その話題は触れない方向で
「ふぅ……何とかセーフだったけど……そっちは大丈夫?」
「バナナが無数に落ちてきていたが、その声は……カズハか!? お前も余を助けに来てくれるとは。それほどまでに余の事が……モモと協力して、余を上に……いや、カズハはこの場から離れてくれ」
私の声にヒューイはすぐに反応したのはビックリだけど、モモに言った言葉だから。私を心配するよりも、そこはモモに対する労いの台詞をが聞きたかったし。
「心配ありません。主の無垢な姿はすでに見られてますから。それとも助けに来るのが遅れた事で、落ちる際に漏ら」
「言わなくていいぞ!! お前は余を引き上げる事に集中してくれ」
二人のやり取りで大丈夫なのは分かったけど、ヒューイに起きた出来事に関しては……それには触れないで置くとして……
「こっちの事は任せていいから。ボスの標的も私に代わってるから」
というのも、私が窪みの中心部に上手く着地出来たのも、バナナの月が壁となってくれたお陰かな。マンもそれが狙いだったのかは分からないけど、それを壊した事で勢いが無くなったから。
ヒューイが見たのも、バナナの月の残骸。バナナ自体が光を放っていたわけじゃなく、中に光る石があっただけで、壊すのは簡単だった。その残骸が足場になり、私の落下スピードを軽減してくれたのもある。
「ーーー!! ーーー!!」
ボスゴリラにしてみたら、バナナの月が壊された時点で儀式は失敗に終わったんだから、その原因である私を許すはずがない。怒りに我を忘れて、血が上った状態。
「そんなに怒らなくても、私からそっちに行ってあげるから!!」
私の方からボスゴリラの方へ向かっていく。ヒューイとモモがいる中心部と、マンと紅が咎人達と戦ってる場所と繋がってるのは、橋のような狭い道。
私の足だと左右に四、五歩ぐらい。ボスゴリラだと二歩ぐらいの幅。
ボスゴリラは私を迎撃するため、拳を突きだすけど、足場の狭さに踏み込みが弱くなってしまう。
「そっちにしてみたら身動きが取りにくいだろうね。私はこれぐらいあれば十分だから」
身長の差から、ボスゴリラの拳を【受け流し】をした上に、顎を蹴り上げる。
「ーー!!」
ボスゴリラは蹌踉めくけど、それだけで倒れるわけもない。こっちもそれぐらいは承知してる。
「今回はちゃんと相手をする余裕もないから」
次の攻撃に選択するのは足払い。ボスゴリラとまともに戦闘する必要はなくて、穴に落とせば終わる話だから。
「ウホッ!!」
蹌踉めいた状態の足払いは効果的で、見事に横に転がり、ボスゴリラは穴の奥底に落ちていく。
「「「「ーーー!!」」」
それを見た咎人達はボスゴリラが倒された事もあり、次々とその場から逃亡していく。
「咎人達が逃げていくって事は……これでクエストが終わりでしょ」
マンと紅が無事みたいだし、モモの方は……ヒューイを引き上げる事に成功してる。とはいえ、ヒューイは無垢な姿のまま。
そういえば、マンがパンツを破いた時用の予備として、【気合のブリーフ】をマンに買ってもらって、私の【BOX】にも入れていたはず。それを履いてもらうしかないかな。