115話 竜魔4
獣王は赤色のドラゴンに跨がるドラゴニュートを相手にしていた。
上空から一気に襲い掛かり、5m程のハルバードで斬撃を放ってくるドラゴニュート。
獣王は防戦一方である。
だがただ防御しているだけではない。反撃のチャンスを狙っていた。
そしてその時がやって来た。
舞い降りてきたドラゴンの上からハルバードご振り下ろされる。それを大剣でガードする獣王。
そして上空に戻るドラゴンが背を向けたのだ。
これを見逃さず跳躍して赤色のドラゴンに乗るドラゴニュートの背に向けて大剣を振り下ろす獣王。
「雷撃断頭斬!」
その攻撃は残念ながら頭部ではなく左肩口に当たったが、銀の鎧をものともせず、左の肺近くまでその刃を埋めた。
「グフッ!」
赤色のドラゴンの上で吐血するドラゴニュート。さらに雷撃を纏った斬撃を受けた為に体が痺れる。
搭乗者がそんな状態にあるとは気付いていない赤色のドラゴンは再度空から滑空して獣王に迫る。
しかしいつもなら搭乗者がハルバードで攻撃するのに、今回はハルバードを振るう様子がない事に気が付くと至近距離から炎のブレスを吐いてきた。
前方に前転してこれを避ける獣王。
それでも背を炎に炙られる。
「ちっ。あっついのぅ。やはりドラゴンから始末するべきか。」
再度背を向けて上空に飛び立つ赤色のドラゴン。
その背に向けて跳躍し、右の翼に向けて大剣を振り下ろす。
「食らえ!雷撃断頭斬!」
その斬撃は見事に赤色のドラゴンの右の翼を切断し、墜落させる。
体重差により赤色のドラゴンの方が落ちるのが早い為、獣王は落下の威力も乗せて大剣を赤色のドラゴンの頭部に突き刺す。
硬い頭蓋に邪魔をされ、脳を破壊する事は叶わなかったが、頭頂部の竜鱗を破砕する事は出来た。
と、ここで赤色のドラゴンに跨がるドラゴニュートが復活した。
ドラゴンの上からハルバードを振り回し、獣王に斧頭による斬撃を放ってくる。
大剣でこれを弾き上げた獣王は再度跳び上がり赤色のドラゴンの頭頂部に向けて大剣を振り下ろす。
「断頭斬!」
竜鱗を失った頭頂部への一撃は頭蓋を割ることに成功。
「グォォォォオ!」
苦悶の声を上げる赤色ドラゴン。
片翼を失い飛び上がる事が出来なくなった赤色のドラゴンは獣王に向かって噛み付きを決行。
巨大な口が獣王に迫る。
しかし獣王、冷静に大剣を横に寝かせてから迫り来る大口の中に大剣を突き入れた。
「ギョエェェェェエ!」
喉の奥を大剣で突かれた赤色のドラゴンは噛み付きどころではなくなり、首を大きく仰け反らせて後退する。
上に乗るドラゴニュートはこの動きについて行けず、しがみつくので精一杯である。
喉元をさらけ出した赤色のドラゴンの顎下にはっきりと逆鱗の存在を確認した獣王は跳び上がり逆鱗に向けて大賢を突き入れる。
逆鱗を貫通し、喉の奥を再度傷付けられた赤色ドラゴンは手足をバタつかせて暴れまくる。
背に乗るドラゴニュートはしがみつく事しか出来ないでいる。
目の前の獣王を無視して暴れまくる赤色のドラゴン。その背後に回り込むと上に乗るドラゴニュートに向けて大剣を横凪に振るう。
「いくぞ!雷鳴剣!」
雷撃を纏った斬撃をドラゴニュートの背に叩き込む。
「ガアァァァア!」
再度雷撃を受けたドラゴニュートは赤色ドラゴンに捕まっていられなくなり、その背から落ちる。
赤色のドラゴンはところ構わず炎のブレスを吐きまくる。
落ちたドラゴニュートに留めを刺そうと近寄った獣王に向けて炎のブレスが吐きだされる。
その炎は地に落ちたドラゴニュートを焼きながら獣王へと迫る。
「グワァァァ!」
ドラゴニュートは火炎に包まれる。
ドラゴニュートへ留めを刺すために前進していた獣王も咄嗟に飛び退いたが炎は足先を焼いた。
「だから、あっついのぅ!」
あちらこちらに、炎のブレスを振りまく赤色ドラゴンに近付き背後からその頭頂部に大剣を叩き込む。
「断頭斬!」
頭蓋が割られた頭頂部への攻撃は脳を破壊し、赤色のドラゴンは地に伏せる事となった。
ドラゴンのブレスに焼かれたドラゴニュートは辛うじて息があった。
転がり全身に燃え移った炎を消すと、ハルバードを杖代わりに立ち上がり、頭上でハルバードを回し勢いを付けた斧頭を獣王へと叩き付けてくる。
大剣でこれを受けた獣王だったが、瀕死とは思えないくらいの攻撃の重さに2歩後退する。
しかし相手は瀕死状態で動きが怠慢だ。
さっと近付き、首を刎ねようとしたが、どこにそんな力が残っているのかハルバードで大剣の攻撃を防がれてしまう。
相手は肩で息をするほどに疲弊している。
しかしハルバードの扱いは大したもので、獣王の攻撃もことごとく防がれてしまう。
そんな瀕死状態のドラゴニュートはハルバードによる突きを繰り出してきた。
これを上に跳ね上げる獣王。そのまま両腕ごと首を刎ねてようやく留めを刺すこととなったのである。
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牙王は青色ドラゴンに跨がるドラゴニュートを相手にしていた。
「おれっちの槍さばきについてこれるかな?」
ドラゴニュートはそんな事を言うとドラゴンの背に乗ったまま高速で突きを繰り出してきた。
牙王は双剣でこれを防ぐも次々と迫り来るハルバードに押され気味である。
後方に跳躍して距離を取った牙王。
そこに青色ドラゴンが吹雪のブレスを吐いてくる。
幸い氷属性を得た牙王は寒さに強い。
吹雪のブレスを意に介するでもなく、青色ドラゴンへと肉迫し、その両目に双剣を突き入れる。
「ギャオォォォオ!」
双剣を両目に刺したまま、顔を大きく仰け反らせる青色ドラゴン。
空中に投げ出された牙王に向けてドラゴニュートのハルバードが迫る。
両目を失い暴れる青色ドラゴンの上にありながらドラゴニュートは見事に体勢を確保しハルバードで突きを放ってきたのだ。
双剣をクロスさせてこれを受ける牙王。その勢いに負けて3m程吹き飛ばされる。
両目を失いひとしきり暴れた青色ドラゴンは大きな翼をはためかせて上空へと逃げる。
しかし手綱を握ったドラゴニュートにより、逃走は許されず、目も見えない中、滑空して牙王へと迫る。大きな口を開き噛み付くつもりのようだ。
そこにドラゴニュートのハルバードによる突きも追加される。
咄嗟に前転しこれを避ける牙王。
目の見えないはずの青色ドラゴンだが、地面に衝突する事無く再び上空へと舞い上がる。
背に乗るドラゴニュートの手綱さばきにより完全に動きを掌握されているようだ。
再び上空から噛み付き攻撃をしてくる青色ドラゴン。
これを双剣で受け止める牙王。
しかし上に乗るドラゴニュートのハルバードによる突きを左脇腹に受けてしまい、後退させられる。
幸いハルバードは王鎧を超える事は無く肉体にダメージはない。
しかしやはり上空に逃げられては攻撃し辛い。
「双飛斬!」
飛ぶ斬撃を放つも突進してくる青色ドラゴンの勢いは止まらない。
「くそっ!」
またしても前転して避ける牙王。
しかしそれを見越したようにドラゴニュートのハルバードが迫り、再び左脇腹に突きを受けてしまう。
同じ箇所に攻撃を受けてしまった事で王鎧が少し削られた。
これ以上攻撃を受けると肉体へのダメージに繋がる。
牙王はどうしたらこの連続攻撃を止められるか頭を捻る。
「ハッハァー!おれっちの槍さばきは凄いだろう?」
「うるせぇな。すぐに地に落としてやるよ。」
再度上昇する青色ドラゴン。
そのドラゴンに向けて双剣を振り抜く牙王。
「氷塊弾!」
拳大の大きさの氷塊が青色ドラゴンの片翼に当たりバランスを崩す。
そこを狙い定めたように跳躍する牙王。
「双狼刃!」
氷塊が当たった方の片翼に向けて双剣を振り抜く。
片翼を傷付けられた青色ドラゴンは墜落していく。
そんな墜落するドラゴンの上からもハルバードを突き出してくるドラゴニュート。
これを双剣で弾き、逆にドラゴニュートに向けて刃を向ける。
落下速度も乗った双剣での突きを左肩と胸部に受けるドラゴニュート。
着込んだ鎧を貫通し、その肉体を傷付ける。
「グボッ!」
右の肺を傷つけられたドラゴニュートは血を吐く。
がまだ闘志は失っていない。
墜落の衝撃で気を失っている青色ドラゴンの上でハルバードを振り回し、牙王に向けて斧頭を叩き付ける。
双剣をクロスさせてこれを受けた牙王だが、あまりの威力に3m程吹き飛ばされる。
「グボッ!まだまだおれっちはやれるぜぃ。」
血を吐きながら言うドラゴニュート。
そこで気を失っていた青色ドラゴンが目覚めた。
両目を失っている為、牙王の位置を知らせる術は上に乗るドラゴニュートの手綱さばきによるものである。
青色ドラゴンは牙王の方を向くと吹雪のブレスを吐いてくる。
先程よりも風圧が強く、牙王でも簡単には近付けない。
両腕で顔面を覆い吹雪に耐える牙王。
と、そこにドラゴニュートのハルバードによる突きが迫る。
3度目の左脇腹へのダメージである。
王鎧が砕け肉体にダメージが通ってしまった。
「くっ!氷塊弾!」
青色ドラゴンの上に乗るドラゴニュートに向けて拳大の氷塊が飛んでいく。
これを器用にハルバードを回し弾いたドラゴニュート。
しかし牙王の狙いは青色ドラゴンであった。
今だ吹雪のブレスを吐き続ける青色ドラゴンに向かって駆けだし、その下顎を双剣で突き上げる。上を向かされた青色ドラゴン、逆鱗が丸見えとなった。
「双狼刃!」
双剣での一撃は逆鱗を砕き、青色ドラゴンの命を奪った。
動きを止めた青色ドラゴンから降りてくるドラゴニュート。その足取りはフラフラである。
右肺へのダメージが響いているようだ。
しかしハルバードを振り回し牙王へと攻撃してくる。
斧頭による斬撃を上に弾き上げると、一気に肉迫し、双剣を振るう牙王。
胸部に斬撃を受けて着込んだ鎧が砕け散る。
そのまま逆手に持ち替えた双剣を両胸に突き刺す牙王。
「お…おれっちが…負ける…。」
最後に言葉を残しドラゴニュートは力尽きた。
こうして3体目のドラゴンライダーは打ち倒されたのであった。




