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黒猫と12人の王  作者: 病床の翁


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107話 朝食

 久々に長く続く陸地を見た。

 そこは土など見えない石畳の癖に所々で木々が生い茂り緑が見える、そんな土地だった。

 なだらかに上昇していくような丘になっており、地平線が遠い。

 遠くには山も見える。岩肌に木々を付けた巨大な山々だ。あそこを昇る事になるのだろうか。

 そらにしても所々に岩山があるものの、開けた土地である。

 魔物との遭遇率も上がりそうだ。


 俺達は早速シュウカイワンの案内で進み始めようとまずは朝食の準備をする。

 やはりあの山を目指す事になるらしい。

 そんな所にエントリーしてきたのはジャイアントトードの群れである。

 水辺が近いからか、その数が膨大だ。

 ジリジリとにじり寄るそいつらは100体はいるだろうか。

 朝の日差しを浴びて活動的になっているようだ。

 1番最初に戦闘に入ったのは1番遠くにいる帝国軍兵士達だった。

 だが海岸線に対して横に連なっていた俺達の元へも蛙達はやってくる。

 緑鳥達の護衛として紫鬼を残し、俺達は蛙を迎え撃つ。


 1番最初に動いたのは白狐だ。

「皆さん、知ってますか?蛙肉は鶏肉に近いから食べやすいですよ!」

 そんな事をいいつつ、手前に迫って来ていたジャイアントトードを一刀のもとに斬り捨てる。

 そんな白狐に続いたのは黄豹。いつもの刃付きトンファーで蛙を斬り刻む。

「ん。鶏肉好き。」

 続く銀狼も双剣をジャイアントトードに突き立てて言う。

「鶏肉じゃなくてあくまで蛙肉だからな。」

 もう朝食の準備をしていたからか、皆食事の事で頭がいっぱいのようだ。

「俺様は蛙肉も好きだぞ。」

「うむ。蛙も美味よな。」

 金獅子に蒼龍までが食事の話をする。

 皆ジャイアントトード程度じゃ食前の運動くらいにしか思っていないようだ。

 俺も両手にナイフを構えて1番手頃だったジャイアントトードに斬りつける。

「じゃあ、朝食は蛙肉でから揚げだな。皆張り切って狩ってくれ。」

 俺が言うと皆元気に返してくれる。

「「「おー。」」」

「ん。」

 相変わらず黄豹はテンションが低い。

 良いだろう。俺の特製から揚げでテンションを爆上げしてやろうじゃないか。


 蛙を狩り尽くした白狐達はその肉を回収する。

 俺は特製から揚げの下準備に入る。

 帝国軍兵士達もジャイアントトード程度では怪我人も出ていないようだ。頼もしい。

 俺はおろしニンニクとおろしショウガを準備する。

 大量に揚げるつもりなのですりおろし作業も結構かかる。

 その間に緑鳥が手伝ってくれると言うので卵を溶いておいて貰う。6kgくらい揚げるから卵も10個溶いて貰う。

 油を鍋に入れて中温くらいになるまで熱する。

 緑鳥には薄力粉と片栗粉を半々くらいで混ぜておいて貰う。

 蛙肉が届いたので、一口サイズに切って、おろしニンニクとおろしショウガ、酒、ショウユ、ゴマ油を揉み込む。

 6kgだから酒が大サジ40、ショウユが大サジ30、ゴマ油が小サジ20ってところかな。この辺りは抵当だ。

 この間に蛙肉は全て切り分けておき、次々とドデカイボールに放り込み調味料で揉むを繰り返す。

 肉を切ってる時間でほどほどに漬け込まれた状態になる為、そこに溶いた卵も入れてさらに揉み込む。

 ここで本当なら30分くらい寝かしておきたいところだが、今日はすぐに次工程に移る。

 薄力粉と片栗粉を半々で混ぜたものに、卵もまぶした蛙肉をくぐらせてから中温の油に放り込む。

 色付きが甘いうちに油から引き上げて予熱を通す。

 その間にも続々と蛙肉は油の中に投入していく。

 全部1回色が変わるまで揚げたら、今度は油の温度を高温に上げる。

 出した準に再度油の中に投入して、色がきちんと付くまで揚げていく。

 二度揚げと言う上級者向けの手順を踏んだことにより、中はジューシー、外はカリカリに仕上がった。

 俺はまだまだ揚げの作業があるため、皆には先に食っていて貰う。

 から揚げにはやっぱり米でしょって事で炊き立ての米も影収納から取り出してある。

 各々好きなだけ茶碗に盛って食べて貰う。

「おぉ。サクサクなのにジューシーだなぁ。」

「ニンニクが効いてるな。」

「うむ。ショウガも感じるな。」

「美味いぞ、クロ。ホントに鶏肉みたいだな。」

「美味しいですよ。クロさん。」

『美味いな。』

 金獅子、銀狼、蒼龍、紫鬼に白狐、ヨルと皆好評だ。ちなみに緑鳥は手伝ってくれてるから後から俺と一緒に食べる。

 さて、問題の黄豹はと言えば。

「んー。美味しい。」

 ちょっと「ん」が長かった。これはテンション上がったんじゃないの?

 かなりの自信作だっただけに嬉しさも上がる。


 そんなこんなで食事をしていたら、今度は陸地の方から魔獣が出てきた。

 コモドドラゴンにジャイアントリザードだ。確かランクはDランク。そこそこ強い奴らだが、やはり群れのサイズがデカイ。また100体くらい出てきた。

 が、先に食事を終えていた帝国軍兵士達が我先にとトカゲ達に向かって行く。

 水晶の通信でバルバドスが言って来た。

『お前達には魔人戦で世話になってばかりだからな。ここは俺達、帝国軍兵士に任せてゆっくり飯を食らうがいいさ。』

 せっかくの申し入れだ。ここは帝国軍兵士達に任せよう。

 先頭を行くのはやはりあの特例兵士の2人だったが、それに続くのは帝国軍兵士達ではなく、あの勇者パーティーだった。

 ここの所良いとこなしだったからここいらで良いとこ見せておこうって腹づもりだろう。

 俺達はトカゲ達と帝国軍兵士達の戦闘を横目に朝食を摂る。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 コモドドラゴンは見た目こそ地を這う大トカゲであるが少量ながら火を噴く為、火トカゲと呼ばれている魔物だ。

 ジャイアントリザードは3mはある巨大トカゲであり、コモドドラゴンよりも体の位置が高い。

 いずれもDランクの魔物であり、帝国軍兵士達にとっても格下の相手になる。

 鍛え抜かれた帝国軍兵士達においても高ランクのみが先の戦場でも生き残っている為、皆ランクで言えばCランク相当以上の実力者が揃っている。

 その中でも一際実力が高いのがあの特例兵士の2人だった。

 先頭を走っていた2人組は1番最初に接敵した。

 シャラマンが重装兵兼歩兵の役割を果たし、フェリオサが槍兵、歩兵の如き役割を担っている2人組だ。

 まずはシャラマンが手にした大楯でもって突進し、シールドバッシュをジャイアントリザードにぶちかます。

 ぐっと押し込んだところで、楯を持つシャラマンの背後からフェリオサが顔を出して細剣でジャイアントリザードを突く。

 シャラマンも自身の持つ楯から半身を乗り出して手斧でジャイアントリザードに斬りかかる。

 傷を負ったジャイアントリザードは激しく暴れ出すが、シャラマンは手にした大楯でもってその攻撃を見事に防ぎ、空いた隙間を狙ったかのようにフェリオサの細剣がジャイアントリザードの眉間を貫く。

 脳まで達したと思われる一撃だったが、ジャイアントリザードは止まらなかった。破壊した脳に致命的な機能がない部位だったのかもしれない。もしくはジャイアントリザードの生命力が人族領のそれより強いのか。

 いずれにせよ、暴れまくるジャイアントリザードを大楯で押さえ、出来た隙をつくように斬りかかる。

 今もフェリオサの細剣がジャイアントリザードの左目に吸い込まれるように入って行った。

 その一撃で随分と大人しくなったジャイアントリザードだったが、まだ立っている。

 そこに楯から体を出したシャラマンの手斧が光り、ジャイアントリザードの首を刎ねる事に成功する。

 が敵はまだまだ押し寄せる。

 続いてエントリーしてきたのは体調2m程度の地を這うトカゲ、コモドドラゴンである。

 コモドドラゴンはシャラマンに近づくと、炎のブレスを吐いてきた。

 フェリオサと共に自身の持つ大楯に身を隠してその炎の息を避けるシャラマン。

 時間にして5秒程度の火炎放射を防ぎきった2人は大楯の後ろから顔を出してコモドドラゴンに斬りかかる。

 皮膚が厚く思ったように刃が通らない。

 それでも2度、3度と繰り返し、噛み付き攻撃を仕掛けてくるコモドドラゴンは大楯で阻止しつつ、合間にさらなる攻撃を繰り返す。

 6回目にしてシャラマンの手斧がコモドドラゴンの首筋を大きく切断し、大量の出血を促す。

 続くフェリオサの細剣もコモドドラゴンの脳天を突く。

 2人でAランクの魔物ですら相手にしてきたのだ。今になってDランク如きに負ける道理がない。

 シャラマンとフェリオサの2人はその後も先頭を行き、次々とトカゲ達を屠っていくのであった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「魔素よ集まれ、集まれ魔素よ。火炎の力へとその姿を変えよ。魔素よ燃えろ、燃えろよ魔素よ。我が目前の敵を火炎となりて打倒し給え!ファイアボール」

 ドリストルが呪文を唱え終えると短杖の先に描かれた魔法陣より直径30㎝程度の大きさの火球が生まれ、コモドドラゴンへと放たれる。

 その一撃でコモドドラゴンは全焼。肉を焼く匂いが辺りに漂う。

 朝食の後ではあるが、携帯食しか食べていない為に肉が焼ける匂いには思わず体が反応する。

 トカゲの肉は鶏のささみ肉に似ている。ボソボソとした食感ではあるが、大切なタンパク元である。

 なにより携帯食に飽きてきている今はボソボソの鶏ささみ肉でも塩コショウだけで十分なご馳走である。

「あとで食用にする。燃やし尽くさないように注意してくれよ。」

「任せてよ。勇者様。あたしの火球は対象を焼くだけで炭にする事はないさね。」

 そう言いつつも次なる呪文を唱え始めるドリストル。

 狙うは少し間を開けた前面の敵である。

 近くに寄ってきたジャイアントリザードにはライオネルとバッシュが斬りかかる。

「はんっ!トカゲ如きが俺達に勝てると思ってんのかよ!」

「まぁ相手は野生生物だ。そこまで大きな脳みそをもっていないのだろう。本能のままに餌を求めてるのさ。」

「はんっ!誰がトカゲなんかの餌になってやるもんかってんですよね。勇者様。」

「うん。前の2人も頑張ってるようだし、ここは勇者としての僕の実力を遺憾なく発揮しようじゃないか。」

 向かってくるジャイアントリザードの頭をかち割りながら勇者様、バッシュ・クロムウェルが言う。

「流石は勇者様。惚れ直してしまいますわ。」

 やや後方に陣取るサーファも平常運転である。

 こうして勇者パーティーは前線で戦闘を繰り返したのであった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 俺達が朝食を終えて、その片付けまで完了した時、

「全て討ち取ったぞー!」

 とバルバドスが叫ぶ声が聞こえた。

 戦闘状況は見ていたが、帝国軍兵士達は危なげなくトカゲ達と対峙していた。

 トカゲ100体程度なら余裕で任せられる。

 だがこの先出てくるトカゲはかなり大型になってくるだろう。

 ドラゴンなんて見た事無いが、話を聞くだけでも体長6cm程度の巨体を振り回すと言うではないか。

 強大な力を持つ種族はそれに比例して数が少ないと言うが、どの程度数がいるかは現時点では不明である。

 帝国軍兵士達にはこの先も頑張って貰いたいところだ。


 そうこうしているうちに支度が整った俺達は、トカゲ肉の回収をする帝国軍兵士達の合間を抜けて先頭に出る。

「そろそろ出発するがいいか?」

 代表して俺がバルバドスに訊ねる。

「うむ?あ、ちと待ってくれ。今トカゲ肉の確保を急がせる。」

 と言う事で暫し待機してから俺達は南の竜魔人族の領地を進むのであった。


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