勝率0%
「アイツがカズハのパートナーになったわけ? ご愁傷さま……でもない?」
「紅はあの怪しいマスク野郎を知ってるわけ?」
紅はヒューイが私に絡んでるのを見て、こっちに戻ってきた。マンは……意識が回復したのか、一緒について来てる。
「マスク野郎って……言葉が悪いわね。何度かモニターで参加してる場面を見た事があるだけよ」
「私もあるぞ。同じマスクマンとして、戦闘を見させて貰ったが……あれは漢じゃない」
「声からして男……行動が男らしくないって事ね」
紅だけじゃなく、マンもヒューイを否定するって事はロクデナシなんじゃ……
「まぁ……彼が冒険者を守る役なのに、どういうわけか、立場が逆になってるから。そこで冒険者が負けて終わり。彼がパートナーの場合、勝利したところを見た事がないかも」
「……はい。ヒューイ様の勝率は0です」
受付嬢もそれを肯定するの!? そんな奴を無理矢理パートナーにするのもどうかと思うけど……
「けど、カズハなら大丈夫だ。むしろ、そっちの方が良いんじゃないか?」
「ん? 確かにそうかも……」
ヒューイを守るつもりはないけど、魔物との戦闘を私に任せて貰えるなら、その方が全然良い。むしろ、自身の身を守るぐらいで十分だから。
「そう考えると、気が楽になったわ。気持ちが変わらないうちに、さっさと終わらせてくるから」
嫌な事は早めに終わらせる事に限る。今回の【ブロンズ】戦が終わったら、関わる事も無くなるはずだし。
「すみません……レッド様とヒューイ様とで登録しました。ヒューイ様と同じ入場口に進めば、すぐに試合開始となりますので……期待してます」
受付嬢は私に頭を下げてきたのは、ヒューイの思惑とは別になるのを期待してるのかも。
入場口の先に進むと、周囲が高い壁に囲まれていて、そこには幾つの柵がある。その一つから私が登場したわけなんだけど、まるで映画に出てくるコロッセオみたいに円型の舞台。
「余を待たせてるとは良い度胸をしているな。マスク仲間として多目に見るが」
ヒューイは注目を浴びたいのか、マントを靡かせ、手を振りながら、舞台の真ん中に陣取ってる。とはいえ、観客はモニター越しで見るわけなんだけど……
「別に許して欲しいとも思わないけど……アンタの戦闘の仕方は聞いてるから、さっさと後ろに下がれば?」
【闘技場】の中でモニター、TVから冒険者達の声は聴こえてこなかった。それは一番大きいスクリーンでもそうなんだから、少し汚い言葉を使っても、誰かに聞かれる事はないでしょ。あっちも酷い言い方なわけだし。
「只今から、冒険者レッド様の【ブロンズ級】の試合を始めます。パートナーはヒューイ様。彼女達が何勝するかの賭けは……圧倒的にゼロが多いですが、レッド様はこれをくつ替えせるのか!! では……スタートです!!」
受付嬢のアナウンスにより、試合開始。柵の一つが引き上げられると、ゴブリンが二体現れた。
「最初の相手はゴブリン二体って……」
最初の試合だから、相手が弱いのは仕方ないか。ここで負けるのが賭けで一番多いのも、ヒューイのせいなんだろうけど……
「ふん……なかなかの相手だな。余の戦闘を知っているという事だが、単に後方に下がってるわけではないからな」
ヒューイはゴブリンに背を向け、悠々と後方に下がっていく。それをゴブリンが攻撃すれば、面白そうではあるんけど、ヒューイの戦闘不能も負けた事になるわけで……