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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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116話 竜魔5

 ヨルと5mのハルバードを持ち、騎乗するドラゴンを失ったドラゴンライダーのドラゴニュートの戦いはあっという間に終わった。

 最初はハルバードを振り回しヨルが懐に入るのを阻止していたドラゴニュートだったが、そんな近付けない状況に苛つき出したヨルが影縫いで動きを止めてその首筋を掻き切ったのである。

 5mの獲物を持ち、対峙した距離的にはドラゴニュートの方が優勢に思われたが、動きを止められては何も出来ずにその命を散らしたドラゴニュートであった。

『全部影縫いで動きを止めちまえばもっと戦闘が楽になるんじゃないか?』

「馬鹿言え。妖術も使用するのに回数制限がある。そんなに乱発したら王化が解けてしまうわ。」

 ここぞと言うときの妖術らしい。

 ヨルは帝国軍兵士達が戦う鎧を来ている魔人化したドラゴニュートを倒す為、そちらに駆けて行くのであった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 龍王は鎧を着込んだドラゴニュートと対峙していた。

「ワガハイのハルバードの前では人間なんぞ、塵に等しいわ。」

 ドラゴニュートは自信満々である。

 まずはお互いに刺突を繰り返し、両者の間に火花が散る。

 ガキンッ!ガギンッ!ガッ!

 刺突を繰り出す速度は同程度である。

「うむ。なかなかやるな。」

 龍王は刺突を繰り出す速度を上げる。

 それに合わせてドラゴニュートの刺突もスピードを上げる。

 ガギンッ!ガキンッ!

 両者1歩も引かない攻防が続く。

 ガキンッ!ガキンッ!ガギンッ!

 と、ここでドラゴニュートが1歩後退する。

「貴様なかなかやるな。ワガハイの槍さばきに付いてくるとは。」

「ふん。こちらの台詞だ。我の刺突に付いてくるとはなかなかやりおるわ。」

「槍は互角と見たがこれならどうだ。」

 そう言うとドラゴニュートは斧頭を振るって斬撃を繰り出してきた。

 これを三叉の槍で弾く龍王。弾くと同時に踏み込み刺突を放つ。

「はっ!」

「ヌゥ!」

 弾かれたハルバードをなんとか引き戻し柄の部分で槍を受けるドラゴニュート。

 しかし龍王は止まらない。

「はぁぁぁあ!」

 繰り返し突き出される刺突にドラゴニュートの防御が間に合わなくなる。

 着込んだ鎧に三叉の槍が当たり火花を散らす。

「クッ!」

 堪らず後退するドラゴニュート。

 しかし龍王も踏み出しこれを追う。

 止まらない刺突の猛攻にドラゴニュートは防戦一方である。

 やがて肩の鎧牙弾け飛び、胸当てが凹み、胴当てが砕ける。

 刺突のスピードについて行けなくなったドラゴニュートはここで捨て身のハルバードの斧頭での斬撃を放ってくる。

 これを1歩退いて避ける龍王。

 再びにらみ合いとなった。

 先に動いたのはドラゴニュートだった。

 ハルバードの先端の槍での刺突を放つ。

 しかし再度上へと跳ね上げられる。

「水撃・龍翔閃!」

 突き出された槍の先端から高圧の水撃が放たれ、ドラゴニュートの左胸に穴をあける。

「グフッ!」

 さらにドラゴニュートに駆け寄る龍王。

 龍王は穴の空いた左胸を狙って高速で何度も突き出す。

「|龍覇連突!」

 左胸に空いた穴を大きく広げられたドラゴニュートは力尽きて倒れ込んだ。


 龍王は1番奥で仁王立ちする魔将、九頭の九嶋に向けて駆け出した。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 破王が対峙したのは黄色のドラゴンに跨がるドラゴニュートだった。

 まずは上空から砂岩のブレスが振ってくる。

 他のブレスとは事なり明らかな物量を伴うブレスの為、無視して飛び越える事が出来ず、破王はただただ逃げ惑う事しか出来ないでいた。

「飛剣・鎌鼬!飛剣・鎌鼬!飛剣・鎌鼬!」

 ブレスの合間を縫うように飛ぶ斬撃を放つも上空に浮かび機敏に動く黄色のドラゴンには当たらない。

「全く当たりませんね。」

「ハッハァー!拙者の愛竜のブレスの前に何も出来ないと見えるでござるな!」

 ドラゴンに騎乗するドラゴニュートが調子に乗って言ってくる。

 だが、ドラゴンのブレスも無限に吐き続けられる訳ではない。

 体内の魔力が尽きればブレス攻撃も止む。

 破王は上空から降り注ぐ砂岩を避けながらその時を待った。

 十数発のブレスを避けきった破王。そこでようやくブレス攻撃が止んだ。

「避けきるとはなかなかやるでござるな。しかし、拙者のハルバードはもっとキレがあるでござるよ!」

 黄色のドラゴンが急降下して来たかと思えば騎乗するドラゴニュートが手にしたハルバードを振るって来た。

「はぁぁぁぁ!抜刀術・飛光一閃!」

 高速で振り抜かれた刀、白刃・白百合による一閃は振り抜かれたハルバードを大きく上へと弾かれる。

 そのまま抜き身の刀を再度振るう破王。

「ふんっ!抜刀術・閃光二閃!」

 抜き身の白刃・白百合を目にもとまらぬ速度で振り上げるとハルバードを持つ右腕がズタズタに切り裂かれる。

「グオォォォオ!?」

 一瞬で2回刀を振るったのだ。

 破王は跳び上がり再度抜き身の刀を振るった。

「てりゃぁぁぁ!抜刀術・発光三閃!」

 咄嗟に切り裂かれた右腕を頭上に上げて防御するドラゴニュート。

 しかし剣閃が通った先ではドラゴニュートの右腕が切断された。

「ヌオォォォオ!」

 ハルバードを持つ右腕を切り飛ばされたドラゴニュートにはもう攻撃手段がない。

 残る左腕で手綱を握り、騎乗するドラゴンに噛み付き攻撃をさせるドラゴニュート。

 これを待ち構えていたかのように刀を霞の構えで迎え撃つ破王。

 迫る大口の中に刀を突き入れた。

 喉から入った刀はそのまま上顎を貫通し、脳にまで達した。

 突き刺した刀を捻る事も忘れない。

 脳を破壊された黄色のドラゴンは大口を開けたままその場に倒れ込んだ。

 騎乗していたドラゴニュートは倒れゆくドラゴンの背を蹴り、切断された自身の右腕に辿り着く。

 そして右腕が付いたままのハルバードを広い、左手1本で構える。

 しかし、元々がドラゴンの背に乗ったまま扱う事を想定して作られた5m程のハルバードは片手で扱うには長過ぎた。

 なんとか刺突を繰り出したものの、破王は半身になってこれを避け、ドラゴニュートの首筋を一閃。

 見事にその首を落としたのであった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 不死王は2m程のハルバードを持った鎧を着込んだドラゴニュート2体と対峙していた。

 2体のハルバードさばきは絶妙なコンビネーションを見せており、不死王は刃付きトンファーで辛うじてその攻撃を弾いていた。

 だがジリジリと後退させられて行く不死王。ここで思い切った作戦に出た。

 片方のドラゴニュートが繰り出した刺突をその腹部に受け、トンファーを握る手を離して突き刺さったハルバードを掴む。

「ん…ん。」

 刺突は王鎧を超え肉体にまで刺さっているがお構いなしだ。

 もう片方の繰り出した刺突を残った片手のトンファーで弾き上げると、腹部に刺さったハルバードを持つ腕を刃付きトンファーで切り裂き、前に出されていた左腕を切断した。

「ギョエェェェ!僕の腕がぁぁぁ!」

 腕を切断した事を確認した不死王は掴んでいたハルバードを腹部から引き抜き、グイッとドラゴニュートに向けて押し出す。

 そしてしゃがみ込むと手放した刃付きトンファーを拾い、もう片方のドラゴニュートが放つ斧頭での斬撃をトンファーで受け止める。

「ふんっ。こちらは片腕を失ったがそちらは腹部に大穴を開けた。痛み分けと言ったところかのぅ。」

 5体満足の方のドラゴニュートが言う。

「ん。痛いけど大丈夫。まだ動ける。」

 そう言うと不死王は自身の体を駒のように回し、両腕のトンファーを振り回す。

 隙を見てハルバードを突き入れてくるドラゴニュート2体であったが、不死王の回転が速く、突き出したハルバードはことごとく跳ね飛ばされる。

 やがて駒のように回る不死王は5体満足な方のドラゴニュートへと近付き、その身を削り始める。

「グギャァァァア!」

 咄嗟に後方に跳び下がりこの攻撃を避けるドラゴニュート。

 しかし不死王は止まらない。

 ハルバードを突き出しても弾かれ、両腕が上がった状態で駒の動きに巻き込まれ腹部をズタズタに斬られるドラゴニュート。

 片腕となったドラゴニュートも時折ハルバードを突き出すが駒の動きに弾かれて手も足も出ない。

 腹部を斬られたドラゴニュートが臓物を溢し始めた所で不死王の回転が止まった。

「んー。気持ち悪い。クラクラする。」

 高速で回り続けたのだ。目も回ると言うものだろう。

 そんな隙を見せた不死王に対して片腕となったドラゴニュートは先程突き刺した腹部に再度ハルバードを突き入れようとして気付く。

 傷口がないのだ。王鎧に開けたはずの傷口が塞がっている。今はもうどこにも穴はなかった。

 それもそのはず。不死王の特集技能は技にあらず。その不死性、超回復力なのである。

 戦闘中に受けた傷など時間が経てば塞がってしまう。四肢が飛んだとしてもまた生えてくるのである。

 ちなみにこの駒のように回る技は先日破王との模擬戦において考案されたものであり、実戦で使うのは初めてであった。

 自身の目が回ると言う欠点も見えた有意義な戦いとなった。

 だがまだ2体のドラゴニュートは立っている。戦闘は継続中なのだ。

 若干ふらつきながらも不死王は片腕となったドラゴニュートに向けて刃付きトンファーを振りかざす。

 片腕のドラゴニュートは器用に片腕でハルバードを振り回し斧頭でトンファーの刃を受ける。

 だが不死王のトンファーは両手に1本ずつあるのだ。受けられたトンファーとは逆のトンファーがドラゴニュートへと迫り残った片腕も切断してしまう。

「ガァァァァア!僕の腕がぁぁぁ!」

 両腕を失ったドラゴニュートは錯乱状態である。

 今のうちに臓物を溢したドラゴニュートに向き直ると腹部の傷口にトンファーの刃を突き入れる。

 だがドラゴニュートもまだ戦意は失っていなかった。

 自身の傷口にトンファーの刃が入るのと同時に不死王の腹部に向けてハルバードに突き刺す。

 1回目の突きでは王鎧に弾かれる。

 2度、3度目と突きを繰り返す。

 不死王は突き入れたトンファーをかき混ぜるように動かす。

 だがまだドラゴニュートは倒れない。4度、5度とハルバードで突き王鎧に穴を開ける事に成功。

 そのままグイッとハルバードを突き入れたところでドラゴニュートは力尽きた。

「ん。痛い。」

 不死王は自身の腹部に刺さったままのハルバードを引き抜く。

 そして今だ錯乱状態のドラゴニュートに向けて左右のトンファーを一閃。

 その首を落としたのであった。


 不死王は自身の腹部の傷が癒えるのを待ってから帝国軍兵士達が戦う鎧を着込んだドラゴニュートを倒す為、戦場を駆ける。


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