乱入者登場!!
「【BOX】に入らないって事は素材でも、ゴミにもならないんだ……」
アイテムや素材に触れると、自動的に【BOX】の中に収納されるんだけど、この死骸に関してはそれがない。これを【BOX】の中でも持ち帰るのはちょっと……
「これを土に埋めてあげるにしても、スコップとかないし、錆びたナイフだとどれだけ時間が掛かるか……うん!! 諦めよう」
流石に【ヒール】を使っても意味がないと分かるし、ここは一旦諦める。後から、【ハイソン】の村人達に角兎の事を聞いてみよう。
「ゴミも十個拾ってないから、先にそれを済ました方がいいかな。そこからカブトムシやクワガタ狙いで……」
蒼く、淡い小さな光が無数に飛び回ってるのが、視界に入ってきた。滅多に見る事が出来ない幻想的な光景に出会えてラッキー……なんて思えたら、どんなに良かった事か。
「笑えない冗談だわ。こんな風になるのは初めてかも……」
飛び交う蒼い光の中心には巨大な黒い狼がいた。大きさはライオン並。赤い目が私を捉え、ゆっくりと近付いてくる。その圧力はホブゴブリンなんて足元にも及ばない。強い相手に武者震いは何度かした事があるけど、黒狼に関しては恐怖のせいで足の震えが止まらない。
「もしかして……死骸を見つけた事がフラグになってたわけ。それとも、色んな条件が重なったとか」
受付嬢は危険な場所じゃないと言ってたはずなんだけど、【ゴミ拾い】のクエストが大型クエストと同じ条件で全員参加出来るのも怪しい部分はあったわけよ。
それに村人は一日経過すれば、【蛍の森】から魔物が消えると言ってたけど、それは黒狼が魔物達を食べ尽くすからだと考えると、私よりも先に来ていた冒険者は、黒狼が出現する事を狙ってた可能性も……なんて、そんな事を考えてる場合じゃない。
「この状況をどう打破するかだけど……」
当然、黒狼の一撃、体当たりでも食らった時点で死ぬと思う。ホブゴブリンの一撃を受けた時でも、結構なダメージはあったんだから。
「逃げるしても……相手の方が絶対速いはずでしょ」
ライオンや狼の方が人より速いわけで、狼の魔物だからって、遅くする事はないはず。小回りだって、相手の方が上かもしれない。
「……あっ……来る!!」
黒狼が近付いてくる圧力で、足が一歩後退してしまった。そのほんの少しの行動が、黒狼の動きを変えた。
「消えっ……右!?」
夜の森で視界が悪いのもあるけど、黒狼の速さは並じゃなかった。本体の姿を追う事は出来なかったけど、周囲の蒼い光の軌跡が、黒狼の移動場所を教えてくれた。
「がっ!!」
だからって、黒狼の攻撃に反応出来るかは別の話。僅かながらに【受け流し】を狙うつもりもあったけど、それよりも先に蒼の光の攻撃を受けて、体を宙にかちあげられてしまった。
黒狼の周囲に展開する無数の蒼い光は幻想じゃなく、丸い物体だった。それは黒狼の攻撃手段の一つのようで、本体でもないのに、ホブゴブリンの攻撃を上回る。
その一撃で死んでないのは、ホブゴブリン戦の後に防御力が少しだけ上がったからかもしれない。反撃は勿論のこと、無事に着地するのも難しい。それはすぐにでも意識が飛びそうになってるのが分かるから……
「これは諦め……られないでしょ!!」
私が諦めようとした時、夜空の月のある場所から落下していく人影が!? その人物を私が見間違うはずもなくて……




