怪しい儀式ではございません
☆
「うわっ!! 【ログイン】早々驚かせないでよ」
千城院さんに【月の石】を届けるため、今日は一段と気合が入った状態で【ログイン】してみると、三太が先に【ユニユニ】に来ていた。しかも、内藤さん達に見せた見事な土下座をした状態で。
強制【ログアウト】しても、【サバイバル】のスキルを習得していたら、同じ場所から再開出来るから。マンはそのスキルを所持してる。
三太もいつの間にか取ったのかも。もしかしたら、強制【ログアウト】を繰り返したせいで、習得した可能性も……三太には必須スキルになりそうだし。
「カズハ様も戻ってきたんですね。彼は来てそうそう、この状態を続けてるのですが、何かの儀式をしてるんですか?」
ミナミは不思議そうにして、そツンツンと木の枝で三太の背中をついてる。人魚の国に土下座は無さそう。人魚の姿で土下座は無理そうだし。
「止めないか。これは儀式じゃなくて、謝罪だぞ。自分の非を認めて、ゴメンナサイと謝ってるんだ。……っと、カズハも戻ってきたみたいだな」
カイはミナミに三太の行動を説明した。今も土下座を解かず、一言も話さないのは、全員が来るまではその姿でいるつもりなのかも。
「マンや紅はまだみたいだね。四壱はもう少し掛かるから、それまでに来てくれると助かるんだけどね」
四壱に関しては、兄さんの晩御飯を用意した後で【ログイン】する事になったから。兄さんが一日【ユニユニ】の世界にいると四壱に話したら、こういう風になったわけ。
ちなみに四壱が今夜の晩御飯に作ったのはお好み焼き。ちゃんと兄さん用にラップして置いてある。
「そうだ!! 今日と明日は大丈夫なんだよね!? 昨日は許せても、この二日間は本当に駄目だから。師匠と姐さんの信用を失う事になるんじゃないの? そこは先に聞かせなさいよ」
三太がマンと紅の信用を失うのもそうだけど、私が千城院さんの信頼を失うのとイコールになってるから!! そこは真剣で重要!!
「大丈夫です。モデルが終わるまでは強制【ログアウト】しない約束をしたから。ただし、それ以降、七月の間は【ユニユニ】禁止になるけど……テスト勉強もあるから仕方ないけど」
三太は七月後半の【ユニユニ】禁止を条件に、この一週間の強制【ログアウト】をなしにしたのは凄い覚悟だと思う。テスト勉強という事は高校生? 流石に中学生ではないでしょ。
というか、私も七月後半から単位習得のテストがあるからって、嫌な事を思い出してしまったんだけど……
水着モデルのイベントが終わったら、勉強を少しはしておかないと。単位を幾つも落とすわけにもいかないし。
「そこは……私達も同じかも。テストで【ログイン】率は減るかもしれないかな」
今も三太は土下座を崩さず、地面に頭をつけたままで話してる。
「そういえば、マン達が来てないのは分かるんだけど、タクシーはどうしたの? 三太が【ログイン】したら、すぐに嗅ぎつけてくるイメージがあったんだけど……」
今だと三太とタクシーはセット感じだから、少し違和感があるというか……




