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千VS黒狼

 その人物は落下する勢いでの攻撃で、下に待ち構えていた黒狼を後退させた。


「なんとか間に合って……【ヒール】!!」


 地面にぶつかる直前、【ヒール】によって、私の体は回復……したのは良いけど、激突による衝撃は消える事はなく、瀕死状態。死ぬのをほんの少し免れただけかもしれない。けど、それだけで十分。


 私を黒狼から助けてくれたのはマン……じゃなくて、千。


 薔薇を模した赤い色の鎧に、それに合わせたような花の盾と白銀の剣。銀色じゃなく、金色の髪のせいか、雰囲気は現実とは少し違うけど、月の光が千城院さんを照らしていて、主人公感が半端ないんだから。


 千城院さんに助けて貰った手前、ここで私が死ぬわけにはいかないじゃない!!


 とはいえ、千城院さんの名前を呼べる程の体力もないわけで……この場所に、千城院さんがいる事自体がビックリなんだけど……


「私以外にもクエストに参加してる冒険者がいたなんて……申し訳ないけど、助けてあげる余裕はないの。動けるようになったら、ここから離れる事を薦めるわ。じゃないと、巻き込まれて、死んでしまうから」


 声も千城院さんと同じ。千=千城院さんに間違いないでしょ。


「……分かり……ました」


 千城院さんは黒狼と対峙していて、こっちに振り向けず、何とか声を絞り出して、返事を返した。私が千城院さんを助けるつもりで【ユニユニ】を始めたのに、逆に迷惑をかける事になるなんて……


 この場を離れるのに【ヒール】をもう一度使う必要があるけど、その時間がまだ来てないし……本当に最悪だ。


「残念だけど、私に【テラー】は効かない。恐怖による動きの制限はないから。そういうのは何度も経験してるからね」


 千城院さんが黒狼に対峙出来たのは、【テラー】という【スキル】の対策が出来てたから? もしかして、黒狼と目が合った時に【テラー】が発動されてたのかも……


 いや……そんな事より、千城院さんもブラックと同じようにランカーのはず。【ヒール】が使えるようになるまで、少しでもその動きを勉強するため、目を離さないようにしないと。


「アナタの持つ月の石……奪わせてもらう!!」


 そこからの千城院さんと黒狼との戦闘は、私と紅の【模擬戦】やホブゴブリン戦とは全然違う。別次元と言っていいレベル。これがゲームでの戦闘と呼ぶべきものなのかもしれない。


 黒狼は無数の蒼石を使い、縦横無尽な動きで千城院さんに攻撃を仕掛ける。それを花の盾の花弁が開く事で巨大化し、それを弾く。その隙間を抜けて、千城院さんは白銀の剣で風の刃らしきものを飛ばすけど、それを黒狼を簡単に飛び避ける。


 その着地を逃さないと、次は炎で長く伸ばした剣で斬り上げに掛かるが、それを黒狼は蒼石で列を作り、炎を打ち消した。


【アーツ】を使用するためには発動時間、次に使うための硬直時間が必要となるはずなんだけど、千城院さんはほんの僅か。別の【アーツ】であれば、繋げるように使えてもおかしくないかも。


 千城院さんと黒狼は互いに自身の体に攻撃が届いてない。黒狼本体の攻撃は、千城院さんも危険と判断して、回避を重視してる。薔薇の鎧から出る蔦を利用して、無理矢理回避する場面もあった。


 ただ……戦闘が長引くにつれ、不利になっていくのは千城院さんの方だと分かってしまう。


【ゴミ拾い】が大型クエストと同じ扱いという事で、黒狼がレアキャラであるなら、ソロで倒す事自体が難しいはず。


 僅か二、三分の攻防だけで、千城院さんの体力が削られ、肩で息をしてるのが分かる。黒狼の動きも考え、頭も使わないと駄目で、余計に疲れるはずだから。


 更に言うなら、黒狼の攻撃手段が増えていく。自身の影を利用して、そこから針のような物が飛び出たりと、千城院さんが後手に回ってる状態だ。

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