鉄拳制裁?
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「お疲れ様です。今回は三試合目で敗北したため、報酬は200Gとなります」
舞台から戻ると、受付嬢の近くにマンと紅が待ってた。報酬を貰うために、そこに行かないと駄目だからね。
「あれは仕方ないわよ。アイツがパートナーじゃなかったら、全勝してたはずだから。一、二試合の動きなんて……」
紅は私が負けた事に喜ぶわけじゃなく、慰めてきたんだけど……勝負の続きのため、早めに昇級して欲しいからかな?
「ナイスファイトだ!! カズハの邪魔をした男は、見つける次第、私から鉄拳制裁をしておこう」
マンに至っては笑顔で物騒な事を言ってる。私のパートナーになっておきながら、戦闘の邪魔をしたのはモニターからでも分かったのかも。
「そこまでしなくていいからね」
受付嬢が200G受け取り、今回の試合時の事も報告しておく事にした。
「あの……ヒューイの事なんですけど、【スキル】や【アーツ】で魔物じゃなく、冒険者を操ろうとしてました。それでわざと負けるように仕向けようとも。【カリスマ】や【マリオネット】とかを口にしてたから」
「鉄拳制裁だけでなく、関節技であらゆる関節を破壊しないと駄目だな」
マンの言葉は今は無視しておいて……
「やっぱり……多くの試合をモニターに映してるので、音声は出さないようにしていたのですが。【カリスマ】と【マリオネット】ですね。【スキル】や【アーツ】の制限は出来ますので、考慮してみます」
【カリスマ】 自身の魅力をアップ。相手を魅了した場合、言う事を聞いてくれる事も。LVが高ければ、相手の意識さえ奪う事も。
【マリオネット】 魔法の糸で相手を動かす事が出来る。LVが高ければ、一時的ではあるが相手の体だけでなく、意識も操作可能。
「以前、私がアイツの試合を見た時も、冒険者の動きは変だったから……そういう事。けど、カズハには効いてなかったよね?」
「魔法耐性の効果がある装備をしてたからだと思うんだけど」
「そういえば、装備の色が以前と変わってるわね……マスクも外してるじゃんか!!」
紅も千城院さんのファンだから、彼女から貰った事内緒にしておくとして、【赤レッドマスク】を外してる事に今気付いたの!?
「【スキル】や【アーツ】の制限もだけど、ヒューイは出禁にする事は無理なの? その方が手っ取り早いと思うんだけど」
「そこまでは……」
やっぱり、ヒューイの出禁にするまではいかないみたい。【カリスマ】と【マリオネット】の制限が出来るだけ、冒険者の被害が減るから、ましだと思っておこう。
それに今ならヒューイがパートナーになる事はないんだから、再度【ブロンズ級】に参加すれば大丈夫のはず。
「そっちにも色々あるわけね。今ならヒューイも参加出来ないはずだし、もう一度【ブロンズ級】に挑戦するから、受付をしてもらっても」
「残念ですが、それは無理なんです。勝ち進み、次のクラスに挑戦する時はすぐにでも出来るのですが、敗北した場合は三時間のインターバルを設けているので、次の試合に出れないようになっているんですよ」
「三時間も!? 何処かで時間を潰さないと駄目なんだ……」
という事は、三時間の時間潰しをしないと駄目ってわけだ。モニターで色んな試合を見続けるのは勿体ない気がするし……
「それならば、私と一緒に食べ歩きでもするか? 周辺にある屋台の食べ物を全部食べたわけじゃないからな」
「ゴメンだけど、それはまた今度で」
マンが楽しみにしてるのは分かるけど、こっちはお金がないから。




