優先順位
「タクシーですか? 確かに……【ログイン】してから一時間以内には僕の側に来るのに。流石に僕が呼べば、すぐに来ると思うけど……」
「謝罪の邪魔をするかも。一応、カイやミナミの小屋をタクシーが壊したんだから、それも謝っておかないと。私達が修繕したんだから」
「えっ!? 僕が突然消えたから……ゴメンナサイ!! 後から謝らせますので、許してやってください」
三太はタクシーの行動に一度顔を上げて、土下座をカイ達へ方向を修正した。
「それは全然構わないぞ。マン達のお陰で強度の強い小屋に改善出来たしな」
「私もビックリしただけだから。それにあの魔物はもう……」
「……えっ!? 何ですか? 『もう』って、気になるんですけど……」
ミナミが不吉な言葉を口にして、三太は思わず土下座を解除して、立ち上がった。流石にミナミに詰め寄るまではしなかったけど。
「少し前までは食料調達時に走り回るのを見掛けたんだが、今日は見てないな」
【ユニユニ】の時間は現実の時間の三倍だから、三日近くは経過してる事になるから。
「あの巨大鳥が何処かに行く前に捕まえてたのが、あの魔物だと思います。まだ戻ってきてませんが……」
もしかしたら、すでにパーブルーダとその子供達の餌になってるか。もしくは、戻ってきてからの御飯にするつもりなのかも。
パーブルーダを仲魔にするにしても、三太のためにもタクシーを餌にされるわけにもいかない。
「そんな……きっとタクシーなら前みたいに逃げる事も出来るはず」
三太は口笛を吹いたのはタクシーを呼ぶためかもしれないけど、反応は全くなし。雄叫びもなければ、走ってくる足音もなし。
「……来ないね」
これはマン達が来るのを待つより、三太と一緒にパーブルーダの巣に乗り込むべきかも。パーブルーダが不在だから、魔物も巣に押し寄せてくるはず。
タクシーが生きてたら、そのまま魔物の撃退すればいいし、いなかった場合……逃げる事に成功したのか、それとも魔物のように消滅したか。タクシーの素材が落ちてない事を祈るところなんだけど、三太がマン達よりもタクシーを優先するかどうか……
「僕……パーブルーダの巣に行きます!! 師匠達には先に行くと伝えてください」
三太はタクシーの生存確認を優先した。最初は嫌がってたけど、ちゃんとしたパートナーになった証拠なのかも。
「私も一緒に行くから。三太に死んで貰ったら困るし。同じパーティーなんだし、断る権利はないから」
パーブルーダの島はPK区域になってなくて、戦闘に参加出来るのはパーティーメンバーのみ。けど、三太とは【サファリ】でクエストを受けた状態のままだから、問題ないはず。
「カイとミナミはマン達が来たら、早く来るように伝えといて」
「おう!!」
「分かりました!!」
カイとミナミは快く了承してくれて、三太は……
「……ありがとうございます。遅れないでくださいね」
三太はパーブルーダの巣へと走り出した。
「遅れないでくださいって……」
【ハイスピーダ】の【重複】を使用は戦闘中しか無理だし、【ユニユニ】の中での私は足を痛めてない。三太に遅れる要素は全くないんだけど……
私は三太の後を追うというより、数秒後には追い越してしまったから。




