魔法少女ではございません
「……で、私が呼ばれたわけ? B級になるため、そこまで暇じゃないんだけどさ」
その方法は【フレンド】の紅を呼ぶ事。紅はC級だし、クエストの条件にも私が必須なだけで、受注しろとは書いてなかった。丁度、紅が【ログイン】した事を知れたのが大きい部分はあったんだけど。
「いや……昨日は私の【闘技場】の試合を見てたでしょ? それに屋台でぬい」
「ストップ!! その先は言わなくていいでしょ。ちゃんと来てやったわけだし」
紅は屋台でぬいぐるみを買ったのを誰にも知られたくないみたい。
「それは感謝してるから。それで……クエストの方は?」
とは言うものの、本音を言えば、紅じゃなくて、マンが千城院さんを呼んでくれても良かったんだけど、彼女は忙しいだろうから仕方なく……
「特別クエストなんでしょ? 勿論、参加するわ。その代わり、ちゃんと見返りは貰うから。報酬の許可書はすでに持ってるから」
見返り!? 受注した後に貰う5000Gの半分……全部欲しいとか言い出さないよね?
「冗談だけどね。特別クエストも珍しい素材を落とすかもしれないし、宝箱をGET出来るかもしれないからね。今回はそれでOKにしといてあげるから」
「そう言って貰えると助かるわ」
ここは素直に好意を受け取っておこうかな。『後から何か言ってきても無理だから』なんて言って、クエスト参加を拒否されても駄目だし……
「紅様が参加する事によって、【救出作戦】のクエストを受注完了しました。カズハ様には準備金として、5000Gをお渡しします」
「ちょっ!!」
紅の目の前で5000Gを渡したら、何て言われるか……
「【救出作戦】はダンジョンなのよね? なら、脱出用のアイテムとか、必要な物は意外と多いから。後は……昇級のためのクエストも選んでおきなさいよ」
普通にアドバイスされるだけだった。紅の事を少し誤解してたわ。
「それと……コイツは誰? いつの間に仲間が増えてるわけ? 筋肉はいつもの事だから良いとして、同じ千様のパーティーを目指す立場としてどうなの? マスク繋がりとかじゃないでしょうね?」
そういえば、紅はモモと初めて会うんだよね。【魔法少女ピーチ】のお面を付けた状態だから怪しい……じゃなくて、【闘技場】でのマスク仲間と勘違いしてもおかしくないかな?
「申し遅れました。私の名前はモモ。今回、主であるヒューイ様を助けるために同行させて貰うため、パーティーに参加させて頂きました」
モモは紅に頭を下げ、自己紹介した。勿論、【魔法少女ピーチ】のお面は外してない。
「なるほどね。だから、貴女もマスクをしてるわけだ。同行する理由は分かったけど、役に立つわけ? メイド服を着てるんだから、メイドなのよね? 守る奴が増えるのは面倒でしょ。復活するかも分からないんだし」
確かにNPCが死んだ場合、冒険者みたいに復活出来るかどうかは分からないんだよね。多分、復活しない気がする。紅はモモが足手まといになるのを考慮してるのかも。
「私の心配をしてくださってるんですね。ありがとうございます。それも問題ありません。主に仕える以前まで……」
もしかして、モモは【闘技場】で闘技者をやってた? それも【魔法少女ピーチ】のお面をしてるから、職業は【魔法師】のどれかでしょ!!
「名のある盗賊でしたので。宝箱の鍵や罠の探知等はお手のものです。気配も消す事も」
「「魔法少女じゃないの!!」」
私と紅は同時にモモへのツッコミを入れてしまった。紅も【魔法少女モモ】の事を知ってたみたい。