フレンドになりました
「そうだった!! カズハに謝らなければならない事があった。カズハがくれたパンツなんだが……脱ぐ時に破れてしまった。折角のプレゼントだったのに……申し訳ない」
マンは【気合のブリーフ】が破れた事に頭を下げてくれた。けど、パンツをプレゼントした事を大声で言うもんだから、他の冒険者達の視線が……シリアスな雰囲気だったのがぶち壊したからね!!
「それは別に大丈夫なんだけど、新しいパンツは……アレがあったでしょ。ホブゴブリンが落とした……」
「それがあったか!? カズハの事が心配で忘れていたな」
ホブゴブリンを倒した事でドロップしたアイテム、【ゴブリンパンツ】。男性専用で、大きめサイズ。私の【BOX】の中にもある。売るつもりだったけど、こんな事があるなら、予備でパンツを用意しておいた方がいいのかも……
「それで……アイツとの戦闘はどうだったわけ? マンも死に戻りをしたんじゃ……」
「いや……あの獣は一撃を入れた途端、その場から消えてしまったな。その一撃を入れたのは彼女だったが……結構苦労したぞ。パンツを脱がなければ、力押しされていた」
千城院さんは【ナイトメア】に一撃を与えてる事が出来た。多分、マンは私の言葉通り、千城院さんを守る行動をしてくれたんだと思う。その証拠に、戦闘終了時、体力や怪我は少しずつ自然治癒されるんだけど、マンが急いで戻ってきた事もあって、蒼石を受けた痕や斬り裂かれた傷が残った状態だったから。
「後は……逃げたとはいえ、【月光石】というアイテムを落としていったな。あの獣を守ってた石だと思う。ち……彼女はエルフの国に必要だと言ってたか?」
マンは【BOX】から【月光石】を取り出して、私や受付嬢に見せてきた。【ナイトメア】の周囲を飛んでいた蒼い石に間違いない。あの光が未だに残った状態だし。千城院さんも戦闘終了時に手に入れたはず。
「【月光石】ですか!? マン様……私達にそれを預からせて貰えませんか? 色々と解析したい事があるんです。勿論、解析が終了すれば返却します。それにマン様の【魔物図鑑】も見せて欲しいのですが……」
マンが月の石、【月光石】を持ち帰った事で、黒狼が【ナイトメア】だという信憑性が増してきた。あの姿が幼体という事もあって、あの戦闘は逃亡前提だったのかもしれない。
「それは構わないぞ。私もあの獣の正体を知りたいからな。ちゃんとした勝負をしてみたいからね」
マンは【ナイトメア】に再戦するつもり満々みたい。それは……私も同じ。千城院さんの前で不甲斐ないところを見せたんだから、汚名返上しなければ駄目でしょ。その前に……
「マンのお陰で……あの冒険者は助かったんだと思う。ありがとう」
千城院さんを助けてくれた事に感謝の言葉を言っておかないと……それに加えて、【ヒール】でマンの怪我を回復させておくべきでしょ。
「回復してくれるのは助かる。彼女もカズハに感謝していたぞ。あの【ヒール】があったからこそだと」
その言葉は千城院さんから直接聞きたかったけど、千城院さんの力になれた事だけで良しとしないとね。
「そのお礼として、ボロボロになった装備の代わりを渡してくれたぞ。【赤の修道服】だ。魔法耐性があるらしいぞ」
色が変わるだけで、見た目は【青の修道服】とさして変わらないんだけど、【魔法耐性】の効果が追加されてるみたい。千城院さんがくれた物なら大切にしないと……
「……あれ? アイテムの受け渡しは【フレンド】にならないと出来ないんじゃ……」
「そうだな。彼女と【フレンド】になったぞ」
「えっ!? マンよりも私と【フレンド】になって欲しかったのに……とほほ」
マンは当然のように言ったけど、私が【ユニユニ】を始めた目的でもあるんだから。勿論、理想は現実の方だけど、まず先に【ユニユニ】での【フレンド】になって、パーティーメンバーに選ばれないと駄目なのに……
「それはそうと……カズハ様、マン様も戻ってきましたが、紅様は?」
受付嬢は蒼石を別のギルド職員に渡したところで、ふとした疑問を投げてきて……
「「あっ!!」」
私とマン……二人して、紅の事を忘れてた。




