プロポーズ?
「はぁ……【闘技場】の件で懲りてないみたいだけど、今度はどんな嫌がらせをしようとしてたわけ?」
案内役のモモがいなくなったところで、ヒューイを問い詰める。ヒューイも全員に反論された時は動揺してたけど、すぐに踏ん反り返るぐらいの平常状態に戻ったみたい。一応、王族だから威厳を保とうとしてるのかも。マンに鉄拳制裁と言われたら、普通の人はビクつくでしょ。
「嫌がらせ……一体何の事だ?」
ヒューイは私の言葉にキョトンとしてるけど、そういう流れだよね? ヒューイは冒険者嫌いで、今回の依頼でも無理難題を振ると感じじゃないの? 【闘技場】で恥をかかされた相手なんだから尚更でしょ?
「だから……【闘技場】で悔しい思いをしたから、ここで仕返しをするつもりだったんじゃないの?」
「そういう事か。他の冒険者であれば、そうしたかもしれないが、レッドは別だ……いや、カズハと呼んでも構わないか?」
「それは別にどっちでも構わないんだけど……」
許可書を貰うための依頼が終わればオサラバになるんだから、呼び名なんてどうでもいいんだけど……でも、【闘技場】時のヒューイの態度とは少し違うような……
「カズハ。職業が僧侶のD級冒険者。クエスト達成は五つ。フレンドは二人。【アーツ】は【ヒールLV2】であり、【スキル】に【回復魔法の回復量が1.2倍】はあるが、それ以外は僧侶に似合わず【受け流し+】や【カウンター】、【回避+】【ド根性】を所持。災厄の獣である【ナイトメア】に初遭遇したのは冒険者の千ではなく……」
「ちょっとちょっと!! 何でそんな事まで知ってるのよ。普通に怖いんだけど……」
城門にいた兵士が言ってたのはマンじゃなくて、私の事だったの? 【闘技場】の活躍度は違うけど、一応全部当て嵌まっているんだよね。
「待て待て!! 怖がるな。率直に言おう。余を助けてくれた時、カズハの素顔が美しく思えた。それに男気も感じた。一目惚れだ」
「………………はっ?」
「冒険者など辞めて、余の妻にならないか?」
ヒューイの言葉のせいで、一時的に思考が停止してしまったんだけど!? あの時、『……しい』と言ったのは『悔しい』や『苦しい』とかじゃなくて、私の素顔を見て、『美しい』と言ったわけ!?
今までのNPCを見ても、普通の人と全く変わらないとは思ってたけど、今回の事で余計にビックリするから。
NPCが冒険者を好きになるなんて、予想外過ぎるでしょ。しかも、誰かに告白されたのも初めてだし、それを通り越して、『妻にならないか』なんてプロポーズでしょ!!
といっても、告白された事に対して、全くといっていい程ときめく事がないから。ヒューイが王族だろうが、アイドル顔だろうが関係ないみたい。
「返事はすぐにでも」
ヒューイはすぐに返事を求めてるみたいだから、こっちも率直に断らないと。




