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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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110話 進軍8

 洞窟で二晩過ごした次の朝、外は昨日までの大雨が嘘だったかのような快晴だった。

 ようやく足止めから解放される。

 まぁ足止めされてたおかげで紫鬼は爪王形態を手にし、桃犬達も戦う手段が増えたから良しとして、朝食のからあげ付きカレーを食べ終えた俺達は早速先に進む事にした。

 道中遭遇するのはコモドドラゴンやジャイアントリザードの他にリザードランナーと言う二足歩行で走るトカゲもいた。

 リザードランナーはその脚力で繰り出してくる蹴りが強烈で、帝国軍兵士達の重装兵の大楯を蹴り脚の形に凹ませるくらいの威力があった。

 それに二足歩行で走り回る為、回避能力にも優れており、ヒットアンドウェイを繰り返してきた。

 大きい個体で全長2m程度のオオトカゲで、尻尾を器用に使ってバランスを保っていた。

 となれば、まずは尻尾を切り落とすのが1番だろう。

 金獅子、銀狼、白狐が尻尾を切断し、バランスを崩して四足歩行になったところを蒼龍、黄豹が突き殺す。

 桃犬達も奮闘しており、燃える石礫の攻撃はかなり効果的だった。打撃ダメージだけで無く、着弾した箇所が燃え上がるという二段構えの攻撃はかなり有用だった。

 シュウカイワンの氷の刃を風で飛ばす攻撃も確実にリザードランナー達を切り刻み、生活魔法の組み合わせとは思えない効果を発揮していた。

 ちなみに俺はドラゴンの卵を抱えている為、戦闘には不参加だ。

 紫鬼は緑鳥の護衛として、先頭から抜けてきたリザードランナーを殴り飛ばしていた。


 リザードランナーの群れは大体50体程度だっただろうか。

 気がつけば大量のトカゲの死骸があっちこっちに広がっていた。

 トカゲの肉も大切な食料になるので、俺達は回収して影収納に放り込んでいく。

 帝国軍兵士達も自分達で倒した分は回収していた。

 いつも携行食ばっかりじゃ飽きるだろうし、たまにはトカゲ肉でも食べて鋭気を養っておいて貰いたいところである。

 その後もトカゲ種は大量に襲ってきたが、なかなか竜、つまりドラゴンには遭遇する事無く進んでいった。


 昼食後しばらく進むと右手に大きな岩場のあるエリアに着いた。

 これは以前ワイバーン討伐の依頼を受けた場所に似ている。

 と、案の定ワイバーンが空を旋回していた。

 ワイバーンも翼竜と言う亜竜の1種である。

 前回の依頼の際は売れる爪しか採取しなかったが、蒼龍が言うにはワイバーン肉もなかなかいけるらしい。

 龍の谷での主な肉料理と言えばワイバーン肉を使ったものだったらしい。

 ワイバーンは崖上に巣を作る。今見えているだけでも数十匹のワイバーンが空を飛び回り、数十匹が巣で休んでいた。

 これは大量に肉を仕入れるチャンスだ。

「ワイバーンとは言え亜竜の1種だ。ここは王化して一気に攻めよう。」

 金獅子が言うので皆王化する事にした。

 俺はドラゴンの卵を温めている為、先頭には不参加だ。緑鳥達と待機する。緑鳥達の護衛として黄豹が残り、後の面々は王化する。

「王化!獣王!」

 金獅子が王化し、右手中指のリングにはまる金色の王玉から金色の煙を吐き出しその身に纏い、その煙が晴れると獅子を想起させる兜に金色に輝く王鎧を身に着けた獣王形態となる。

「王化!牙王!」

 銀狼が王化し、左手中指のリングにはまる王玉から銀色の煙を吐き出しその身に纏い、その煙が晴れると狼を象った兜に銀色に輝く王鎧を身に着けた牙王形態となる。

「王化!龍王!」

 蒼龍が王化し、首から下げたネックレスにはまる王玉から蒼色の煙を吐き出しその身に纏い、その煙が晴れると龍の意匠が施された兜に蒼色の王鎧を身に着けた龍王形態となる。

「王化!破王!」

 白狐が王化し、右耳のピアスにはまる王玉から真っ白な煙を吐き出しその身に纏い、その煙が晴れると狐を想起させる兜に真っ白な王鎧を身に着けた破王形態となる。

「王化!鬼王!斬鬼!」

 紫鬼が王化し、左足にしたアンクレットにはまる王玉から青紫色の煙を吐き出しその身に纏い、その煙が晴れると額に1本の角を持つ鬼を象った兜に青紫色の王鎧を身に着けた鬼王形態となる。

「王化!不死王!」

 黄豹が王化し、右足のアンクレットにはまる王玉から黄色の煙を吐き出しその身に纏い、その煙が晴れると豹を想わせる兜に黄色の王鎧を身に着けた不死王形態となる。

「王化!聖王!」

 緑鳥が王化し、額に輝くサークレットにはまる緑色の王玉から緑色の煙を吐き出しその身に纏い、その煙が晴れると鳥をイメージさせる兜に緑色の王鎧を身に着けた聖王形態となる。

「王化!爪王!」

 紫鬼は早速爪王形態を試すらしい。

 左腕のバングルから灰色の煙が吹き出し、そのまま左腕に吸い込まれるように消えていくと、灰色の鉤爪付きの籠手を身に着ける。


「飛剣・鎌鼬!」

「双飛斬!」

「水撃・龍翔閃」

 白狐と銀狼の振るった剣から斬撃が飛び、蒼龍の突き出した槍から高圧水流が飛び出し、空を飛ぶワイバーンの翼を傷つける。

 翼に傷を負ったワイバーン達が次々と落下してくる。

 そこを金獅子と紫鬼が斬りまくる。

 やがて巣で休んでいたワイバーンも加わり空から鋭利な爪を用いて襲い掛かってくる。

「アイス!ウィンド!」

「魔素よ燃えろ、燃えろよ魔素よ。火炎となり給え。ファイア!魔素よ集まれ、集まれ魔素よ。岩石の力へとその姿を変えよ。魔素よ固まれ、固まれ魔素よ。我が目前の敵達に数多の石礫となりて打倒し給え!ストーンショット!!」

 桃犬達も襲い掛かってくるワイバーンに向けて魔法、魔術をぶっ放す。

 それでも近寄ってきた奴らには黄豹が刃付きトンファーを振り回して撃退していく。

 ワイバーンの群れは近くにいた帝国軍兵士達にも襲い掛かっているが、いつもの重装兵が楯で防ぎ、槍兵・歩兵が後ろから刺す戦法でどうにかやり合っている。

 勇者パーティーの働きは凄まじく、ドリストルの魔術で打ち落とし、ライオネルとバッシュがとどめを刺す戦法でバッタバッタとワイバーンを倒している。

 流石は勇者を名乗るだけはあってBランクの魔物程度では相手にならないらしい。

 特例兵士の2人も頑張っていた。

 空から舞い降りてくるワイバーンの攻撃をあの額の左から右の頬に抜ける大きな剣創を持つ2mの巨漢が大楯で防ぎ、その後ろから細剣を持った金髪美女が突き殺していく。

 時には大楯を持った大男が手斧で斬りかかりその翼を切り裂いたりもしている。

 バルバドスは戦闘には参加せず、後方から兵士達に檄を飛ばしていた。

 あれならワイバーン相手でも十分戦えるだろう。


 ワイバーン戦で脅威となるのは上空から滑空してきてその鋭い爪と嘴で切り裂かれることだろう。

 その点、まずは翼を傷付けて飛べなくする戦法は大いに相手の攻撃手段を減らす手法として有効だ。

 だが地に降りたワイバーンが無力かと言えばそんな事は無い。

 やはり嘴での攻撃は楯に穴が空く程に強力だ。

 しかし王化した6人にとっては大した脅威にはならず、バッタバッタと打ち倒していく。

 なかでも白狐の剣技は凄い。

「抜刀術・飛光一閃!」

 高速で振り抜かれた刀により一閃はワイバーンの首をを斬り飛ばす。

「抜刀術・閃光二閃!」

 さらに抜き身の白刃・白百合を目にもとまらぬ速度で振り上げると迫って来ていたワイバーン2匹を1度に斬りたおす。

 続いて白狐は跳び上がり刀を振るった。

「抜刀術・発光三閃!」

 その剣閃が通った先ではワイバーン3匹が1度に斬られて地に伏せた。

 超高速で振るわれた刀は一瞬のうちに3回も敵を斬り刻んでいたのだ。

 超高速の抜刀術は白狐にしか扱えない妙技である。

「食らえ!雷撃断頭斬!」

 金獅子も雷撃を纏った大剣での一撃で斬ったワイバーンだけでなく周りのワイバーンにも雷撃が広がり多くのワイバーンを打ち倒していく。

風爪(ふうそう)!」

 紫鬼も左手の鉤爪を使って風の刃を生み出し、ワイバーンをバッタバッタと斬り殺していく。

 この戦闘中に爪王の籠手も随分と使い方に慣れたようだ。

「双狼刃!」

 銀狼も義手であることを忘れるくらい、スムーズに双剣でワイバーンを斬っていく。

「龍覇連突!」

 蒼龍も繰り出す槍の連続突きでワイバーンの体に穴を開けていく。

 ワイバーンはランク的にはBランクだったはずだが、王化した白狐達には肩慣らし程度の相手だったらしい。

 戦闘は30分程度で収束し、残ったのは山のように積み重なるワイバーンの死骸であった。

 蒼龍が言うには翼の部分も焼けばパリッとして美味いらしい。

 だから全身食べられるらしいので、皆は影収納に入る大きさに分断していく。

 切り分けられた肉を俺はせっせと影収納に収めていく。

 これで結構な量の肉が確保出来た。

 今晩はワイバーン肉で生姜焼きでも作ろうかな。


 それにしてもこのドラゴンの卵、どうにかしないと一向に俺は戦闘に参加出来ない。

 早く孵らないものかね。

 そもそも人肌で温めて効果があるのかがわからない。

「おーい。早く孵らないと卵焼きにして喰っちまうぞー。」

 卵に声をかけてみるがうんともすんとも言わない。まぁ当たり前か。

 試しに軽く叩いてみたが、なんと内側から殻をノックする音が聞こえた。

 確実に成長しているようだ。これなら孵る日もそう遠くないかもしれない。


 その日の夕食は早速ワイバーン肉を焼いた。

 臭み消しの為に生姜焼きにした。

 翼の部分は軽く塩コショウしてそのまま焼いた。

 翼の部分は蒼龍の言うとおりパリッとしていて面白い食感だった。

 とりような脚は流石に食べられないと思って捨てようとしたのだが、蒼龍に止められた。

 脚すらも焼けば食えるそうだ。

 ひとまず鉄板で焼いてみた脚の部分は見た目的には食欲をそそらない感じだった為、白狐と黄豹、緑鳥は食べるのを拒否した。

「流石にゲテモノ料理はちょっと。」

「すいません。わたしもちょっと遠慮しておきます。」

「ん。気持ち悪いからいらない。」

 金獅子、銀狼は恐る恐る食べていたが、食べ始めるとサクサクしていて美味かったらしく、もっと焼くようにせがまれた。

 俺も食べてみたが、確かにサクサク食感はお菓子みたいでなかなか美味かった。

 生姜焼きの方は見事に臭み消しに成功して、とても食べやすい肉になっていた。

 こちらは皆、評価は上々だった為、まて今度作ろうと思う。


 と、まぁ遭遇する敵が多いため、遅々として進まない状況ではあるが、俺達はワイバーンの巣の下で一晩明かす事にした。



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