寝る姿はいつもこれなんだが?
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「安心してください。牢屋にいるのはマン様だけです。野次、罵倒を投げてくる悪党はいませんので。それよりもヒューイ様の言葉の方が嫌かもしれませんね」
モモは地下二階にある牢屋と案内してくれてる。牢屋は犯罪者を閉じ込める場所で、前を通るだけで罵詈雑言を投げられる……なんて事はないらしいんだけど、モモ自身がヒューイの事を罵倒してるような……
「牢屋の中はこんな風になってるんだ……しかも、誰も兵士がいないのはマンしかいないからね」
地下二階に到着すると左右に牢屋が連なっている。牢屋の中は地下という事もあって窓はなく、あるのは簡易トイレと小さなベッド。明かりは廊下の松明のような物があるだけ。
流石にマンもこんな場所に長くいないでしょ。お腹は疑似的にも満たされるかもしれないけど、トイレの方はここでしたら、現実の方で漏ら……
「マン様は奥の牢屋にいます。ちゃんと食事は運んでいるので安心してください」
食事を用意してるって事は、本当に【ログアウト】せずにいるわけだよね。いや……マンには【サバイバル】のスキルがあるんだった。【ログアウト】しても、牢屋から再開する事は可能なわけで……
「ゴメン。牢屋の中で待たせたみたいで……」
マンが牢屋で少しの間でも待っていたのは事実だから、そこは謝っておこうと思ったんだけど、言葉が止まってしまった。止まったのは私だけじゃなく、モモに関しては固まった状態。
「起きなさいよ!! そんな姿で……本当に捕まりたいわけ!!」
「ん……その声はカズハか? ふぁ〜……ぐっすり寝れた気がするぞ」
マンは【ログアウト】せず、【ユニユニ】の世界の長くで熟睡してたみたい。しかも、ベッドが小さかったのか、地面に大の字で寝転んでいた。そこまでは許せる範囲なんだけど……
「そこは【ログアウト】してから眠りなさい……とまでは文句は言えないけど、全裸で寝るのは駄目だからね!! さっさとパンツを履いてよ。モモの目に毒でしょ」
「寝る時はいつも全裸だからな。牢屋の中だから大丈夫だと思ったんだか……」
マンは全裸姿で寝ていて、勿論モザイクで最悪な場面は回避……といいたいけど、モモに関してはモザイクが見えてるかどうか……凝視してる感じがモザイクなし状態な気がしないでもない。
「私も大丈夫です。主のよりも大き」
「ストップ!! その先は言わなくてもいいから。ヒューイの沽券に関わるかもしれないし、知りたくもないというか……」
モモはヒューイの側近だから、見る場面があってもおかしくないけど、やっぱり見えてたわけね……
「そこは一旦置いといて……残念な話なんだけど、許可書を得るためにもヒューイを助けに行かないと駄目になったから。マンも協力して欲しい」
「勿論だ!! 私達としても、勝負の邪魔をされたわけだからな。ライバルとしても、ここは助けに行くべきだろ」
いつの間にか、ヒューイはマンにとってのライバル的存在になってるんだけど……これをブラックが聞いたら悲しむんじゃないの? そもそも、何のライバルなんだか……
それにパンツを履きながらの言動だから、格好もついてないし……
「そうと決まれば、牢屋から出るとするか……あぁ」
マンは勢いよく牢屋を出るつもりだったはずが、力が抜けたように膝をついたと思ったら、ギュルルルル……とお腹の鳴る音が聴こえてきた。
「お腹が空いた。先に【闘技場】の屋台で何かを食べても……中層にも何か食べ物屋があったような……」
マンはずっと【ユニユニ】にいたせいで、お腹が空いたみたい。
「いやいや……【ユニユニ】に一日いたんだったら、現実の方がお腹が空いてるでしょ。こっちはそう思わせるだけ。【ログアウト】して、食事をしてきた方がいいから」
VRゲームをする時に注意するべき事の一つだからね。【ログアウト】した時に体に負担が掛かるのは極力減らすべきだからね。




