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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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111話 孵化

 その後もコモドドラゴン、ジャイアントリザード、リザードランナー、ワイバーンとトカゲ・亜竜に遭遇しながらも先へと進む俺達。

 相変わらず俺はドラゴンの卵を温めており、戦闘には参加していない。

 俺が戦闘に参加しないって事はヨルも同様だ。

『いい加減儂も戦いたいぞ。まだ卵は孵らんのか?』

「んー、たまに中で動いてる感じはするからもうちょっとだとは思うんだけどな。」

 そんな会話を続けながら3日が経った頃。


 俺達の前にリザードマンらしき敵影が見えた。数は10体ほど。

 普通のリザードマンと違って頭に竜角が生えている。

「あれは、ドラゴニュートですね。」

 物知りな白狐が言う。

「ドラゴニュートは別名竜人でドラゴンが人化した魔物です。あれで人語を解するようなら竜魔人って事になりますが。」

 まだあちらはこっちに気づいていないようだ。それなら特攻が効果的だろう。

 紫鬼は緑鳥達の護衛として残る事として、金獅子、銀狼、蒼龍、白狐、黄豹で特攻をかける事にした。

 敵の強さがわからないため、ひとまず王化して臨む。

「王化!獣王!」

 金獅子が王化し、右手中指のリングにはまる金色の王玉から金色の煙を吐き出しその身に纏い、その煙が晴れると獅子を想起させる兜に金色に輝く王鎧を身に着けた獣王形態となる。

「王化!牙王!」

 銀狼が王化し、左手中指のリングにはまる王玉から銀色の煙を吐き出しその身に纏い、その煙が晴れると狼を象った兜に銀色に輝く王鎧を身に着けた牙王形態となる。

「王化!龍王!」

 蒼龍が王化し、首から下げたネックレスにはまる王玉から蒼色の煙を吐き出しその身に纏い、その煙が晴れると龍の意匠が施された兜に蒼色の王鎧を身に着けた龍王形態となる。

「王化!破王!」

 白狐が王化し、右耳のピアスにはまる王玉から真っ白な煙を吐き出しその身に纏い、その煙が晴れると狐を想起させる兜に真っ白な王鎧を身に着けた破王形態となる。

「王化!不死王!」

 黄豹が王化し、右足のアンクレットにはまる王玉から黄色の煙を吐き出しその身に纏い、その煙が晴れると豹を想わせる兜に黄色の王鎧を身に着けた不死王形態となる。

「よし、行くぞ!」

 金獅子の合図で5人は駆けていく。

 近寄る金獅子達に気付いたドラゴニュート達は手にしたハルバードを構える。

 ハルバードってのは長さ2m程度の槍の穂先を持ち、先端に斧頭が付いている、突いて良し、斬って良しな武器だ。

 そんなハルバードを10体全員が持っている。

「ぐぎゃぎゃぎゃ!」

「ぐきゃ!」

 どうやら人語を解さないただの魔物らしい。


 先頭を走る白狐に対して3体のドラゴニュートがハルバードで突きを放ってきた。

 その突きを空中に飛ぶ事で避けた白狐。

「抜刀術・飛光一閃!」

 超高速の抜刀術で振り抜かれた刀、白刃・白百合が1番左側にいたドラゴニュートの口元を切り裂く。

「グキャァァァア!」

 しかし若干距離があったようで切断には至らない。

 口元を斬られてたたらを踏む一体のドラゴニュートを尻目に残る2体のドラゴニュートがまだ空中にいる白狐に向かってハルバードを振り抜く。

 が、そのハルバードの一撃は間に入った金獅子と銀狼によって弾かれる。

 ハルバードを弾き上げて空いた隙を突くように金獅子、銀狼が踏み込んで袈裟懸けに斬るも上手くハルバードの柄を使って防がれてしまう。

 これは今までの魔物達とは戦闘センスが違うぞ。

 着地した白狐と黄豹がスルリと懐に入り込み刀とトンファーを一閃、腹部に大きな切り傷を与えるがやはり切断には至らない。

 そうこうしているうちに他のドラゴニュート達もワラワラと近付いてきてハルバードの槍を突き出してくる。

 そこで動いたのが蒼龍だ。

 対槍の稽古は普段から龍の谷で行っていたらしく、突き出された槍を自身の持つ槍で弾き、さらに1歩踏み出して刺突を放つ。

 三叉の槍を活かすように2体のドラゴニュートの間を狙って突き出された槍は見事にドラゴニュートの腹部に突き刺さる。

 さらに突き刺さった槍に回転を加え、その腹部を切り裂く。

「グキャァァァア!」

 かと思えば次の瞬間には別の2体の間に槍を突き入れて腹部を切り裂く蒼龍。

 素早い槍さばきにドラゴニュート達は為す術無く腹部を切り裂かれ後退する。

 そこに追い打ちをかけるように金獅子、銀狼、黄豹が踏み込んで袈裟懸けに斬り込む。


 白狐は口を大きく斬ったドラゴニュートを攻めたてる。

 素早い剣閃にハルバードでの守りが追いつかなくなったドラゴニュートは体の至る所を切り刻まれて血だらけになっている。

 やがて腕1本を斬り飛ばし片腕にされたドラゴニュートはハルバードの取り回しも効かなくなり首を刎ねられて地に伏した。

 金獅子達が袈裟懸け斬りしたドラゴニュート達もざつまくりと胸元から腰にかけて切り裂かれ倒れて行く。

 蒼龍に腹を割かれた最後の1体は蒼龍の顔面への刺突を回避出来ずに頭が爆散した。

 これで残りは5体。

 ハルバードを振るって斧部分で斬りかかってきたドラゴニュートを白狐は冷静に受け流し、その首に一閃。しかしドラゴニュートもそれは読んでいたようで首を大きく引き切断は免れる。

 しかし喉元をぱっくりと割られた為に息をする度に喉の切り傷から泡を吹く。

 それでも果敢に攻め込んでくるドラゴニュートだったが、最後はその胴体を上下に分けられ死亡した。

 銀狼に襲い掛かってきたドラゴニュートも突き出したハルバードを片手の剣で上に弾き出され、もう片方の剣で腹部を大きく斬られて沈んでいった。

「雷撃断頭斬!」

 大きく跳び上がり大剣を振るった金獅子。

 その攻撃自体はハルバードによって防がれてしまったが、雷撃を受けたドラゴニュートは体が痺れてしまい、次の攻撃をもろに受けることとなった。

 高く上げた腕ごと首を刎ねられてその場に倒れ込む。

 蒼龍は自身に向かって突き出されたハルバードの周りを三叉の槍でグルグルと回すように跳ね上げ、ドラゴニュートの腹部に大穴を開けていた。

 黄豹はその手数の多さを存分に発揮して、防御が追いつかなくなったところを首を刎ねてドラゴニュートを打ち倒した。


「魔人化していないドラゴニュートでもここまで強いとは思いませんでしたよ。」

 と溢す白狐。

 苦戦はしていないが、明らかにリザードマンらを相手取るよりも時間がかかっていたからそう言ったのだろう。

「うむ。攻撃が弾かれたら反撃がくると分かっているような回避動作をしておったな。」

「ハルバードの一撃もかなり重かったぜ。」

「ん。強かった。」

「そうであるな。我は普段から槍対槍の稽古をしていたからなんとかなったが、ハルバードは槍とは違い薙ぎ払いなども出来るからな。今までに無い武器を使う敵は厄介だな。」

 ルイチェンの話では竜魔人は10体程度とのことだったが気を引き締める必要がありそうだ。

 ところでこの10体のドラゴニュートの死骸をどうするかで意見が割れた。

 竜ではあるが人間なのだから食料には出来ない派と、ドラゴンなのだから食料になる派で分かれたのだ。

 切り分けてしまえば肉ではあるが、やはり人の姿型をしている時点で俺も食料とは思えなかった。


 そんな討論をしていた時、待ちに待った瞬間がやってきた。

 俺が抱えていたドラゴンの卵が孵ったのだ。

 殻の中から必死に殻を割って出てこようとしている。

 もう皆食料か食料じゃないかの話題も途切れ、卵に集中している。

 ほらもうちょい。頑張れ。もう少しだぞ。

 俺は心の中で応援した。

 やがて殻は上下に綺麗に割られ、卵の中からは黄金色に輝く鱗を持った子竜が産まれたのだった。

 大きな瞳に小さいながらもパタパタと動かす翼がキュートだ。

 1番最初に目が合ったのは俺で、そのあと周りを見渡すように首を捻る子竜。

「ぐぎゃっ」

 軽く一鳴きすると小さい翼をはためかせて俺の膝の上に乗っかってきた。

 これはヒヨコなどで見られる刷り込みだろうか。1番最初に目にした者を親だと認識するあれだ。

「ぐきゃっぐきゃっ。」

 何かをねだっているようにも見える。

 そうか。飯か。

「かわいいですねぇ。ちっちゃくて。」

「ん。癒し。」

「まずはご飯ですかね?」

 女性陣はすでにメロメロだ。

「竜の食事としてならこのドラゴニュートの肉もありじゃないか?」

 俺が提案すると皆納得してくれた。

 早速適当な大きさに切り分けて骨を抜いた状態の肉を子竜に与えてみる。

「おぉ。食べたぞ。」

「元気だな。勢い良く食べてるぞ。」

「うむ。クロよ。肉が足りんぞ。」

「お前らも手伝ってくれよ。肉を骨から削ぐのも大変なんだから。」

 とワイワイやっている俺達。

 後ろが騒がしいと思ったら帝国軍兵士達がジャイアントリザードに攻め込まれていた。

 まぁジャイアントリザード程度なら問題ないだろう。

 俺は子竜へのエサやりを継続する。

「そうだ。名前。名前付けてあげましょうよ。」

 白狐が言い出した。確かにいつまでも名無しじゃ可哀想だ。

「コドラゴンとかでいいんじゃないか?」

 金獅子が適当な名前を口にする。

「いつまでも子供じゃないんですからそんな安直な名前じゃダメですよ。」

 バッサリ斬る白狐。

「そもそも雄なのか?雌なのか?」

 銀狼が言うので確かめてみた。

「雄だな。付いてるから。」

「雄か。なら強そうな名前が良いな。金色だからゴールデンドラグーンとかどうだ?」

「長いですよ。もっと呼びやすいのがいいです。」

 これもバッサリ斬る白狐。

「ドラ吉とか?」

 蒼龍がボソリと言うが白狐にスルーされた。

「んー。浮かばない。」

「ここはやっぱりずっと温めて下さったクロ様に名付けて貰うのが宜しいのでは?」

 緑鳥に名指しされてしまった。

「名前か…ドラゴンだからドラかゴンは入れたいよな…ドラ…ン。ドランでどうだ?」

「ドランですか。呼びやすくていいですね。」

「ん。可愛い名前。」

「ドラ吉、ドラ助、うむ。ドランの方がいいな。」

「よし、決まりだ。お前は今日からドランだ。」

 まだドラゴニュートの肉を食っていたドランを掲げて宣言する。

「ぐぅきゃ!」

 わかったと言っている気がする。

 まぁ呼び続ければそのうち自分がドランだと認識するだろう。

 そんな事よりドランの食欲が凄い。片手で抱えられるくらいのサイズなのに何処に消えていくのか10体のドラゴニュートの肉を全て平らげてしまった。

 ちなみに内臓系は下処理とか大変だから除いてはいるが、それでも大人10体分となればかなりの量である。

 こりゃエサの確保が大変そうだな。


 ゆくゆくは俺達を乗せて飛んでくれたら移動が楽でいいな。でもドラゴンってどのくらいで成竜になるんだろうか?

 子供の今でもこれだけ食べるんだ。成竜になった時が恐ろしいな。

 とまぁ色々と問題はあるだろうが、黄金竜のドランが仲間入りしたのだった。


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