マスカラ・コントラ・マスカラ
「何を……マスカラ・コントラ・マスカラだけど?」
「マスカラ・コン……【アーツ】を発動させるための、詠唱ですか? ああ……主の拐った相手が何者かを調べるためですね」
「全然違うぞ。マスカラ・コントラ・マスカラはマスク剥ぎ取り戦。敗者はマスクを奪われるわけだ。【ライオンマスク】と【ブラックライオン】のマスクが手に入るなんて」
「モモも気にする必要ないから。そんなマニアックな言葉なんて、知ってる方がおかしいんだから」
宝箱が目当てじゃなく、【ライオンマスク】と【ブラックライオン】を狙ってたのは、マンらしいといえば、マンらしいけど……【ライオンマスク】は昔のアニメで名前ぐらいは私も知ってるぐらいだから。
「主達を拐った相手を確認は必要ですから」
「確かに……って、ゴリラ!? ……二重にマスクはしてない!?」
マンが【ライオンマスク】を剥がして、出てきた顔はゴリラ顔だった。それもマスクなのかと触れてみると、外れそうにもない。
「【ブラックライオン】の方は……ゴリラ顔だな」
次に【ブラックライオン】のマスクを外してみると、全く同じゴリラ顔が出てきたんだけど……
「ゴリラタイプの獣人は見た事ないかも。よく見ると、毛深いだけで、装備は何もしてないし……獣人ではないのかも」
私も獣人は一度も見た事がないから何とも言えないけど、一緒の顔なのはどうなんだろう? 斉藤さんの事もあって、ゴリラの時点で私としては嫌な気持ちになるから。
考えているうちに、ゴリラ二体は消滅した。素材を何一つ落とさなかったのは、マンがマスクを先に取ったからなのかもしれない。
「取り敢えず、先に牢屋を開けて、宝箱の中身を確認しましょう。彼等の仲間が来る可能性もありますから」
モモは牢屋の鍵を解錠すると共に、宝箱の中身が罠ではないかの【罠感知】で確認を始めた。
「ちょっと……この壁画に描かれてるのは、さっきのゴリラみたいな人達? それに……生け贄?」
牢屋には宝箱以外に、壁画が描かれていた。それは多くのゴリラが並んでいて、全員で誰かを運んでいる。その先には祭壇があり、それを囲うような大きな影のような存在が……その説明の文字も書かれているけど、全く読めない。
「文字は読めませんが……この壁画を見る限り、さっきの相手は咎人かもしれません」
「咎人? 何それ?」
モモは一度【罠感知】を止めて、壁画の方へ目を向けた。モモ自身もゴリラ人が何者なのか気になっていたのかもしれない。
「主の下で働くため、色々と勉強を強要されたのですが、ヒューマ国の歴史に登場する魔物とでもいうべきか……彼等はここら一体を支配していた災厄の獣である【クイーン】を崇拝していた者達です」
「災厄の獣!? 【ナイトメア】に続いて、【クイーン】というのが登場するなんて事は……」
ここにきて、災厄の獣の名を聞くとは思わなかったんだけど!! 運が良いのか、悪いのかでいえば、絶対悪いでしょ。