マンは頼られたい
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「さてと……準備も整えたし、【フォース】へ出発するけど……」
【アイン】の道具屋で素材と破けた【青の修道服】を売って、お金を確保。前回、教会でGを半分奪われるはめになったけど、元の500Gに戻す事が出来た。ちなみに【プロテイン】は売ってないし、【月光石】は非売品で売る事が出来ないみたい。
そのお金で購入したのは【転移の翼】。普通に道具屋に売ってて、一つは手元にあって良いと思ったから。それと【毒消し草】を二つ。戦闘終了すると体力は自然回復するし、【ヒール】があるから【薬草】や【ポーション】を買わなかった。けど、毒は回復せず、自然回復の邪魔になるからと、道具屋の店員のアドバイスに従ってみたわけよ。【僧侶】なら毒回復の【アーツ】も手に入れたいところではあるんだけど……
武器は必要かもしれないけど、空手にこだわりたい気持ちがあるから。防具に関しては全く必要なし。千城院さんがくれた【赤の修道服】しか勝たん!!
それに……Gがそれ程あるわけじゃないから。
【転移の翼】が200G、【毒消し草】が二つで50Gと、死んだ時と所持金が同じになったんだよね【闘技場】に参加するのも最低で100G必要なんだから、残高は150Gだけ。
「もぐもぐもぐもぐ……問題ない。すぐに食べ終わるぞ」
前回、マンもパンツが破れた事で、新しいパンツの【ゴブリンパンツ】を履いてる。茶色の布地で、ホブゴブリンがドロップしたアイテムだから、使い古しの可能性もあるんだけど……
「マンのお金だから文句はないんだけど……」
マンに装備不要だから、買うとしたら道具屋に売ってるアイテムとかなんだけど、それも【毒耐性○】や【麻痺耐性○】のスキルで補えるから、そこまで必要としない。【転移の翼】は一つは購入したみたいだけど、他は食べ物関連。後は……予備のパンツ【気合のブリーフ】を二枚。これは【ゴブリンパンツ】を履いてるわけだけど、いつ脱いだり、破れたりするか分からないし。一枚は私に渡してきた。
「牛丼も良かったけど、カツ丼も美味しいぞ。【闘技場】で勝つというゲン担ぎにもなるんだろ? 」
マンはカツ丼をテイクアウトして、歩きながらカツ丼を豪快に口の中へかき込んでいく。
今回のカツ丼も牛丼やハンバーガーに続き、初体験みたい。カツ丼を食べた事ないとか、どんな生活をしてるのか本当に謎。そこを詳しく聞くべきじゃないんだろうけど、気になるところね。
それにカツ丼は牛丼よりも高い700G。アイテム系よりも食事の値段は高い傾向にある。それを気にせず、使うのは【ユニユニ】がゲームだから出来る事なんだろうけど。
「御馳走様でした。それでは……【フォース】に向かって、出発だな。今回、本当にパーティーを組まなくても良かったのか?」
【フォース】までの道のりはマンと一緒に行くわけなんだけど、パーティーを組んだわけじゃない。パーティーはクエスト時に組むもので、通常は別行動。
「昇級関係なしなら、新しいクエストを引き受ける事が出来たんだぞ。そうすれば、一人で戦闘しなくても」
【アイン】のギルドはC級へ昇級するためのクエストが満員なだけで、D級から受けれるクエストは幾つもあったみたい。
クエストは最大五つまで同時に引き受ける事が出来るから、別の国に移動する時、一つだけクエストを選んでおいて、一緒に行動する手もある。そうすれば、戦闘を一人でしなくても良くなるから。
「そこは一人で挑戦してみたいのよ。マンは【アイン】周辺だけじゃなくて、ヒューマ国にいる魔物の大半を一人で倒したんでしょ? 私もそこまで強くなりたいし」
マンが冒険者の登録をした時、受付嬢がヒューマ国にいる大半の魔物を倒してると言ってたからね。私もそれぐらいの力がないと、千城院さんがいるパーティーにも迷惑を掛けてしまうし。
「カズハがそこまで言うのなら、仕方ない。私は近くで見守る事にするぞ」
「それはちょっと……少し離れてくれた方が嬉しいかな。戦闘になった時、私じゃなくて、マンにエンカウントしたら意味ないでしょ?」
救援道具も道具屋にあったけど、マンを頼る事になるし、安心感が出てしまうから買わなかったし。【闘技場】の事もあるから、色々と経験を詰んでおかないと。
「そういえば……アドバイス!! 戦闘のアドバイスを言うのは大丈夫なのか?」
一瞬、マンの顔がシュンと落ち込んだ顔になったけど、良い方法を思い浮かんだみたいに、明るい顔になった。
「アドバイスは別に……いや、勉強になるかも。そこはお願いしようかな」
今回は自力でやりたかったけど、あんな顔を見せられたら、許すしかないでしょ




