退化もするようです
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「ちょっと……あんなに息巻いてたのに、ものの数分で体力が無くなるのはどうなのよ。マン達に鍛えられた時にはもっとマシだったんじゃないの?」
私と三太はパーブルーダの巣にタクシーが捕まっているのかを確認するため、マン達より先に出発したのはいいんだけど、カイとミナミの姿が見えなくなったあたりで、三太の速度が一気に減退。息も切れ切れになってる。
この島よりも【獣人の国】の方が過酷だった気がするんだけど……特に三太はマンと紅にしごかれてたから。【ヘビーメイス】も普通に持てるぐらいには成長はしてる。
「それは……否定出来ない。けど、仕方ないでしょ。タクシーが僕を乗せようとするんだからさ」
三太の移動時、タクシーが乗り物として運んでくれるから、普通に歩く事が少なくなった? それで退化するなんて事は……【ユニユニ】ならやりかねないかな。色んな事を経験して成長するなら、何日も離れると退化するとか、あってもおかしくないわけだし。
「そこは断るとか、別の特訓で体力を取り戻さないと。今の三太の姿を紅が見たら、鍛え直しと言いそうだから」
「うぅ……あれは二度とやりたく……姐さんと師匠ががそう言うなら」
三太も【獣人の国】のシゴキは嫌だったっぽい。紅が指示だったら、『喜んで!!』とM気質があると思ってたんだけど……それでも、やるつもりがある分、マンと紅の事を慕ってるのが分かる。
「はぁ……この調子だとマンや紅の方が先に着くかもしれないか。私が三太を抱えていく方法もあるけど?」
本当は三太をおんぶ、抱っこするのは嫌なんだけど、千城院さんへ【月の石】を運ぶためには四の五の言ってられない。
「それは……駄目駄目!! それこそ、師匠と姐さんに呆れられるから!! カズハよりも二人に認めてもらうつもりなんだ」
三太は私をライバル視してる台詞を口にしてるけど、ちょっと間があったのは……楽するためじゃなく、タクシーの安否を早く知りたいためだよね?
「装備を変えたら体力の減りも少なくなるはず」
三太が装備してる【ヘビーメイス】が重くて、体力の減りが早いのなら、【木のステッキ】に戻せば、速度も変わってくる。ただ……
「武器を変えて、魔物を倒せるわけ? 私ばかり倒しても意味がないんだからね」
三太は【魔物使い】じゃないけど、その活躍をパーブルーダやその子供達に見せないと駄目なんだから。子供達が怪我をしてた場合、それを回復するのもありかどうかもあるんだけど……それもタクシーが無事かによるんだよね。食べた相手を回復するのは……
「分かってますよ。……っと、その魔物が。僕達と同じぐらいの蜥蜴だ」
「蜥蜴……多分、アレがカイとミナミを襲った魔物かな」
カイ達はワニの魔物も見たと言ってたけど、もしかしたら、パーブルーダが出発して間もなくて、時間経過と共に増えていくのかも。
「そういえば……タクシーも爬虫類というか、蜥蜴系だよね」
「そうだけど、あの魔物よりも強いから、襲われても大丈夫」
タクシーはエリマキトカゲに似た魔物。私達を乗せれるぐらいに大きく、あの蜥蜴の魔物に負ける事はないと思うし、ワニの魔物にも勝つ気もする。
「そうじゃなくて……やっぱり、いいや」
同じ蜥蜴系の魔物なら、逆にパーブルーダの子供達をタクシーが食べてないかと不安に思えてしまったのは……言わない方がいいでしょ。




