イケメン……ではない
「謎の文字が解読出来るようになったぞ」
「そんなバナナ!! …………誰かをツッコミを入れなさいよ」
紅のオヤジギャグは無視して、【そんなバナナ】は一時的に翻訳効果を付与するみたい。
「ここに【そんなバナナ】があったという事は、この壁画を解読しろって事でしょ。私達に内容を教えてよ」
この壁画の文字が解読出来たら、【クイーン】に関する情報が少しは分かるかもしれない。
「……少し時間をくれ」
解読に時間が掛かるから……じゃなくて、紅のオヤジギャグが効いたのか、マンは口を抑えて、笑うのを必死に我慢してた。全然面白くなかったんだけど、マンはやっぱり、それぐらいの年齢?
「そこまでの反応は……こっちが恥ずかしくなるから」
紅もツッコミ待ちだったのに、笑われた事で逆に恥ずかしそうにしてるし……
「ふぅ……もう大丈夫だ。壁画の文字の解読だな。……『バナナの月が輝く時、イケメンの毛と血を捧げよ。さすれば、クイーンは復活し、その者の伴侶となるだろう』……だな」
……何だろう。ツッコミどころが満載なんだけど!?
「バナナの月というのは……三日月の事ですかね? 形は似ているといえば、似てますし」
三日月の夜? 【救出作戦】の期限が現実の三日後だったけど、その時が三日月の夜になのかも……
「それと……イケメンというのが分からないのですが、カズハ様達は知ってますか?」
【ユニユニ】の世界にはイケメンという言葉はないらしく、モモはバナナの月は予想出来ても、イケメンが何を示すかは無理みたい。
「イケメンは……男前? 格好良い男とか、ハンサムとか色々言い方があるかも。一般的にはヒューイもそれに入るかもしれないかな」
私のタイプじゃないけど、ヒューイはイケメンの部類に入るかも。【カリスマ】のスキルも所持してるわけだしね。
「という事は……拐われた人達の中で、主が一番危ないという事ですか!! 老若男女と拐われていて、咎人もイケメンの意味を分かってないかもしれませんし」
「そうなってくると、一番危ないのはヒューイになるだろうね。けど、命までは取られないみたいだから、少しは安心したんじゃないの?」
拐われたメンバーの中で、一番のイケメンがヒューイだとしても、奪われるのは毛と血。ハゲになる可能性はあるけど、【クイーン】の伴侶に選ばれるのなら、死ぬ事はないはず。
「主をハゲにするわけにはいきません。全く似合わないですし」
「そこは災厄の獣の伴侶にさせるわけには……の方がいいと思うけど?」
イケメンはハゲになっても格好良い気がするけど、ヒューイの場合は……モモの気持ちが分かるかもしれない。紅は【闘技場】時のヒューイしか知らないから。
とはいえ、モモがヒューイを助けたい気持ちがあるのは分かってるし、そのままの姿でいて欲しいんだろうね。
「まぁ……バナナの月まで時間はあるかもだけど、何が起きるかも分からないわけだから、捕まってる人達がいそうな場所へ急ごう……」
「少し待て」
私とモモ、紅も先に進もうとしてる時に、マンが引き止めてきた。【そんなバナナ】の翻訳効果には何かしらの反動があったりするわけ?
「イケメンが危険なら、私が行っても大丈夫なのか? 少しの手違いで【クイーン】が復活するかもしれないぞ」
「「「……………」」」
マンの言葉に私達は一時的に固まってしまった。マンからすれば、今の姿が格好良いと思って、キャラメイクしたんだから、そう思っても仕方ないんだよね。
「大丈夫。格好良くはないから」
「大丈夫です。アレ以外は主の方が上ですから」
直後、紅とモモはキツイ言葉をマンに投げつける事になったんだけど、私は……ノーコメントで。




