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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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108話 洞窟

 昼頃になって右手に大きな岩山が見えてきた。

 岩山は高く先を見通せない状態だ。

 左手は海の為、あの岩山の方向に進むと必要がある。

 少し進むと岩山の麓に着いた。

 この岩山には、巨大な洞窟の入り口が空いていた。

 高さにして10m程度はありそうなデカイ入り口を持つ洞窟であるが、どうやら先に地下に続く道があるようで、涼しい風が吹いている。

 と、ここで想定外の雨が降り始めた。

 そもそもが大陸中央の龍鳴山脈の高度が高い為に人族領で発生した雲は魔族領にまでは届かず、魔族領は極端に雨が少ない地域である。

 だが、時には雨も降ることはあり、その際にはバケツを引っくり返したような強い豪雨となる。

 何度かその暴風雨には遭遇しており、その都度野営用のテントの中でひたすら雨風が止むのを待ってきたが、今回はせっかく大きな洞窟があるので、帝国軍兵士達も合わせてその洞窟内に入り、雨宿りとする。

 と、洞窟の奥を見に行っていた金獅子と銀狼が戻ってくる。

「この先も50mくらいは洞窟が続いてるな。しかも1番奥には地下に続く下り坂があった。」

「うむ。洞窟の大きさ敵にもドラゴンの巣になっている可能性もあるな。」

 との事。

 いつも暴風雨は3、4時間は続いた。

 ひとまずは昼メシにしてから、洞窟の奥に進んでみるのもありかもしれない。

 俺は皆の分のカレーライスを準備しながらそう思ったのであった。


 昼食中も洞窟の地下についての話が続いた。

「ドラゴンの巣になっていた場合、ここで先に潰しておいた方が後が楽だろ?」

「うむ。敵将との対戦中に後ろから攻められても困るしな。」

「まぁまだドラゴンの巣と決まったわけじゃありませんし、ひとまずは奥に行ってみてって感じですかね。」

「ん。ドラゴン。楽しみ。」

「あぁ。竜肉は美味いからな。我が保証しよう。」

 もうドラゴン=食料である。まったく皆、食欲大勢で作るこっちとしては何出しても美味いと行って貰えて助かるが、ドラゴンを食料として見るなんて龍人族以外にはいないだろうな。そもそもが人族領では遭遇する確率も低いだろうし。

「では昼食後は洞窟の奥に進んでみましょうか。」

 白狐がそう締めくくり、俺達は昼食の後片付けをしてから洞窟の奥へと進むことになった。


 洞窟は高さ8m程度を維持しながら、ゆったりと地下に降りていくスロープのような作りになっていた。

 この高さがあれば、確かにドラゴンも入れそうである。

 100mも進めばすっかり明かりの届かない地下空間となる。

 俺はヨルのおかげで夜目が利くので光源はさほど必要ないが、皆がそうとは限らない。

 そこで俺は影収納から3本の松明を取り出して金獅子、銀狼、紫鬼に手渡した。

「松明まで持っているとは準備がいいな。」

 金獅子に言われたので返事をしておく。

「これは白狐が旅支度として購入しておいてくれた物だ。まだまだ在庫はあるから安心してくれ。」

「うむ。頼りにしているぞ。クロ。」

 空いた片手で肩を叩かれる。金獅子は力が強いからちょっと痛い。

 ちなみにワンリンチャンとシュウカイワン、それに桃犬は洞窟の入り口付近で帝国軍兵士達と一緒に待機して貰っている。

 さすがにドラゴンとの戦闘になる可能性が高い場所に3人を伴って入る必要はないだろう。

 地上で何かあれば水晶で連絡を貰う事にしてある。

 やっぱり便利だな。通信用の水晶。もっと買っておくべきだったか。まぁ今のところ足りない状況にはないからいいか。

 そんな事を考えながらさらに先に進むとT字路になっていた。

 右か、左か。どちらに進もうか。

「こう言う時は左回りを意識するといいんだぜ。」

 銀狼が言う。

「何で左回りなんだ?」

 俺は疑問をぶつける。

「皆だいたいが右利きだろ?左回りなら壁と反対側に武器が来る。唐突の戦闘にも対応しやすいって事だ。」

「なるほどな。」

 納得した俺達は左の道を行く事にした。

 道はずっとなだらかな下り坂になっており、時折左カーブしながら先へと続いていた。

「これどこまで続いてるんですかね?」

「さぁ。まぁ行けるとこまで行こうや。」

 白狐がもっともな疑問を投げるが金獅子達は先に進む気満々である。


 特に何かに出くわす事も無く1時間近く進んだ先でようやく3頭のコモドドラゴンに遭遇した。

 3頭並んでも余裕の通路であるから相当広い事がわかるだろう。

 コモドドラゴンは金獅子、銀狼、白狐が一撃で屠っていたが、通路はまだ先へと続いている。

 一応外の様子が気になったので水晶で連絡してみたが、まだ滝のような雨は続いているらしい。

 まだ進み始めて1時間だ。もうちょい先に進んでみようと言う事で、俺達は通路を進む。

 そして遂に通路の終点にやってきた。

 通路の終点には金銀財宝の山と金色に輝く鱗を持った6m程度のドラゴンが待っていた。

 四つ脚で立つトカゲタイプのドラゴンだった。

 前にヨルも言っていたが、ドラゴンなどの強者は光り物を集める習性があるという。

 あれも金色のドラゴンが収集したモノの山だろう。

 近付く俺達に気付いた金色のドラゴンは早速臨戦態勢だ。

「龍鳴山脈で見るドラゴンと同程度の大きさだな。」

 蒼龍が言う。

「あの程度の大きさなら我1人でも問題なかろう。」

「いや、ちょっと待って下さい。蒼龍さんはドラゴン退治に精通しているでしょ?ここはドラゴンと対峙したことがない人が訓練がてら戦う事にしましょうよ。」

 白狐が言うのでドラゴンと対峙した事の無い紫鬼と黄豹、それにヨルが行く事になった。


「ん。王化。不死王。」

 黄豹が王化し、右足のアンクレットにはまる王玉から黄色の煙を吐き出しその身に纏い、その煙が晴れると豹を想わせる兜に黄色の王鎧を身に着けた不死王形態となり金色のドラゴンに向かって駆け出す。

「王化!鬼王!剛鬼!」

 紫鬼が王化し、右腕にしたバングルにはまる王玉から赤紫色の煙を吐き出しその身に纏い、その煙が晴れると額に2本の角を持つ鬼を象った兜に赤紫色の王鎧を身に着けた鬼王形態となり金色のドラゴンに向かって駆け出す。

 最後に俺も王化する。

「任せたぞ。ヨル!」

『あぁ。ワシに全部任せておけ。』

「王化!夜王!!」

 ヨルが俺の体の中に入り、左耳のピアスにはまる王玉から真っ黒な煙を吐き出しその身に纏う。

 その後煙が晴れると猫を思わせる兜に真っ黒な全身鎧、王鎧を身に着けた夜王形態となる。

 俺は体の制御権を手放した。

 ヨルは影収納から主力武器である黒刃・右月と黒刃・左月を取り出すと2人に合わせて金色のドラゴンに向かって駆け出す。


 先制攻撃は金色のドラゴンだった。

 喉が大きく膨れたと思ったら巨大な口を大きく開き、炎のブレスを吐いてきた。

 洞窟という限られたエリア内での炎のブレスは、瞬く間に洞窟全体を覆い尽くす。

 しかし、そんな炎など意に介さず黄豹が突っ込んで行く。

 続く紫鬼も顔面を両腕で覆い火炎の中に突き進む。

 ヨルも合わせて炎幕の中を突っ切る。

 まさかブレスを気にせず突っ込んでくるとは思ってもみなかっただろう金色のドラゴンはヨル達が肉迫すると慌てて左腕を振るって来た。

 しかしそこはもう黄豹の攻撃範囲である。

 跳び上がった黄豹が刃付きトンファーを振り回し、ドラゴンの顔面を切り刻む。

 そして振り下ろされた左腕は紫鬼ががっしりと掴み、背負い投げに移行する。

 6mもの巨体をものともせず、紫鬼は金色のドラゴンを投げ飛ばす。

 地面に叩き付けられた金色のドラゴンに向かってヨルがナイフを振り上げる。

 投げられたことで腹を見せる事になった金色のドラゴン。

 その腹部にヨルがナイフを突き立てる。

「グオォォォォオ!」

 苦しげに金色のドラゴンが吠える。

 いつまでも腹を見せてはくれない金色のドラゴンは立ち上がると巨大な口を開きヨルに噛み付こうとしてくる。

 そんな金色のドラゴンの脚部を狙って黄豹がトンファーを振るう。

 左脚を傷付けられた金色のドラゴンが膝を突く。

 その拍子にヨルを狙っていた顔が上にあがり、ヨルに喉元を見せる形になった。

 ヨルは左右のナイフを振り回し金色のドラゴンの喉をズタズタに切り裂く。

 その間も紫鬼が金色のドラゴンの腹部を殴り続ける。

 尻尾を振り回し紫鬼を遠ざける金色のドラゴン。

 体勢を立て直して再びブレスを吐こうと喉を膨らませるが、先程のヨルの首元への攻撃により穴が空いたのか、首筋から炎が吹き出しブレス攻撃は不発に終わった。

 それでも金色のドラゴンは負けじと両腕を交互に繰り出し、隙あらば噛み付きを行う為に首を伸ばしてくる。

 そんな両腕を掻い潜り、金色のドラゴンの懐に入った黄豹がトンファーを振り回してその首筋をさらに切り刻む。

 狼狽えて後退した金色のドラゴンに向かってヨルは跳躍し、顔面をナイフで切り裂く。

 懐に入った紫鬼がそのボディに向けて拳を突き入れる。

 戦闘時間にして10分といったところだろうか。

 最後には金色のドラゴンが地に伏せ動かなくなった。

 終始ヨル達は攻めの姿勢を崩さずにドラゴンを圧倒したのであった。


 王化を解いた俺達は金色のドラゴンが集めた金銀財宝を物色していた。

 どれもこれも輝く石や金の装飾が施された短剣、金銀の装飾が施された鏡など、高価な品ばかりだった。

 どう換金するかは悩みどころだが、俺達はそれらを全て影収納に入れて持ち帰る事にした。

 もちろん、金のドラゴンについても肉を切り分けて影収納に入る大きさにして、収納した。

 と、金銀財宝の後ろに隠すように1つの大きな卵が転がっていた。

 サイズ的には両腕で抱えて持つ程度の大きさだ。

「これってこの金のドラゴンの卵ですよね。」

「どうする?置いておいても親もいないドラゴンじゃ生きてはいけないだろうよ。」

「持って帰ってみるか?子供のうちから育てれば騎竜にする事もできるかもしれんぞ。」

「この大きさなら結構な量の卵焼きが出来るぞ。」

「喰うのかよ。まぁそれもありかもな。」

「ではひとまず持ち帰りましょう。」

『生き物は影収納には入れられんぞ。持って歩くしかない。』

「んじゃひとまず俺が持つよ。」

 と言う事で俺は卵を抱えて来た道を戻っていった。


 ちなみに最初の分かれ道を右に行った所は100mもしたら行き止まりになっていた。左を選んで正解だった。

 地上に戻っても雨は勢いを弱める事もなく、俺達はその日はこの洞窟で一晩明かす事になった。

 帝国軍兵士達が一緒にいても十分な広さがある。さすがはドラゴンの巣である。

 俺達は蛙肉を塩コショウで焼いたものを夕食にしながら持ち帰った卵について話をする。

「やっぱり温めたほうが孵りやすくなるんでしょうね。」

「温めるったってどうすりゃいいんだ?」

「抱えて寝るしかないだろうな。」

「よし。クロよ。任せた。」

 金獅子の一言で俺が抱えて眠る事になってしまった。

 まぁ無事孵化するかもわからないけど、ひとまずは抱いて寝る事にした。

 さて、無事にドラゴンの卵は孵るのか。

 ちょっと楽しみではある。


 そんなこんなで1日雨に降られた俺達は洞窟内で一晩過ごすのだった。


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