兄、失踪す!?
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「ふぁ……眠い。早めにバイトが終わったから、【ユニユニ】と思ったけど、軽く寝た方がいいのかな。いやいや……そのまま一気に寝そうだし」
バイトからの帰宅途中。今日はバイトが少し暇という事もあって、早上がりをお願いされたのを『喜んで!!』と心で叫んだわけなんだけど、【ユニユニ】をするか、仮眠を取るかで悩んでるわけで……
「そうだ……流石に兄さんもいるはずだから、晩御飯を用意しないと駄目か」
兄さんは木曜日から家に帰宅してない。一日会社に箱詰めされてるとか、土日出勤もあったけど、ここまで家に帰宅してないのはなかったかな。
金曜の夜にライソを送ってみたら、返事はあるから生存はしてるみたいだけど……
「私がバイトに出てる間に帰ってきてるでしょ。四日ぶりの帰宅なんだから、弁当は不憫だよね」
【ユニユニ】と仮眠は止めといて、晩御飯の準備をするかな。兄さんも深い眠りについてるだろうし。それとも、四壱に料理を作ってもらうのは……私も楽できるし、四壱も得する……って、兄さんが余計疲れる可能性もあるのか……
「私が作るか……カレーは前回作ったし、今回は肉じゃがでいいでしょ」
具材は変わらず、味だけが違うだけなんだけどね。家に材料は残ってたはずだから。
「ただいま……って、まだ帰ってないの?」
家に到着したけど、玄関に兄さんの靴がない状態。ここまで仕事漬けになると、流石の兄さんでも……
「いつ帰ってくるのか、もう一度ライソにメッセージでも入れてみようかな……って、あれ?」
ダイニングのテーブルの上に置き手紙があるんだけど……四壱の仕業じゃないよね? 家には誰もいなかったはずし……
「母さん達が帰ってくる時は連絡があるし……兄さんしかいないんだけど」
取り敢えず、内容を見てみない事には……
『三日程、戻ってこないつもりだ。連絡も繋がらないと思ってくれ。帰ってきた時にはサプライズを用意しておくから、ビックリするはずだぞ』
「何これ……仕事が忙しくて、家に帰って来れなかったわけじゃなかったの? サプライズといっても……私の誕生日はまだ先だし……まさか……」
文章から、兄さんが元気なのは分かる。もしかしてだけど……彼女が出来たなんて事は……会社じゃなくて、彼女に家に泊まってたとか、三日間で旅行に行って、戻ってきた時に紹介されたりなんて……
「駄目でしょ!! 駄目じゃないけど……」
ブラコンじゃないけど、兄さんの事をちゃんと知れば、モテてもおかしくないんだよね。見た目は普通だけど、家族想いだし、家事も出来る。ただ……オタクな部分があるぐらい。四壱も好きになるわけで……
「四壱が知ったら……サプライズどころか、恐怖でしかない……」
四壱が兄さんに彼女が出来た事を祝福する? いや……彼女に襲い掛かろうとするんじゃ……言い過ぎなようで、言い過ぎじゃないような……
「うん……ここは一旦様子だね。四壱のアピールにも気付かないぐらい鈍感だから。サプライズが彼女じゃない事を祈っておこう」
けど、兄さんは何をするつもりなんだろう? 楽しそうな事だったら、会社は関係ないはずだから。
「あまりの衝撃で一瞬で目が覚めたわ。御飯もお茶漬けぐらいにして、【ユニユニ】をしようかな」
【ユニユニ】をやる事で現実逃避……って、わけじゃないからね!!