災厄の獣
「カスバ様……マン様がこちらに戻るまでに、【魔物図鑑】を確認させて貰っても大丈夫でしょうか? 負けた場合でも、その姿は【魔物図鑑】に表示されます。ギルドに登録されている魔物と照合してみます。レアな魔物の出現する情報はありましたが、何かまでは……」
「それは勿論。【魔物図鑑】は私の方に表示されるだけで、本としては取り出せないんだけど……」
私の目の前に【魔物図鑑】のページが開かせるだけで、【BOX】から取り出せない。
「問題ありません。カズハ様の許可が頂けたら、同じような形で私も確認出来るんですが……」
受付嬢の言葉が止まった理由が私にも分かった。【魔物図鑑】に野盗やスライム、イモチュウ、ゴブリン、ホブゴブリンと戦った魔物は表示されているのに、黒狼は表示されてないから。
「登録されてない!? 私は嘘を言ってないからね」
「疑ってませんよ。カズハ様が一度死んだ事は紛れもない事実なんですから。登録されてない理由が……口頭でいいので、教えてくれませんか?」
「それは構わないけど……黒い狼の姿をした魔物で……」
黒色の巨大な狼型の魔物……といっても、狼型の魔物普通にいそうな気がするんだよね。他の特徴は……
「影から針を突き出す攻撃をしてたな。一番印象に残ったのは蒼白く光る無数の石での攻撃かな。攻防一体で、アイツの回りを飛んていたから」
「蒼白い光ですか……【MAP】による【蛍の森】の情報では、それらしき事が書かれていましたね」
「確か……月の石と呼ばれてるらしかったけど」
千城院さんが黒狼に戦闘を仕掛ける時、【月の石】と言葉にしていた。多分、アレが【月の石】だと思うんだけど……
「月の石ですか!? それは幻のアイテムであると同時に……七つの災厄の獣が一匹、【月夜王】の【ナイトメア】が所持している物とされてるんですよ!!」
七つの獣……【ユニユニ】の最終目標は魔王を倒す事らしいけど、そのためには七つの獣を倒す必要があるんじゃなかったかな? それがアイツだったって事!?
「ですが……【ナイトメア】の全長は二十メートルと、超巨大生物のはずなんです。それを考えると、【月の石】という名前がが事実であるかどうかになるんですが……」
「全長二十メートル!? その十分の一の大きさぐらいだったけど、あの強さは……」
「もしかしたら……まだ成長段階なのかもしれません。だから、【魔物図鑑】に載らなかったのかも。それを調べるため、ギルド職員を派遣する必要が出てきましたが」
ドダダダダダダダ……と、ギルドの外から猛烈に駆け上がってる音が聴こえてきたんだけど、まさか……
「カズハ!! 生き返ったとはいえ、大丈夫なのか!!」
「マン!? まさか、マンも【ナイトメア】に……パンツが無くなってるじゃないの!! 何でもいいから履かないと、街から追い出されるでしょ!!」
マンが私を心配して、ギルドに来たのは良いんだけど、最初に会った時みたいに全裸の姿に戻ってるんだけど!!
パンツがないという事は、マンも全力を出したはずで……【ナイトメア】との勝負は一体どうなったのか。それに千城院さんの事だって……