脱出出来ません!!
「特別なクエストだったみたいだけど、案外普通だったわね。ボスもカズハ一人で倒せるぐらいだったし」
私とモモ、そして、【気合のブリーフ】を履いたヒューイはマンと紅がいる窪みの端の部分まで移動した。
「普通ではないぞ。理由も分からず、余は殺されかけたんだからな」
紅の言葉にヒューイはぷりぷりと怒ってるんだけど、パンツ一丁状態の男に言われても……ヒューイも全裸よりましだと、渋々【気合のブリーフ】を履いたぐらいだし。
「災厄の獣を復活させようとしてたみたいで、主のような方を生け贄にする必要があったようです」
「災厄の獣の復活だと!? なるほど……余は特別だからな。狙われるのも仕方なかろう」
ヒューイは素直に納得してるけど、拐われたのは偶然だから。
「まぁ……災厄の獣の復活は阻止出来たわけだし、良かったんじゃない? ある意味、倒した事と同じかもしれないわけだし」
紅が言うように、咎人のボスを倒したわけだし、【クイーン】を復活を願う奴がいなくなればいいんだけど、それも他のクエスト次第かも。
「そういえば……余の知らぬ者だけじゃなく、お前も助けに来てくれたのだな」
ヒューイはマンが助けに来た事を意外そうな目で見てる。
「勝負に水を差された形だったからな。やり直すためにも助けに行くだろ?」
マンもヒューイの言葉に対して、素直に返した。
「……ふん。その勝負はまたの機会にしておく。余を拐った奴等を全員捕まえなければ、同じ事が繰り返されるかもしれんからな。許可書も……カズハとマンに渡そう」
ヒューイなら、すぐにでも勝負の再戦をすると思ったけど、そこはきちんとしてるみたい。しかも、許可書も渡すと言ってくるのも予想外。【救出作戦】の報酬だとは言わない方がいいかも。他にも色々あるんだけど……
「取り敢えず、【地上の抜け穴】でコング神殿から脱出するかな」
「涸れ井戸のロープは切れたままでしたね。他の出口を探すようにも【地上の抜け穴】の方が早いですから」
パーティーメンバーにヒューイが追加されてる事を確認。追加されてない事で、ヒューイだけ置き去りにしてしまう可能性もあるからね。そこは注意しておかないとね。
「【地上の抜け穴】を使うからね…………ってあれ? 何も起きないんだけど?」
【地上の抜け穴】を【BOX】から取り出して、使用したはずなのに何も起きない。
「【地上の抜け穴】は地面に穴が開き、その中に入れば、ダンジョンから脱出出来るようになってるはずですが……」
「待って!! 説明が表示されたんだけど……」
<戦闘時に【地上の抜け穴】は使用出来ません>
「戦闘はまだ終わってないって……どういう事?」
ボスゴリラは穴に落ちたし、咎人達はこの場から逃げ出した。ここにいるのは私、マン、紅、モモ、ヒューイの五人。ヒューイがパーティーに含まれてるから、敵扱いになるわけじゃない。
「ボスがあの穴に落ちても死ななくて、こっちに戻ってくるとかじゃないの? それでも今いるメンバーで相手するなら余裕でしょ。流石に【クイーン】なんて事は……」
バナナの月も壊したし、ヒューイの髪は落ちても、血までは穴の中に落ちてない。儀式は失敗したんだから、【クイーン】の復活はないはずなんだけど……
「……少女だと?」
窪みの穴から飛び出てきたのは私や紅と同じぐらいの女の子。ただし、その体は桃色の毛に全身を覆われ、髪の毛もピンク色で、腰にまで届く長さ。しかも、腰付近に尻尾も生やしている。咎人に尻尾はなく、顔はゴリラなんだけど、この少女の顔は人間に近い。その目は閉じた状態。