リモートワークじゃなく、ゲームワーク
「そうだな。運営の方も何も言ってこないのは、俺達が失敗するとは思ってないのか。逆に【災厄の獣】の強さを証明するため、負けイベになってるかだが」
負けイベ……勝負に負けても物語は進んでいくイベントの事。【ナイトメア】は千城院さんとマンが退けたから違うとして、【クイーン】の時が負けイベだったと思う。
「レイドボスを倒して回る事をやらせたぐらいだだから、それはなしだな。首も残り一つまで行けたんだ。アキンドー……アキンドー商店と協力して、【災厄の獣】キマイラロード対策は八割、九割は出来たはず」
兄さん達が戦った【災厄の獣】は【キマイラロード】って名前らしい。キマイラは獅子とか蛇とか、山羊とかの顔がある魔物だったかな。『首も残り一つ』とか言ってたし、無数の顔があるんだと思う。直接見る事が出来ないのは悔しいけど。
「対策がほぼ完成してても、兄さんやアキンドーは一度参加したから、今日と明日の【キマイラロード】戦には参加出来ないんだよね?」
「そうだな。だから、【キマイラロード】対策の道具をアキンドー商店から他の冒険者達に無償で振る舞う事にした。俺も【調合士】として、耐毒や耐暗闇、耐麻痺用の道具を作成してる。ご飯を食べたら、もう一度【ユニユニ】へ【ログイン】するつもりだぞ」
「えっ!? 仕事は大丈夫なの? 辞めたりしてないよね」
「流石に辞めてないぞ。【ユニユニ】の記事を書いてるからな。【災厄の獣】を倒すため、今日と明日は他の冒険者達のフォローに回っても構わないと言われたから、大丈夫だ」
兄さんの仕事はゲーム関連の記事、【ユニユニ】の担当になってるから、そこは寛容なのかも。
「それなら安心だけど……アキンドーが無償で【キマイラロード】対策の道具を提供するなんて、太っ腹だね。まぁ……裏で何か考えてるかもしれないけど」
四壱をプロデュースしようとしたのもそうだけど、カナリアや阿修羅とも知り合いになってるし、兄さんのゲーム仲間の時点で何かある気するから。
「人脈が作れるぐらいには思ってるだろうな。アキンドー商店の株も上がるだろうし。【災厄の獣】に勝ちたいのが一番だと思うぞ。トップランカー達……参加しないと言ってた奴にも声を掛けるらしい」
トップランカー達……千城院さんやブラック、それに阿修羅にも声を掛けるって事?
千城院さんは【ナイトメア】のために準備してるだろうから、流石に無理でしょ。ブラックの事は百瀬に聞けばいいとして……阿修羅、十星亜朱も参加する!? 二人は繋がりがあるみたいだし、【災厄の獣】の強さを考えると……あるかも。それは私も少しは見てみたいかも。
「本当はカナリアとマン、四壱にも参加して欲しいぐらいだと愚痴をこぼしてた。モデルとそのパートナーになったんだから仕方ない」
カナリアの【歌姫】は集団戦に効果抜群だし、マンの強さは知られてるから当然。四壱に関しては兄さんのパートナー的役割もあるし……
私と紅の名前が出てないと思うのは自信過剰だったかも。阿修羅の方が強いわけだから。
「あっ……勿論、一葉にも声を掛けたかったと言ってたぞ。阿修羅と合わせられるのは一葉しかないってな」
残念な顔が少し出てたのか、兄さんが気を使ったのかも。阿修羅と合わせられるの私だけ……というのは喜んでいいのか……阿修羅メインなわけだし、悔しい気持ちの方が……
「ともかくだ!! 今日は一日【ユニユニ】に籠もる事になるから、晩御飯は何か買ってきてくれると助かるぞ」
晩御飯の買い物を頼んで、兄さんは自分の部屋に。しかも、朝御飯の洗い物を置いたまま……用意してくれたから、食器ぐらいは洗うけどね。




