。

「僕も行こう!」

 遅れてバッシュも白色ドラゴンに駆け寄り前脚に向けて剣を振るう。

 ガキンッ!

 やはり竜鱗により刃が通らない。

「魔素よ集まれ、集まれ魔素よ。火炎の力へとその姿を変えよ。魔素よ燃えろ、燃えろよ魔素よ。我が目前の敵を火炎となりて打倒し給え!ファイアボール」

 ドリストルが呪文を唱え短杖の先に描かれた魔法陣より直径30㎝程度の大きさの火球が生まれ、白色ドラゴンへと放たれ顔面に当たり爆発する。

「グオォォォオ!」

 今のところ有効打はドリストルの魔術だけである。

 それにしても致命傷とはならず、僅かに竜鱗を焼くだけである。


 白色ドラゴンが前脚を振るう。

「うぉっ!」

 ライオネルが巨大斧で受けるも威力を殺せず数m程吹き飛ばされる。

 幸いバッシュは前脚の軌道から逸れた所に立っていたので無事である。

「サーファ!シールドを頼む!」

「はい。勇者様!親愛なる聖神様、その比護により迷える我らを救い給え、そのお力で害ある物を弾き給え。シールド!」

 サーファが呪文を唱え終わるとバッシュの周りに薄い膜が張られる。

「サーファ。俺にも頼むわ。」

 飛ばされた位置から戻ってきたライオネルも言う。

「親愛なる聖神様、その比護により迷える我らを救い給え、そのお力で害ある物を弾き給え。シールド!」

 サーファが呪文を唱え終わるとライオネルの周りにも薄い膜が張られる。

 これで2人とも1回だけ物理攻撃を受けても大丈夫である。

「うおぉぉぉぉ!」

「はあぁぁぁぁ!」

 ライオネルとバッシュが振られた方とは逆の前脚に向けて我武者羅に斧と剣を叩き付ける。

 これを嫌がった白色ドラゴンは再び片方の前脚を振り上げる。

「魔素よ集まれ、集まれ魔素よ。火炎の力へとその姿を変えよ。魔素よ燃えろ、燃えろよ魔素よ。我が目前の敵を火炎となりて打倒し給え!ファイアボール」

 ドリストルが呪文を唱え短杖の先に描かれた魔法陣より直径30㎝程度の大きさの火球が生まれ、白色ドラゴンへと放たれ振り上げられた前脚に当たり爆発する。

「グオォォォオ!」

 その衝撃で白色ドラゴンが横倒しになる。

 ドスン!

 巨体が倒れただけあって大きな音がする。


 倒れた事を良いことに下がってきた顔面に向けて斧と剣を振るうバッシュ達。

 しかし、その竜鱗を削る事しか出来ずに、気がつけば白色ドラゴンが立ち上がっている。

 さらに大口を開けてバッシュに噛み付き攻撃を放ってきた。

 剣を盾にして噛み付きを押さえつけるバッシュ。

 その隙にライオネルは三度前脚へと斧を振るう。

 ガギンッ!

 今までとは違う音が鳴り響く。

 僅かにだが竜鱗が砕けたのだ。

 ここぞとばかりに砕けた竜鱗に向けて斧を振り回すライオネル。

 バッシュへの噛み付きを断念した白色ドラゴンはライオネルが斧を叩き付ける前脚を高く上げてライオネルへと爪擊を放つ。

 パリンッ!

 何かが割れる高質な音がした。

 ライオネルにかけられたシールドの魔術が砕けたのだ。

 だがその効果ゆえに今度は弾き飛ばされる事無くその場に留まるライオネル。

 そればかりか、振るわれた前脚に巨大斧を叩き付け、さらに竜鱗のひび割れを大きくした。

「勇者様!今がチャンスです!竜鱗が砕けた箇所に集中攻撃しましょう!」

 ライオネルに言われ、バッシュも前脚に長剣を叩き付ける。

 ガキンッ!バギン!

 遂に鱗が砕け散り、一部ではあるが肉が見えた。

「うおぉぉぉぉりゃぁぁぁ!」

 肉が見えた先へライオネルの渾身の一撃が炸裂する。

「グオォォォオ!」

 痛かったのだろう。白色ドラゴンは再び前脚を振り上げ爪擊を繰り出す。

 斧で受けるライオネル。だがしかし、やはり勢いに負けてバッシュを巻き込み数m吹き飛ばされる。

 パリンッ!

 バッシュにかけられたシールドの効果も切れた。

「サーファ!もう一度シールドだ!」

「はい。勇者様!親愛なる聖神様、その比護により迷える我らを救い給え、そのお力で害ある物を弾き給え。シールド!」

 サーファが呪文を唱え終わると再びバッシュの周りに薄い膜が張られる。

「親愛なる聖神様、その比護により迷える我らを救い給え、そのお力で害ある物を弾き給え。シールド!」

 ライオネルの周りにも再び薄い膜が張られる。

「魔素よ集まれ、集まれ魔素よ。火炎の力へとその姿を変えよ。魔素よ燃え盛れ、燃え盛れ魔素よ。我が目前の敵達に数多の火球となりて打倒し給え!ファイアショット!!」

 魔術師ドリストルの詠唱によりその手にした短杖の先に魔法陣が描かれ、直径3cm程度の小さな火球が数十個生み出され、白色ドラゴンに向かい、各所で小爆発を起こす。

 しかし威力が弱く大したダメージにはならない。

「ダメだ。ドリストル。ファイアボールで頼む。」

「はい!勇者様!魔素よ集まれ、集まれ魔素よ。火炎の力へとその姿を変えよ。魔素よ燃えろ、燃えろよ魔素よ。我が目前の敵を火炎となりて打倒し給え!ファイアボール」

 ドリストルが呪文により火球が生まれ、白色ドラゴンへと放たれ顔面に当たり爆発する。

「グオォォォオ!」

「やはりファイアボールは効いているぞ!ドリストル連射を頼む!」

「だから連射は得意じゃないんですって。魔素よ集まれ、集まれ魔素よ。火炎の力へとその姿を変えよ。魔素よ燃えろ、燃えろよ魔素よ。我が目前の敵を火炎となりて打倒し給え!ファイアボール」

 火球が白色ドラゴンの顎下に当たる。

 すると今まで以上に強い反応を見せた。

「グギァォォォオ!」

「む?顎下だ!顎下が弱点だぞ!」

 ライオネルが叫ぶ。

「ライオネル。まずは前脚を叩き斬って奴を転がそう。それから顎下へ攻撃だ。」

「はい!勇者様!」

 再び渾身の一撃を竜鱗が砕けた前脚へと叩き込むライオネル。

 それに続きバッシュも長剣を突き入れる。

「グオォォォオ!」

 無事なほうの前脚で爪擊が放たれるが、シールドの効果のおかげて2人ともダメージはない。

 構わず竜鱗が砕けた位置に攻撃を叩き込む。


 さらに爪擊が来るが、攻撃に夢中に、なっていたライオネルとバッシュは纏めて爪擊を食らい吹き飛ばされる。

「いけない!勇者様!」

 サーファは駆け寄り聖術を施す。

「親愛なる聖神様、その比護により目の前の傷つきし者に僅かながらの癒やしの奇跡を起こし給え。ローヒーリング!」

 バッシュの肩口についた爪擊の後が塞がっていく。

「サーファ。俺にも聖術を。」

「親愛なる聖神様、その比護により目の前の傷つきし者に僅かながらの癒やしの奇跡を起こし給え。ローヒーリング!」

 ライオネルの腹部についた爪擊の後も塞がっていく。

「魔素よ集まれ、集まれ魔素よ。火炎の力へとその姿を変えよ。魔素よ燃えろ、燃えろよ魔素よ。我が目前の敵を火炎となりて打倒し給え!ファイアボール」

 火球が白色ドラゴンの竜鱗が砕けた前脚に当たる。

「グギァォォォオ!」

 肉が焼ける匂いがする。

 白色ドラゴンの前脚が震え始めた。

「もう少しだ。行くぞライオネル!」

「はい!勇者様!」

 2人はまたしても竜鱗が砕けた部位を狙って猛攻を仕掛ける。


 やがて肉を切り裂き骨まで達したバッシュ達の攻撃により、白色ドラゴンは立っていられなくなり、前脚を折って伏せた状態となる。

 とここで再び白色ドラゴンの首が太くなった。

「親愛なる聖神様、その比護により迷える我らを救い給え、そのお力で我等に害ある物を弾き給え。エリアシールド!」

 サーファの呪文が終わると同時に灼熱の火炎ブレスが放たれる。

 ゴゴオォォォォォ!

 今回もエリアシールドが4人をブレス攻撃から守った。

 しかし、

「勇者様。そろそろ私聖気が切れますわ。あとローヒーリングが数回放てる程度です。」

「わかった。君の力が必要になるタイミングが来る。今は待機していてくれ。」

「はい。勇者様。」

 サーファが白色ドラゴンから離れる。

 白色ドラゴンが首を伸ばしライオネルに噛み付きを仕掛ける。

「おぅらっ!」

 ライオネルは巨大斧を振り回し白色ドラゴンの牙を打ち、噛み付きを逸らす。

 その伸びた首に向かってバッシュが下から掬い上げるように長剣を振るう。

 ガキンッ!

 首元も竜鱗に阻まれてヤイバが通らない。

 ドリストルはファイアボールの魔術を白色ドラゴンの背中に向けて放ち続ける。


 魔術は大気中の魔素を用いる為、魔法と違って魔力切れの心配はない。

 ただし、魔術の行使には相当な集中力が必要となる為、あまり乱射は出来ない。

 戦闘開始からすでに十数発の魔術を発動しているドリストルも集中力の限界に来ていた。

「魔素よ集まれ、集まれ魔素よ。火炎の力へとその姿を変えよ。魔素よ燃えろ、燃えろよ魔素よ。我が目前の敵を火炎となりて打倒し給え!ファイアボール」

 火球が白色ドラゴンの顎下に当たり爆発する。

「グギァォォォオ!」

「やはり顎下だ。顎下が弱点だ!」

「うおぉぉぉぉ!」

 バッシュが言うのが早かったか、ライオネルが跳躍して顎下に痛打を入れるのが早かったか。

 図らずして逆鱗を傷付けたライオネル。


 ここでバッシュは切り札である”勇敢なる者の猛攻”という技能を発動させた。

 これは1日に1度だけ一時的に身体能力を倍増させるものであるが、制限時間は5分程度であり、なかなか使い勝手が悪い技能であるが、ここで白色ドラゴンを倒しておくことが優先だと思ったのだ。

 白色ドラゴンが首を上下させ暴れる。

 そんな白色ドラゴンの首の下に長剣を差し入れ、思いっきり上へと弾き上げるバッシュ。

 上に弾かれ顎下をさらけ出した白色ドラゴンに向けて跳躍すると、顎下に向けて長剣を振り回す。

「ギャオォォォォ!」

 これを嫌がった白色ドラゴンが首を捻る。

 そのまま首を鞭のようにしならせて空中のバッシュへと頭を叩き付ける。

 地面へと急降下するバッシュだったが、激突する事は無く、きちんと2本の足で着地すると、再度跳躍して顎下に長剣を叩き込む。

「グオォォォオ!」

 力を失ったかのように白色ドラゴンの頭が落ちてくる。

 その降下地点に先に着地したバッシュは両腕に力を込めて長剣を握り直す。

「これで終わりだぁぁぁ!」

 顎下に潜り込んだバッシュが思いっきり下から上に掬いあげるように長剣を振るう。

 その攻撃は見事に逆鱗を砕く事に成功。

 バッシュはそのまま長剣の先を顎下に滑り込ませると一気に突き上げる。

 弱点である逆鱗を砕かれ、喉元に穴を開けられた白色ドラゴンはようやくその動きを止めたのであった。


「はぁはぁはぁ。」

 肩で息をするバッシュ。

 ライオネルも同様の疲労具合だ。

 だがまだ沢山のドラゴニュート達と帝国軍兵士達が戦っている。

 バッシュ達はドラゴニュートに向けて足を踏み出すのだった。


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